2015年2月18日水曜日

なんでもありのクールビズスタイルはおかしい

●「クールビズスタイル」≠リゾートスタイル

 最近のビジネスシーンで私が気になっているのが「クールビズ」。日本の夏の季語として定着している観がありますが、ちょっともの申したくなるケースがちらほら。公的な機関の窓口などで係員がショート丈のパンツにサンダル履きという姿で業務についている姿を見ると「何か違う」と思ってしまいます。節電やエコのためという背景はいいとしても、果たしてT.P.O.をクリアしているか否か。勤務規定には反していないかもしれませんがビジネスシーンにおいては社内の人間だけではなく、社外の人間とも同じ空間を共有することが多いもの。関係者以外の第3者に与える印象を考えないと、その企業や団体の悪い印象を演出しかねません。前述した「「相手の印象は最初の2~3秒で決まる」という人間の心理的作用を考えたとき、クールビズの実行は慎重になってしかめるべきだと思います。たとえば、仕事の行き帰りの電車の中、業務終了後のデパートの中、ほかの団体との会合などにおいては、非常識に見えてしまう危険性をはらんでいます。ファッション・コミュニケーションの視点からも、クールビズはあまり喜ばしい流れとはいえません。

 ただ、職場でクールビズ実施が決められた場合、ひとりビジネススーツを着ているわけにはいかなもの。その場合、最低限のマナーとしてトップスには襟があるものを着るようにしてほしいですね。仕事場はあくまでも公の場であり、「襟を正して」職務に臨みたい場所。カジュアルなポロシャツでも襟がないTシャツと比べると、はるかにキチンとした印象が出せます。また、ポロシャツであれば上にカジュアルなジャケットを羽織ってもそれほど違和感はありません。女性の場合、キャミソールやミニスカート、ミュールは避けるべきでしょう。職場に持ち込んだ場合、周囲に不快感を与えてしまうのが「セクシーさ」です。必要以上に素肌を露出したファッションは、仕事ができる女の演出には最も不向きなのです。男性の場合、ネクタイをしめてもおかしくないようなカジュアルなシャツの着用が好印象につながります。そして、膝から下の素肌が見えるような短パンもビジネスではNG。リゾート地でも洗練されたレストランなどでは短パンにサンダルは入店拒否が常識です。そして、行き帰り用のサマージャケットを携帯したり、靴は職場で履き替えるなどで対応することをお勧めします。忘れてはならないことは、クールビズはリゾートファッションではないということ。ビジネススタイルから何を抜くか、というスタンスでコーディネートを考えていただければいいと思います。

2015年2月12日木曜日

第3章成功するためのファッション

●ビジネススーツは、“鎧”
  戦国時代、武将にとって鎧はさまざま意味を持っていたようです。もちろん一番の目的は身を守ることですが、合戦で命を落とすこともあり、そのまま死装束にもなるということから、武将の威厳や風格を表すことが大事であり、また、本人のこだわりや美意識も反映されていたそうです。そして、時代が進むにつれ、鎧兜のデザインを利用して心理戦で有利に立てるようにと考えた武将もいたようです。たてえば、徳川四天王として名を成した井伊家に伝わる鎧はすべて赤色。関ヶ原の合戦の様子を描いた屏風絵を見ると、大将から雑兵にいたるまで全員が真っ赤に身を包み、「井伊の赤鬼」と恐れられ、圧倒的な強さを誇っていたそうです。攻撃的な赤を戦場という極限状態で使うことで、相手に威圧感を与えることに成功したのではないでしょうか。ビジネスシーンで身につける仕事服も、いわば「鎧」。手中に納めたいと思っている成果を得るための戦術のひとつになり得ます。その日の仕事の目的や対面する相手のことを考えたうえで服を選んでいますか?。
 アメリカ・テキサス大学オースティン高校で経済学を教えるダニエル・ハマーメッシュ教授が7550人のビジネスパーソンを対象にした、収入に関するリサーチがあります。その結果によると、男性であれ女性であれ、魅力的な容姿だと思われた人のグループは平均的な容姿と思われたグループより生涯賃金が平均25万ドル多かったそうです。また、教授いわく、「じゃあ、美人であれば収入がアップする!」と、美容整形に頼っても効果は期待できないようだとのことです。鼻を高くするよりも、その人本来の長所を伸ばすようにしたほうがいい結果が期待できるとか。つまり、顔の造作で判断されるのではなく、その人全体から醸し出される雰囲気に人は心を動かされるといえるでしょう。「美人じゃないから、どうしようもない!」と嘆く必要はないわけです。要は、服装を含めて、いかに自分を魅力的にセルフ・プロデュースできるかどうか。
 ところが、「ミリオネーゼのファッションルール」(ジョン・T・モロイ著)というアメリカの服装コンサルタントが書いた本によると、キャリアウーマンの約7割もの人が服装によってキャリアアップのチャンスを逃していることになるそうです。意外な感じがしませんか? 大統領選では、各候補者はもとより事務次官にもコンサルタントがつくほどファッション心理に長けた国というイメージがあるアメリカでも、思ったほど服装で成功している人は少ないのかもしれません。映画「プラダを着た悪魔」の中でも、最初はダサかった新米女性アシスタントは、先輩の女性社員からケンモホロロの扱いをされています。ファッションが洗練されていくにつれ、上司や先輩から、やっと相手にしてもらえるというストーリーも、いかにもアメリカのビジネス界といった感じです。そのシチューションを実生活に置き換えて自分のファッション選びを見直すとキャリアアップのヒントになりそうなのですが……。
 
コラム「ラポール(信頼)の構築」
 カウンセリングのとき、話し手と聴き手との間に必要となる信頼のことを「ラポール(Rapport)」と呼びます。ラポールとはフランス語で「橋をかける」という意味。人と人の間に信頼という名の橋がかかれば、それがコミュニケーションの出発点になるはず。では、この信頼関係はどうしたら築けるのでしょうか。まず相手をよく観察する。そして相手と自分の共通点を見つけることが早道になります。というのも、人は自分と似ている人には安心感を抱き、それが好感へとつながるからです。共通点が見つからない場合の有効な手段に「ミラーリング」があります。これは鏡のように相手の動作などを模写すること。座っている姿勢や身振り手振りなどをマネするという方法です。ひとつ注意してほしいことは、あまり大げさにマネしないこと。明らかにマネをしていることが相手に悟られてしまうと、「バカにされているのか?」と、逆効果になりかねません。あくまで、相手に「私もいま、あなたと同じ気持ち(状態)です」ということを伝えるためのノウハウなので、心地いい程度に、さりげなく、がコツ。そして、相手と同じような服装をすることもラポール構築につながります。ちなみに、会話術でのコツは相手に必ず「イエス」と言わせる質問をいくつか続けるという方法があります。イエスを続けて言っているうちに、「自分のことをよく分かっていてくれる」という気持ちを相手に抱かせることができるのです。ぜひ、一度、試してみてください。

2015年2月4日水曜日

対話する服

対話する服
 ここまでいかに服がじぶん自身を物語るか、について書いてきました。服に語らせるうえで忘れてはならないのは、相手にどんな自分の印象形成をしてもらいたいかをイメージしながら服をコーディネイトする、です。「今日、この場面ではどんな自分でありたいか」「相手にどう受け入れてもらいたいか」「相手からどんな反応を得たいのか」をちゃんと意識する。つまり、自分が目指すゴールをはっきりと視界に入れているかどうか。
 私が実際に体験したエピソードをひとつの例としてご紹介しましょう。行きつけのお店のクリスマスパーティーに参加したときのことです。おなじくなじみ客の女性Aさんを紹介され、一緒に楽しくお酒を飲みました。それからAさんと仲よくなったのですが、1年ほど経ったあるとき、「高田さんは第一印象と全然違う。初対面のときは破天荒な人だと思った」と告白されたのです。はじめて会ったとき、お酒が入っていたし、その場の雰囲気でお店のマスターとふざけて一緒に踊っていたこともありますが、何より彼女に強烈な印象を与えたのは私が着ていた黄色のパーカーだったというのです。「クリスマスパーティーに黄色のパーカー? ユニークな服選びをするから、変わった人なんじゃないかな」と思ったらしいのです。私としては、自宅から徒歩5分ほどのご近所にあるなじみのお店だったので、平服での参加であったし、黄色という明るい色でその場の楽しい雰囲気に合わせたつもりでした。Aさんとの価値観の違いもありますが、もし、その場でAさんから「どうして黄色のパーカーを着ているの?」と聞かれていれば説明したでしょうし、彼女の印象も違ったものになっていたはずです。でも、初対面のマナーとして、彼女はそんなストレートな質問はしませんでした。つまり、Aさんは私のファッションが語る私のキャラクターを「おかしな人」と解釈し、そのまま印象形成されてしまったのです。その後、一緒に過ごす機会が増え、私という人間をよく知るようになったとき、最初の印象とのギャップを埋めるのが大変だったと言われました。つまり、私は彼女が思った「おかしな人」の定義には当てはまらなかったのでしょう(笑)。つくづく、服が人に与える影響力のすごさには驚かされます。
 とにかく、服選びで大切なのはシーンに合っているかどうかです。解説してみましょう。ビジネスシーンでは服装は「記号」になります。所属であったり、職種であったり、地位や立場を表すツールです。まず、自分の職種や会社にふさわしい服装であるかどうかをよくチェックしてみてください。ビジネスを含む大切な面談では、必ず襟がある服にしましょう。「襟をただす」という言葉もあるように、襟がある服は謙虚な気持ちを代弁してくれるはずです。さらに、気が張る面談ではジャケットが鎧となってくれます。スーツでなくても襟付きのシャツとジャケットを着るだけで、改まり感が演出できます。
 デートの場合、その日のテーマが決まっていればシチューションや目的地に合った服を選びましょう。相手の好みがわかっていれば、それに合わせてみるのもひとつの方法です。「こちらに合わせてくれたんだな」と好感度がアップするはずです。

 婚活の場合は、目的によって少し服選びが変わります。どうしても、どんな相手でも結婚を前提にした交際相手と出会いたいのであれば、女性らしく、やさしく見えるようなパステルカラーのブラウススーツなどがいいでしょう。そして、あまり流行を取り入れすぎないことをおすすめします。自分自身が抱く具体的な結婚生活のイメージに合う相手と交際したい場合は、結婚後の生活のイメージに合ったファッションにしましょう。多くを語らずともファッションがあなたの希望を語ってくれるはずです。いずれのシーンでも、あなたの意図を正しく伝えてくれるコーディネートをすること。それが、あなたの夢が現実化する第一歩になるかもしれません。

2015年1月28日水曜日

失敗体験もじぶんの引き出しにしまっておく

 「じぶんの服装を第三者の立場から見るようにしよう!」と心がけているとはいえ、すぐにメタ認知能力をめるのはむずかしい。そんなときはドレスコードやTPOの知識が強いサポーターに。
 パーティーや結婚式の2次会の招待状などの文中にはよく「平服でお越しください」と書かれてます。実際、フタを開けてみれば会場に来ている人々の服装は、じつに様々。スーツやワンピースのなどの少しあらたまった服装の人もいれば、ポロシャツなどのカジュアルな服装の人もいます。「平服」の受けとりかたが人によって違うことがわかります。世に「ドレスコード」という言葉があります。「Dress Cord=服装規定」。「軍隊や学校などの集団やパーティなどの集会、高級レストランなどにおける服装の規則」(デジタル大辞泉より)とあります。本来は、その場所や会合の主催者が決め、それを来場者に通達する際に示すもの。たとえば、格式の高いレストランでは「ノーネクタイ、ノージャケットはお断り」などと表示したりしています。ドレスコードやTPOの条件をきちんと満たしていれば、ファッション・コミュニケーションでつまずくことはないはずです。
  とにかく、メタ能力を高めたいなら、恐れずにいろいろな経験をしましょう。たとえ失敗しても、次のステップのための知識として貯金しておけばムダにはなりません。いろいろな経験を記憶の引き出しにしまっておけばいいのです。そうすれば、多彩なシチュエーションへの応用力になります。
 じぶんの引き出しに入れたいものは、他にもあります。それは身近な第3者からのアドバイス。親しい人であれば、その場にそぐわない服装をしていればアドバイスをしてくれるはず。なかでも3パターンの賢人の言うことは注意をして聞いてみてください。
その3パターンの賢人とは
センスが競える人……女友達
ほんとうのことを言ってくれる人……母親
異性目線を教えてくれる人……男友達
  ワコールが2010年に実施した女性の意識調査で「自分の容姿について、どのような人の目を意識しますか?」という問い(複数回答)に対し、最も割合が高かったのが「同性の友人」で、7割近くにのぼりました。次いで4割以上が「自分自身(自己満足)」と答え、3番めが「夫」で3割以上の人が回答しました。(ワコール ココロス研究会『女性の下着と心理に関する意識調査』ココロス共同研究レポートvol.1 2007年3月より)
 女友達はじぶんが同性の目を意識しているぶん、友達の服装もよく観察しています。ただ、女性同士は、社交辞令的にお互いを褒めあうことも多いことは頭に入れておきましょう。気のおけない友人であれば歯に衣を着せぬ批評をしてくれるかもしれませんが、それも相手のキャラクターしだい。方法としては、会った瞬間の反応に注視してみてもいいかもしれません。「わー、ステキなジャケットね! どこのブランド?」「今日はいつもと雰囲気が違うね。いいじゃない!」など開口一番、好反応なら正直な感想といえるでしょう。ふつうのあいさつから、すぐに世間話に入った場合は服装にふれたくないのかもしれません。もし、お互いの服装について、とくに会話がなかったとしても大丈夫。相手の服装をよく観察するだけでもいいのです。そして自分の服装との違いをよくチェックして、今後の参考にしましょう。ただし、おしゃれな友人に限りますが(笑)。
 母親からは友人よりも辛辣なフレーズがどんどん出てきます。そんなとき「お母さんたら、ひと言多い!」と怒る前に母親の言葉のなかにあるヒントを探してみてください。それは、目上の女性からの意見かもしれないし、母親の経験値から出た感想かもしれない。いずれにしてもじぶんには無い目線なので、いっときの感情に流されずアドバイスとして受け止めてみましょう。
 異性の場合、夫や恋人の意見はかなり貴重。多くの場合「自分のパートナーがきれいに見えるように」「恥をかかないように」と考えて意見をしてくれるはずです。男友達の場合は彼のキャラクターにもよりますが「嫌われたくない」と思ってストレートな感想を言わないかもしれません。そんなときは、彼の態度を見て判断してもいいし、気のおけない仲であればじぶんから「今日の服装どう思う?」など、問いかけてみるのもひとつの方法です。女友達に褒められたことがある服装でも異性には受け入れられないなど、いろいろ勉強になることがあると思います。

2015年1月21日水曜日

ファッションで、じぶんをプレゼンする

  人は、他者の見ためにプラスして、風の噂などごく限られた情報を当てはめて相手のパーソナリティを決めてしまうことがあります。これを心理学的には「印象形成」と言います。そして、相手のパーソナリティを決めるときの基準となるのが「ステレオタイプ」と「暗黙の性格観(人格観)」です。
 「ステレオタイプ」とは、よく巷で言われるひな型を当てはめること。「スーツを着た人はちゃんとしている」「美人はモテる」「血液型がA型の人は几帳面」などなど。よくよく考えると根拠がない場合が多いのですが、ほんの数分前にあった人など、その人となりの情報が少ない場合はこういったひな型を当てはめてしまうのでしょうね。そして、ステレオタイプの定義は世間一般に広く浸透しているものが多いため安定していて、普遍な場合も多いのです。
 「暗黙の世界観」は、自らの経験や知識、もしくは先入観などから判断してしまうこと。これは人によって異なるため、「何を基準にそう思っているのか?」と他者と相容れない場合もあります。とくに初対面のときや、あまり長く話をしたことがない相手からは自分が望む・望まざるに関わらず、自分の人間性が決められてしまうわけです。
 脳科学の研究では、次のようなデータがあるそうです。脳の海馬という部分とその周辺部から出る「シータ波」という脳波があります。人が何かに興味を持っていたり、注意をひかれたりしたときにこのシータ波が出やすい状態になり、シータ波が出ているときは集中力や記憶力がよくなる傾向にあるそうです。シータ波は楽しいときやここちよさを感じているときにも出るそうです。心理学と脳科学を応用すると……。初対面やまだ知り合って間もない人と会うときは相手にここちよさが感じてもらえる服装を心がけると自分に興味を持ってもらいやすくなったり、こちらの話に集中してもらえる確率が高くなります。ファッションをコミュニケーション・ツールとするうえで、気をつけてほしいのは「他人が自分のことをどう見ているか」をちゃんと気にしているかどうか。いくら「ステレオタイプの服装だから大丈夫だろう」と思っても、シチュエーションによっては当てはまらない場合があることもしっかり考えられていないと、逆効果にもなりかねません。
 初対面の相手と会う際、どんなファッションを選択すればいいかを決めるときには「ステレオタイプ」や「暗黙の世界観」なども判断材料にしながら自分を客観的に見ることが大切になります。自分を俯瞰で見られる能力のことを心理学的に「メタ認知」といいます。「メタ」とは「高次の」という意味。自分の考えかたや行動などを第三者的に見ることができる人は「メタ認知能力」が高い人になります。逆に「メタ認知能力」が低い人は「自分がこう思っているから、相手もそうだろう」という思いこみで行動することが多くなるため、自己中心的になりがち。

 人とのコミュニケーションをスムーズにするためには「メタ認知能力」を高めたいものです。ではどんなセルフトレーニングはどうすればいいのか? すぐにできそうな方法のひとつに、日々のできごとや自分の気持ち・1日の反省点などを書きとめる方法があります。たとえば、最近、「悩みが軽くなる」と注目されている「メンタフダイアリー」も同じ手法。「メンタフ=メンタルタフネス」とは、ストレス耐性を指した言葉です。悩みやストレスについて書き出して自分の心のクセなどに気づくことで、自分が陥ってしまうつまずきのパターンを知り、それを回避することができるようにする日記型のトレーニング方法です。アメリカでは保健医療の対象にもなっている「認知療法」のひとつ。最近ではメンタフダイアリーが実践できるアプリもあります。つまり、文字に書き出すことで自分の行動のモニタリングを習慣化するわけです。メタ認知能力を高めることで、人と会う際の服選びの失敗も少なくなり、相手の印象形成にもいい影響を与えられ、気持ちのいい面談だった思ってもらうことで記憶にも残りやすくなります。

2015年1月14日水曜日

相手の心に響くコミュニケーションとは

コミュニケーションの語源はラテン語で「分かちあう」を意味する「communicare」だそうです(ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典より)。社会生活を営むうえで必要不可欠なもので、だれもが意識せずとも行っている。とはいえ、多くの人が悩み、模索しているテーマでもあります。
 コミュニケーションの基本は、相手に自分の気持ちを伝え、相手の気持ちを聴くことです。言葉にしてしまえば、とてもシンプル。ただ、言葉の選びかたや相手の受け取りかたによって同じ会話でも意味が違ってくることもあるので、なかなか厄介なシロモノでもあります。
 心理学的で言葉は2種類に分けることができます。ひとつはおしゃべりや文字などのいわゆる言語。もうひとつあるのが非言語と言われるもので、話し方(声のトーンや抑揚など)、表情、視線、姿勢、そしてファッションなどが含まれます。言語はとても直接的です、非言語は感覚的。人は話す内容には気を遣っていますが、ほかの非言語ツールがどれだけ機能しているかを気にしていないことが多いように思います。
 進化論で有名なチャールズ・ダーウィンは著書のなかで、人間の表情が表現する感情は、人類に普遍的なものだということを論じています。(チャールズ・ダーウィン著「人間および動物の表情について」より)。つまり、喜びや悲しみを表す人間の表情はいつの時代、どこに行っても変わらないということです。
 ダーウィンの言葉通り、人の表情が普遍的なものだと実感できるできごとが最近ありました。2012年にマイクロソフト社が申請した特許で、ユーザーの感情に合わせた広告が表示されるように設計されたコンピュータ・システムがそれです。ゲーム機、パソコン、スマートフォンを含めたモバイル端末などのツールにユーザーの表情、体の動きなどから感情を測定・判断し、広告をピックアップするソフトウエアだとか。もちろん検索ワードやメール、オンラインゲームからのデータなども判断材料にはされるそうですが、最新テクノロジーの分野で人間の表情、つまり非言語ツールがいかにいろいろな情報を含んでいるのかが認知されているわけです。言葉だけに頼らないコミュニケーションを有効活用できれば、とても強い武器になるのではないでしょうか。
  非言語ツールのなかでだれもが比較的、気をつけているのはファッションでしょう。仕事や学校など公の場では、言語よりファッションのほうがおしゃべりな場合も多々あります。というのも、たくさん人がいるなかで自分に発言する機会が与えられないケースも珍しくないからです。発言はしなくとも、相手には見られている。つまり非言語ツールのみを使ったコミュニケーションはしている訳です。

 では、ファッションというコミュニケーション・ツールで相手に伝わるのはどんなメッセージなのでしょうか。たとえば、ビジネスシーンの場合、きちんとアイロンがかかっていることがわかるシャツやスーツ・ハンカチなどを身につけている人と、しわだらけで薄汚れたものを着ている人がいるとします。どちらに好意を抱くかはおのずとわかりますね。ヨレヨレの服を身につけて会議に参加したとき「この仕事を重要に思っていないな」とほかの人から思われても仕方がありません。プライベートでも、清潔感のある服装やおしゃれをして来たことがわかる服装のほうが、会う相手も「自分と会うことを大事に思っていてくれるんだな」とうれしく思うはず。逆に言えば、服装に気を遣うだけでじぶんの気持ちを相手に伝えることができるのですから、ファッションとは、とても使い勝手のいい非言語ツールにもなり得るのです。

2015年1月7日水曜日

わずか数秒で決まる人間関係

第2章 「コミュニケーション」とは
 わずか数秒で決まる人間関係
 「第一印象が肝心」。いまさら言われるまでもなく、だれもが思っていること。では、その第一印象は、実際にはどれほどの時間で決まってしまうのでしょうか。
 たとえば、スカンジナビア航空の社長ヤン・カールソン氏は次のようなことを言っています。
「最前線の従業員の15秒間の接客態度が、企業の成功を左右する。その15秒を“真実の瞬間”という」(ヤン・カールソン「真実の瞬間」ダイヤモンド社より)。ビジネスの成功はお客さまの第一印象によって決まり、その第一印象は最初の15秒間の接客で決まってしまう、というわけです。
  米・プリンストン大学の心理学者ジャニン・ウィスリ博士が初対面での人間心理を探る実験をしたところ、「好き」か「嫌い」かの判断は0.1秒間で下されていたという結果になったそうです。 第一印象はわずか数秒ほどで、ある程度決まってしまう思っておいて間違いはなさそうです。
 では、なぜ人はこれほどまでに第一印象を気にし、振り回されてしまうのでしょうか。それは、心理学でいうところの「初頭効果(Primacy effect)」という分野で研究されています。人は最初に覚えたり、触れたりした事柄は記憶や印象に残りやすいという人間心理を初頭効果と言います。身近な例をあげてみましょう。たとえば、こどものころに初めて食べたピーマンがとても苦くて固くて美味しくなかったとします。「ピーマンは苦くておいしくない!」と思った子どもはピーマン嫌いになり、以降、食事に出されたピーマンを残すようになる……。出がけに家族に「帰りにスーパーで食パンと牛乳とリンゴとトイレットペーパーを買ってきて」と頼まれたとします。いざ、スーパーに行ったとき、最初の食パンや牛乳をすぐに思い出せても、最後のトイレットペーパーを思い出せない……。だれもが経験したことがあり、大げさに言えば、その後の人生を大きく左右してしまうのが初頭効果なのです。
 もうひとつ、怖い事実があります。実は人は、一度「こうだ!」と思うと、それを裏づける情報ばかりを選んで集めてしまう傾向があると言われています。心理学では「確証バイアス」といいます。一度相手にネガティブなイメージを与えてしまった場合、その後のおつきあいでポジティブなイメージに変換するのがむずかしい理由がおわかりいただけましたか? 上司にどれだけいいアイデアを提案しても難色を示されるのに、ほかの人が一度だけいいアイデアを出したらすんなり許可された……という経験をしたことはありませんか? それは、初頭効果がなせるわざかもしれません。
 では、相手に良い印象を与えようと思ったら、初対面で何に気をつけなければならないのか。それはずばり「見ため」です。人の五感が外部からの情報を受けとるときの割合は視覚が83%、聴覚が11%、臭覚が3.5%、触覚が1.5%、味覚が1.0%とする資料があります(「産業教育機器システム便覧」より)。つまり、私たちは目から入った情報を主観として、いろいろな判断していると言っても過言ではないわけです。
 次に好印象を与えるコツについて、考えてみましょう。たとえば、あなたがセミナーにひとりで参加しようとしていとします。座席が自由に選べる場合、一体どのような席を選択しますか? まず、会場内の空席をピックアップし、それぞれの空席の隣に座っている人間を観察するのではないでしょうか。そして「この人の隣であればOK」と判断した席を選択するはず。この場合の基準には、おおむね、次のような理由があげられます。
 まず「同じ女性(男性)だから」「同じくらいの年代だから」「同じような服装をしているから」など共通点がある人の選択。人は自分に近い要素を持った人には無意識に親近感を覚えます。たとえばテレビに出ている有名人の出身地や出身校が同じだと知ると、その人に好感をもったり、それがきっかけでファンになったりしたという経験は多くの人が持っていると思います。有名人ではなくとも、あまり親しくなかった大学の同級生が同じ高校の出身だとわかったとたんに共通の話題が豊富になって会話が弾み、心理的距離感が短くなるというケースも珍しくありません。人は共感がもてる相手と一緒にいると心地よさを感じ、とても安心した気持ちになれますが、その理由も脳の働きと深い関係がある。もともと脳は無意識のうちに安心した状態にとどまろうとする性質を持っているといわれます。共感を持ち、気を許した相手に対し「もっと話していたいな」「また、会いたいな」と思うのも、脳が引き起こす心理状態なのです。 共通点以外の理由として考えられる「話しやすそうな人」「明るそうな人」「親しみやすそうな人」なども、安心感が得られそうな相手というのも、脳がそれを好むから。ほかには「ステキな人だから」「ちょっと自分のまわりにはいないタイプの人だから」という理由で判断する人もいまず。この場合は相手に対する「興味」が理由。つまり、好奇心ゆえの行動になります。初対面の相手との間に「共通点」「安心感」「興味」などが見いだせた場合、心の距離は縮まり、コミュニケーションがとりやすくなるのです。初対面で成功するうえでの大切なキーワードです。
 最後に、付け加えておきたいのは日々の第一印象。職場で、学校で、その日はじめて顔を合わせたときの第一印象も大切にしてください。職場や学校の朝、人と会ったときなどなど。「とってもおしゃれ。センスのいい人だったんだ」「髪型を変えてステキになった!」など好印象を与えることで会話もはずむし、商談もスムーズに行きそうです。

コラム
〜第一印象を考えるうえで重要な鍵を握るのが「メラビアンの法則」〜
米・UCLA大の心理学名誉教授であるアルバート・メラビアンが1971年に発表した心理学の概念。人の好意や反感に関するコミュニケーションについての研究で、感情と態度が矛盾したメッセージが発せられたときの人の受け止め方について考察しています。つまり、顔は怒っているのに口調はやさしい場合と、その逆のパターンで対話したとき人は五感の何を基準にするか、などです。実際の実験内容は、まず「maybe」という単語をさまざまな抑揚で録音したテープ音声を被験者に聞かせ、さらにその音声とさまざまな表情の顔写真を組合せて聞かせたそうです。この実験での被験者の反応をまとめて数値化したら、視覚と聴覚では視覚に重きを置いた人の割合が55%、逆に聴覚を優先させた人が38%、話している内容などの言語情報が7%という結果になったそうです。このデータの数値が広義的に「人は見ために左右されやすい」と解釈されていますが、メラビアンの研究意図からすれば少し違うようです。たとえば、男性がみんなのいる前で恋人に「今日の君は特別きれいだね」と言い、それを受けて女性がほほえみながら、少し強い口調で「みんなのいる前で、何よ!」と言った場合、男性はどう思うのでしょうか。おそらく、「とか、言いながらうれしいんだな」と思うのではないでしょうか。「怒らせてしまった!」と思う人のほうが少ないことでしょう。これがメラビアンの法則です。つまり、表情と話し方が一致していない場合、見ためで理解する人と聞こえかたで理解する人に分かれ、ひとつの情報でも伝わり方が違ってくる、ということです。そこで、私からの教訓! 大切な会話ほど、表情と話し方を一致させないと誤解が生じることもあるので、気をつけましょう。