2015年1月7日水曜日

わずか数秒で決まる人間関係

第2章 「コミュニケーション」とは
 わずか数秒で決まる人間関係
 「第一印象が肝心」。いまさら言われるまでもなく、だれもが思っていること。では、その第一印象は、実際にはどれほどの時間で決まってしまうのでしょうか。
 たとえば、スカンジナビア航空の社長ヤン・カールソン氏は次のようなことを言っています。
「最前線の従業員の15秒間の接客態度が、企業の成功を左右する。その15秒を“真実の瞬間”という」(ヤン・カールソン「真実の瞬間」ダイヤモンド社より)。ビジネスの成功はお客さまの第一印象によって決まり、その第一印象は最初の15秒間の接客で決まってしまう、というわけです。
  米・プリンストン大学の心理学者ジャニン・ウィスリ博士が初対面での人間心理を探る実験をしたところ、「好き」か「嫌い」かの判断は0.1秒間で下されていたという結果になったそうです。 第一印象はわずか数秒ほどで、ある程度決まってしまう思っておいて間違いはなさそうです。
 では、なぜ人はこれほどまでに第一印象を気にし、振り回されてしまうのでしょうか。それは、心理学でいうところの「初頭効果(Primacy effect)」という分野で研究されています。人は最初に覚えたり、触れたりした事柄は記憶や印象に残りやすいという人間心理を初頭効果と言います。身近な例をあげてみましょう。たとえば、こどものころに初めて食べたピーマンがとても苦くて固くて美味しくなかったとします。「ピーマンは苦くておいしくない!」と思った子どもはピーマン嫌いになり、以降、食事に出されたピーマンを残すようになる……。出がけに家族に「帰りにスーパーで食パンと牛乳とリンゴとトイレットペーパーを買ってきて」と頼まれたとします。いざ、スーパーに行ったとき、最初の食パンや牛乳をすぐに思い出せても、最後のトイレットペーパーを思い出せない……。だれもが経験したことがあり、大げさに言えば、その後の人生を大きく左右してしまうのが初頭効果なのです。
 もうひとつ、怖い事実があります。実は人は、一度「こうだ!」と思うと、それを裏づける情報ばかりを選んで集めてしまう傾向があると言われています。心理学では「確証バイアス」といいます。一度相手にネガティブなイメージを与えてしまった場合、その後のおつきあいでポジティブなイメージに変換するのがむずかしい理由がおわかりいただけましたか? 上司にどれだけいいアイデアを提案しても難色を示されるのに、ほかの人が一度だけいいアイデアを出したらすんなり許可された……という経験をしたことはありませんか? それは、初頭効果がなせるわざかもしれません。
 では、相手に良い印象を与えようと思ったら、初対面で何に気をつけなければならないのか。それはずばり「見ため」です。人の五感が外部からの情報を受けとるときの割合は視覚が83%、聴覚が11%、臭覚が3.5%、触覚が1.5%、味覚が1.0%とする資料があります(「産業教育機器システム便覧」より)。つまり、私たちは目から入った情報を主観として、いろいろな判断していると言っても過言ではないわけです。
 次に好印象を与えるコツについて、考えてみましょう。たとえば、あなたがセミナーにひとりで参加しようとしていとします。座席が自由に選べる場合、一体どのような席を選択しますか? まず、会場内の空席をピックアップし、それぞれの空席の隣に座っている人間を観察するのではないでしょうか。そして「この人の隣であればOK」と判断した席を選択するはず。この場合の基準には、おおむね、次のような理由があげられます。
 まず「同じ女性(男性)だから」「同じくらいの年代だから」「同じような服装をしているから」など共通点がある人の選択。人は自分に近い要素を持った人には無意識に親近感を覚えます。たとえばテレビに出ている有名人の出身地や出身校が同じだと知ると、その人に好感をもったり、それがきっかけでファンになったりしたという経験は多くの人が持っていると思います。有名人ではなくとも、あまり親しくなかった大学の同級生が同じ高校の出身だとわかったとたんに共通の話題が豊富になって会話が弾み、心理的距離感が短くなるというケースも珍しくありません。人は共感がもてる相手と一緒にいると心地よさを感じ、とても安心した気持ちになれますが、その理由も脳の働きと深い関係がある。もともと脳は無意識のうちに安心した状態にとどまろうとする性質を持っているといわれます。共感を持ち、気を許した相手に対し「もっと話していたいな」「また、会いたいな」と思うのも、脳が引き起こす心理状態なのです。 共通点以外の理由として考えられる「話しやすそうな人」「明るそうな人」「親しみやすそうな人」なども、安心感が得られそうな相手というのも、脳がそれを好むから。ほかには「ステキな人だから」「ちょっと自分のまわりにはいないタイプの人だから」という理由で判断する人もいまず。この場合は相手に対する「興味」が理由。つまり、好奇心ゆえの行動になります。初対面の相手との間に「共通点」「安心感」「興味」などが見いだせた場合、心の距離は縮まり、コミュニケーションがとりやすくなるのです。初対面で成功するうえでの大切なキーワードです。
 最後に、付け加えておきたいのは日々の第一印象。職場で、学校で、その日はじめて顔を合わせたときの第一印象も大切にしてください。職場や学校の朝、人と会ったときなどなど。「とってもおしゃれ。センスのいい人だったんだ」「髪型を変えてステキになった!」など好印象を与えることで会話もはずむし、商談もスムーズに行きそうです。

コラム
〜第一印象を考えるうえで重要な鍵を握るのが「メラビアンの法則」〜
米・UCLA大の心理学名誉教授であるアルバート・メラビアンが1971年に発表した心理学の概念。人の好意や反感に関するコミュニケーションについての研究で、感情と態度が矛盾したメッセージが発せられたときの人の受け止め方について考察しています。つまり、顔は怒っているのに口調はやさしい場合と、その逆のパターンで対話したとき人は五感の何を基準にするか、などです。実際の実験内容は、まず「maybe」という単語をさまざまな抑揚で録音したテープ音声を被験者に聞かせ、さらにその音声とさまざまな表情の顔写真を組合せて聞かせたそうです。この実験での被験者の反応をまとめて数値化したら、視覚と聴覚では視覚に重きを置いた人の割合が55%、逆に聴覚を優先させた人が38%、話している内容などの言語情報が7%という結果になったそうです。このデータの数値が広義的に「人は見ために左右されやすい」と解釈されていますが、メラビアンの研究意図からすれば少し違うようです。たとえば、男性がみんなのいる前で恋人に「今日の君は特別きれいだね」と言い、それを受けて女性がほほえみながら、少し強い口調で「みんなのいる前で、何よ!」と言った場合、男性はどう思うのでしょうか。おそらく、「とか、言いながらうれしいんだな」と思うのではないでしょうか。「怒らせてしまった!」と思う人のほうが少ないことでしょう。これがメラビアンの法則です。つまり、表情と話し方が一致していない場合、見ためで理解する人と聞こえかたで理解する人に分かれ、ひとつの情報でも伝わり方が違ってくる、ということです。そこで、私からの教訓! 大切な会話ほど、表情と話し方を一致させないと誤解が生じることもあるので、気をつけましょう。

2014年12月24日水曜日

ファッションで夢は叶う!?

 実は、私たちは常日頃から意識せずとも衣服の「後光効果」を利用していることがあります。いわゆる「TPO」を意識した服装をすること。良識ある社会人として、TPOを意識した服装をしなさいと教えられてきたはずです。つまり、場所をわきまえた服装をさえしていれば、それだけで「常識のある人だ」という好印象を持ってもらえるのです。だれもが服装が持つ効果をなんとなくは知っているわけです。
 アメリカ・スタンフォード大学の心理学部で行われた有名な実験があります。無作為に集められた被験者のうち、ほぼ同じ人数を看守役と囚人役の2つのグループにわけ、実際の刑務所を舞台にそれぞれの役割を演じさせました。役割に合わせた制服を着て。その結果、時間経過とともに、看守役は看守らしく、囚人役は囚人らしく、演技を超えたふるまいをするようになったそうです。映画化もされるほど衝撃的な実験でした。この実験では、いろいろな人間心理が分かったのですが、衣服が人に与える心理効果の大きさもそのひとつ。制服を着ることで人は役割を意識し、その役割通りの行動をしようとする心理が無意識に働くのです。まさに前述したナポレオンの「人はまとった制服のしもべとなる」。
 この心理的効果を意識的に活用できれば、とてもいい処世術になると思いませんか? じぶんがこれから会う人とどんな関係を築きたいか。どんな印象を与えたいか。目的を達するために人に与えたい心理的効果を明確にすれば、じぶんが着るべき服のテーマも見えてくるはず。たとえ、自分に自信が無くても、そこは「馬子にも衣装」です。服の力を借りて自信を持った自分を演じきればいいのです。

 人間心理と服の関係がいかに密接で複雑なものか。これから、じっくりと掘り下げていきたいと思います。

2014年12月19日金曜日

ファッションというコミュニケーションツール

 ヒトはおそらく、自然環境の変化に対応するために衣服を身につけるようになりました。やがて、社会形成がなされると役割分担から社会的身分というものが生まれ、着用する衣服にも役割が生まれた。立場や身分を相手に伝えるコミュニケーション・ツールとして服が利用されたわけです。
 603年、聖徳太子に制定されたとされる冠位十二階。役人の位を12に分け、それぞれの色も定めた制度です。冠の色を見れば、どんな立場の人でどんな役職の人か分かったので仕事もスムーズだったことでしょう。
 制服など付加価値のある衣服は、他者に心理的効果を与えることができます。たとえば、医師の白衣や警察官の制服に対し、「この服を着ている人物は信頼に値する」という先入観を人は持ちます。これら、人に対していい印象を与える事例について、心理学では「威光効果」と言います。
 堺雅人さんが主演した映画「クヒオ大佐」という作品があります。これは実在の結婚詐欺師がモデル。「自分はアメリカ人のパイロットでクヒオ大佐」だと名乗り、数人の女性から約1億円をだましとったのです。クヒオ大佐と名乗った男は髪を金髪に染め、軍服のレプリカを着ていたそうです。この事件でも「金髪」「軍服」の威光効果のほどが伺えます。

 人は自分が思っている以上に視界からの情報に左右されやすいのです。そして、視界から入ってくる情報が心地いいものであるほど、その情報源にいい印象を持ちます。「高級な外車に乗っている」「美しい姿勢である」「字がきれいである」などなど……。人対人の場合、「後光効果」のある衣服を活用することで人間関係の構築がよりスムーズになるはずです。

2014年12月10日水曜日

ドレスコミュニケーション  〜服は口ほどにものを言う〜

 「人は見かけが9割」という本が以前、話題になりました。「社会を支配しているのはノンバーバル・コミュニケーションである」とし、心理学や社会学など多彩な角度からノンバーバル・コミュニケーションについて語られています。
 「ノンバーバル・コミュニケーション」(non—verbal communication)とは、言語以外の手段で行われるコミュニケーションのこと。非言語コミュニケーションとも言います。おもに心理学で使われる言葉です。
 コミュニケーションの手段として人は言葉以外にも表情、言葉の抑揚、身振り・手振り、姿勢から服装なども用いています。これら非言語コミュニケーション・ツールは、人間関係において言葉以上に多くの役割を担っているとも言われています。たとえば「目は口ほどに物を言い」ということわざにもあるように。ノンバーバル・コミュニケーションはチャールズ・ダーウィンも研究していたそうです。
 ノンバーバル・コミュニケーションを利用して成功した著名人のエピソードは、たくさんあります。たとえば、アメリカ16代大統領のエイブラハム・リンカーンもそのひとり。彼は雄弁家で演説は上手だったそうですが、小柄で貧弱だったため、見ためがいまひとつでした。あるとき、リンカーンはひとりの有権者女性から次のようなアドバイスをもらったそうです。
 「あなたのポスターに口ひげを書いてみたら、大統領にふさわしい風格が出ましたよ!」。
このアドバイスによって、リンカーンはひげを伸ばすことにしたとか。
 アメリカの心理学者レオナード・ビックマンの有名な実験があります。電話ボックスにコインのお金を置いておきます。電話ボックスに入った人に「ここにコインが置いてありませんでしたか?」と、ある人物にたずねさせます。コインの有無を訪ねる人物の身なりは2パターン。Aはきちんとしたスーツの紳士。Bはヨレヨレで清潔感のない服装の男性。実験の結果、Aの人物に対しては8割の人が丁寧に対応してコインがあったことを教えてくれたとか。対してBの人物に対しては7割の人が怪しんで、コインの有無についても教えてくれなかったそうです。つまり、同じ言葉を発していても、見ための違いで人はまったく異なる情報を受け取ってしまうわけです。さて、今度、大切なミーティングがあるとき、あなたはどんなコーディネートで行きますか?

2014年11月26日水曜日

服によって形成される社会的人格

服を表す言葉はいろいろあります。
・「身につけるもの」では衣服、制服、私服、平服、洋服、和服。
・「体や心に受けいれる」では服用、服膺、頓服、内服、着服。
・「つき従う」では服従、畏服、敬服、感服、克服、征服。
・「つとめにつく」では服務、服喪、服役。
藤堂明保氏の「漢字語学辞典」によると、「服」は「舟+反」。舟べりは浸水しないよう板が隙間無く打ち付けられています。そして「反」とは「人+又(手の形を表す)」の変形。
「服」は、人を手で引き寄せ、そばにぴったりとくっつけた形。そこから転じて、人のそばにつく=服従の意味ももつようになったようです。
 ナポレオンの有名な名言のひとつは、
 「人はまとった制服のしもべとなる」。
人は着ているものどおりの人間になるという意味。実際、ナポレオンは自分が目をかけた部下には少し上の階級の制服を与えて人材教育をしたそうです。古来より、服には人を動かす効果があるという考えかたが存在していたわけですね。
 心理学で有名な「マズローの法則」または「マズローの欲求5段階説」。
人間の欲求は5つの段階からなり、生きるうえで重要な要素からピラミッド状の階層をなしているというもの。最下層には「生理的欲求」があり、食欲・睡眠欲・性欲などがあげられます。
ひとつ上の階層は「安全の欲求」で住居・衣服・貯金など。次が「社会的欲求」で友情・協同・人間関係。さらに上が「自我の欲求」で他人からの尊敬・評価・昇進。最上層が「自己実現の欲求」で潜在的能力を最大限に発揮して思うがままに動かす。
 低下層の欲求が満たされたとき、人はさらに上の階層の欲求が満たされることを望む……という人間心理を説明した理論です。
 このマズローの法則を人間と衣服の歴史に置き換えてみてはどうでしょう。人間にとって本能的な欲求が満たされたとき、まず「寒さ・暑さ」などから身を守るために何かを身にまとうようになった。その後、自分がどの地域に属しているか、どんな仕事をしているかなどの区別のために服を着用。さらに、シャーマンや支配者たちなどが社会的な階級を示すために、豪華絢爛な服を着るようになった。また、軍服などは人々から尊敬を集める象徴的な意味をもつ……。こんな流れを見ていると、服は人間の欲求に従って進化してきたようにも思えます。

 そうであれば、現代人は潜在的能力が最大限に発揮できるような服を求めている……と、いえるのではないでしょうか。ひとりひとりの能力は十人十色。他人と同じような服を着ていては、あなたの現実は何も変化しないでのは?

2014年11月12日水曜日

服を着るということ

 人は、いつから服を着るようになったか知っていますか? 
およそ7万年前からと言われています。
クロマニヨン人が出現したとされるのが約4万5000年前。
進化の途中にあるころから、ヒトは衣服を身につけるようになったわけです。
とはいえ、これはあくまで仮説。衣服の起源は未だに証明されていません。
なぜか? 衣服が化石として発掘されるケースがほぼ無く、繊維などは時間を経ると朽ち果てて痕跡が残らないからだそうです。
 どうしてヒトが服を着るようになったか。一般的にまず考えられるのは「気候の変化から身を守るため」「社会の中でじぶんの身分を他者に示すため」などです。つまり実用性や機能性からの発展。
 私は、もうひとつ「美しいファッションで着飾る快感」も加えていいと思います。
2005年に国立科学博物館で「縄文VS弥生 ガチンコ対決!!」という特別展が開催されました。そこで紹介された縄文時代の衣服が、実におしゃれ。黒に深紅の模様などをあしらった原色使いの服に、アクセサリーも多数。これら縄文ファッションには、現代と共通する美的感覚が見られます。(もちろん、この衣服もいろいろな考証に基づく推論が前提ではありますが)
 2001年に、北海道恵庭市カリンバ3号遺跡で発掘された縄文時代のシャーマンと思われる4人の人物の調査結果でが報道されました。袖がある衣服を着て、絹のような繊維で作られた布が掛けられて埋葬されていたそうです。副葬品には漆塗りの櫛や頭飾り、耳飾り、腕輪、腰飾り帯などが多数。国内で初めて発見された漆製品も含まれていたそうです(恵庭市ホームページ参照)。
 装飾品には魔除けなどの意味があり、おもにシャーマンなどの役目を持つ人物が身につけていたと思われています。
 弥生時代にはガラスが伝来し、ガラスを使った装飾品も作られるようになったようです。衣服は、前述の「縄文VS弥生」展によると白や淡い色を貴重としたファッションに変化したようです。
 身を守るためだけの服なら、模様をつけたりアクセサリーをつける必要はないはず。シャーマンたちが祭礼のために身につけたものだというにしても、一般のヒトがシャーマンの服を見て「美しい」など、何らかの感情を持ったことでしょう。そして、それはシャーマンたちが自分をプロデュースするうえでも意図したことだったと思うのです。つまり、美を賞賛するという感性が縄文時代にはすでにあったと考えてもいいのでは? 人と衣服の関係は、縄文時代にはすでに確立されていたとも言えます。
 次に、日本人と洋服との歴史をざっと見てみます。
 男性の場合、軍服など制服を採用することから洋装化が始まったようです。1864年の長州征伐において幕府が西洋式の軍服を採用。その後、1871年に軍や官僚の制服を西洋風にすることを定めた天皇の勅諭が発せられ、警官・鉄道員・教師などが制服や洋服を着ることになったようです。
 明治時代に政府は西洋化政策において洋服の着用も奨励したそうですが、一般人には定着しませんでした。日本人がふだん着として洋服を着るようになったきっかけは、太平洋戦争とも言われています。
 井上雅人氏は著書「洋服と日本人」で「日本人に洋服=近代産業社会的な身体をもたらしていったのは、国民服、標準服、もんぺといった軍国主義の産物であった」と述べています。
  また、1923年の関東大震災を契機とする向きもあります。このとき、和服を着ていた女性が逃げ遅れるケースが多かったことで、有事の際にも動きやすい洋装化のスピードが速まったとも。1927年、銀座三越で国内初のファッションショーが開催されたことからも、人々の洋服に対する関心の高まりがうかがえます。
 そして、第二次世界大戦後。

 アメリカをはじめとする欧米文化への憧れ、闇市で売られるアメリカの古着の購入、手入れのしやすさ、動きやすさ、職業婦人の象徴として。などなど……。さまざまな時代の要因が絡まり合い、洋服は広く一般女性に着られるようになり、やがてふだん着として定着していったようです。第二次世界大戦の終戦は1945年9月。一般的な日本人が洋服を着るようになったのがそれ以降とするなら、たかだか、70年ほどのおつきあいになるわけです。
http://www.city.eniwa.hokkaido.jp/www/contents/1370232374613/index.html

2014年10月22日水曜日

「ファッションコミュニケーション 対話する服」

「ファッションコミュニケーション 対話する服」を書くにあたって


 私は、かれこれ30年にわたりファッションマーケティングを生業にしてきました。
おもな仕事は1〜2年先のファッショントレンド予測にはじまり、商品が店頭に並ぶ18か月前の素材開発、12か月前の商品開発、6か月前の小売業の品揃えのサポートなどなど。
 そして、企業や大学でファッションの知識・カラー・VMD(ビジュアルマーチャンダイジング)にまつわる講座も開いています。

 1〜2年先のファッショントレンドを予測するとき、私はまず、時代の背景から感じとれる空気感をよみます。そして、そのイメージを言い表すキーワードや視覚化できるビジュアルをたぐり寄せます。
これらをコラージュマップにまとめ、テーマカラーを抽出するとともにテクスチャーから素材を選択。
 次に、抽出したカラーと選んだ素材を使って、次のシーズンのファッショントレンドを予測するスタイリングマップを作成。ファッションのスタイルを構成するシルエットやアイテムの特徴が表現されたこのマップが、商品開発や品揃えの方向性を決める指針になるのです。これらのマップは時代の気分をファッションに置き換えて映しだす鏡のような物です。

 この仕事をしていて、ファッションには時代を、もっと言えば時代を作りだしている人々の心の動きが大きく関わっていることを実感してきました。
 ファッション・トレンドにしてもしかり。そして個人のファッションの好みにしてもしかり。
人の社会性の基本は服を着ることであり、顔以外の9割がファッションで覆われています。
なぜ、その服を選んだのか? なぜ、その服を買おうと思ったのか? なぜ、今日その服を着たのか?
ファッションには、意識していてもいなくてもその人の気分や感情、自分を「こう見てほしい」という思惑、自分が「こうありたい」という願望などが映し出されているのです。つまり、人は無意識にファッションでコミュニケーションをはかっているわけです。

 30代半ばのとき、自宅がある芦屋で阪神大震災に遭遇しました。この経験から「有事の際に、ファッションは不要だ。もっと人の役に立つことはできないものか」と思い悩む日々。
 そして、「何かあったとき、人の痛みを軽くしてあげたり、元気にしてあげることはできないか?」という気持ちからコミュニケーションのための心理学の道へ。以来、カウンセリングやコーチングについて学んできました。
 30年間ファッションを見つめ続けるとともに、20年近くコミュニケーション心理学を学んできた私がたどり着いたのが「ファッションコミュニケーション」というフィールド。そしてファションとコミュニケーションを合わせた独自のファッション論を構築するようになりました。

 もうひとつ、本を書きたいと思った理由があります。
それは、最近の日本のファッションに「ちょっとおかしい」「ちょっと違うよ」という疑問をたくさん持つようになったからです。
 たとえば、いま日本に蔓延するファストファッション。2000年代半ば以降、一気に世界的トレンドとなり日本の市場をも席巻したのはご存知の通り。1990年前後から始まった日本のバブル崩壊がファストファッションの追い風にもなりました。
 とはいえ、インナーなどの消耗品ならともかく、大量生産の安い衣料品で全身をコーディネートし、その現状に満足するのはいかがなものか。

 ファッションデザイナーの丸山敬太さんは、ある講演で次のように語っています。
「僕はこの世には2つの服があると考えています。ひとつは“用を足す服”。たとえば、スポーツをするための服やビジネスの場面で着る服など、なんらかの目的や用途を満たす服です。僕が創りたいのはもうひとつの“心を満たす服”です。人生には大切な服、使い捨てではない“心を満たす服”が必要だと、僕は考えています」と。そして、また「最近はファストファッションが溢れていますが、“用を満たす服”を“心を満たす服”の代替にはしてほしくないと思うのです」とも言っています。私も心から同感します。

 「人は見ためが9割」という本がベストセラーになりました。たしかに相手が初対面であれば、まず外見から判断しますね。ファッションは自分自身をまわりに語るメッセージのひとつなのです。
安くてトレンドの服を着る。そんな横並びのスタイルで、何が伝えられるでしょうか。
 そして、私はファストファッションには次のような弊害があると思っています。それは、なんとなくトレンドに乗っているような安心感とベースにある使い捨て感覚。こんなファッションを身につけていることが物を大切にする心、日本が誇るべき「もったいない」の精神を忘れさせてしまうのでは? と危惧しています。いま、世界は環境と人にやさしいサスティナブルな社会基盤づくりに向けて舵をきり始めたのに、使い捨て文化を促進するようなファストファッションは時代とは真逆の価値観しか育てないのではないでしょうか。ファストファッションすべてを否定はしませんが、自分のためにも、もっと視野を広げてファッションを見てほしいのです。

 書店の本棚には、モデルさんやスタイリストさんのファッション本が沢山ならんでいます。この本を書くにあたって私もそれらの多くを読みました。しかしどの本を見ても、あくまでモデルさんやスタイリストさんの持論のみ。そこに書かれたことを自分に置き換えたとして、だれもが参考にできるファッション論だとは思えませんでした。理由として、スタイルがいいモデルさんなら着るだけでかっこよく服が着こなせるし、スタイリストさんはモデルさん相手に、苦労せずに理想的なスタイリングができるからです。モデルさん本やスタイリストさん本はあくまでひとつのモデルパターン。例えるなら、マネキン人形が服を着ている状態をまとめただけ。そこには服を着る心は感じられませんでした。
 本書で私が書きたいのは、自分の外側を意識しただけのきれいな服の着かたではなく、着る人の内側をちゃんと意識した服の着かた。着る心を育てたいのです。そして人生のさまざまなシーンで成功するために知っていてほしい戦術・戦略を持った服の着かたを語っていきたい。

 ファッションとは時代の流れとともに流動的であいまいなもの。とてもひとことでは語れるものではありませんが、それでも言いたいこと、知ってほしいことがたくさんあります。これまでどっぷりファッションに浸かってきた人生で得た情報や身につけた感性、そしてコミュニケーション心理学で学んだ知識を活かして私なりのファッション論を広く、とくにこれからの時代を担って行く若い人たちに発信したい。そう、思ってこの本を書いていきたいと思います。

 就活のブラックスーツ、そしてリゾート地で着るようなクールビズスタイルをよしとしているあなた。
自分の魅力や、人と違うセールスポイントをアピールしなければならない場にこれらの服をほんとうにふさわしいですか?