2015年10月28日水曜日

悩みをカバーしてくれる着こなしのテクニック

では、前回確認したじぶん自身のデータをもとに以下、じぶんのウィークポイントだと思う項目をご参照ください。

❤小柄(身長155cm以下)なことが悩みの場合
小柄な人はトップスとボトムスのバランスが重要。目線をなるべく上半身に集めることで背の低さから注意をそらすことができます。デザイン性のあるアイテムを着る場合はトップスにして、下半身にいくほどシンプルな着こなしをおすすめします。色は最小限にまとめると全体がスッキリと見えます。アクセサリーやバッグなどの小物類については、大きさがポイントです。大ぶりのアクセサリーをコーディネートすると大人の物を借りてきた子どものようになってしまいかねませんのでサイズ感が重要です。

小柄な人のコーディネートのポイント
・使う色は2~3色まで
・トップスとボトムスの色の濃さをそろえる
・アクセントとなるアイテムは上半身に
・全身のシルエットは逆三角形になるように
・下半身にはスッキリ見えるような色や形を合わせる

小柄な人のNGアイテム
・大きな衿、袖、ボタン
・ボトムに大きなポケット
・大きな柄
・幅広ベルト
・大きなアクセサリーやバッグ


❤大柄な(身長165cm以上)ことが悩みの場合
 大柄な人は、小柄な人とはまったく逆のコーディネートになります。加えて上から下までを単一のデザインにするよりも上半身と下半身に違うアイテムを持ってくるほうがいいでしょう。映画「千と千尋の神隠し」に登場した「顔無し」というキャラクターは白い顔以外は全身黒ずくめでしたが、大きくて威圧感たっぷりに見えませんでしたか? この作品のキャラクターの特徴にはぴったりでしたが、普通の女性は必要以上に背が高く見られたり、威圧感を演出する必要はないはずなので、NGコーディネートになります。トップスとボトムスでコントラストをハッキリさせて視線を散らすようにしましょう。上下で違う色を着たり、ベルト使いも有効。その際、ベルトは幅広の物がより効果的。また、目線をそらすという意味で大ぶりのバッグやアクセサリーも有効です。
 反対に、小さな小物や細かいディテールの装飾は避けたほうがいいでしょう。また、短かすぎるジャケットは下半身を長く見せ、縦ストライプのワンピースなどは縦の長さを強調するので避けたほうが無難。

大柄な人の場合のコーディネートのポイント
・コントラストをはっきりつける
・上下、別々の色を着る
・中間でラインを区切る
・大胆な柄やプリントはOK
・幅広のベルト、大ぶりのアクセサリーやバッグも有効

大柄な人のNGアイテム
・細かく、かわいらしいディテール
・短すぎるジャケット
・からだのラインが出る服
・縦ストライプ
・小さめの小物、アクセサリー、バッグ


❤華奢な体型が悩みの場合
 スリムできゃしゃな人は、体に密着しないデザインや素材の服がおすすめ。たっぷりしたドレープのブラウスやウエストのブラウジングでのボリューム感が体型をカバーしてくれます。胸もとを出すと華奢な体型が強調されてしまう場合が多いので、スカーフやリボンタイなどで胸もとを見せない工夫を。縦よりも横のラインを強調するようなコーディネートを基本にしてください。ボーダーの場合は横ボーダーに。ただ、ボーダーのラインが太めだと体型とアンバランスになるので実際にじぶんに合わせてみて判断してください。

華奢な体型が悩み場合のコーディネートのポイント
・やわらかく、ふんわりとした素材
・胸もとのスカーフやリボン結び
・高いネックライン
・横のラインを強調する
・ヨーク切り替え


NGアイテム
・太いストライプや大柄プリント
・深く開いた衿、ノースリーブ
・幅広いベルトや大きなアクセサリー



❤ふくよかな体型が悩みの場合
 体のラインをあまり明確にしない服選びが大切。ほどほどにゆったりとしたシルエットのほうが目の錯覚を利用してスッキリ見せることができます。服を買うときはジャストサイズではなく、余裕のあるサイズかワンサイズ上のものを。デザインは縦のラインや斜めのラインが強調できるようなテイストのものが有効。白やパステルカラーなどの中間色は膨張色なので避け、ビビッドな色やダークな色、黒などを中心にコーディネートすれば引きしまったイメージづくりができます。もし本人のパーソナルカラーがスプリングやオータムの場合、顔周りにパーソナルカラーを合わせて、ボトムスは濃いめのカラーリングにするといいでしょう。


ふくよかな場合のコーディネートのポイント
・縦のライン、斜めのラインを強調
・ゆったりとしたシルエット
・黒やビビッドな色づかい
・ニットはしっかりとした細ケージなどを
・アクセサリーはシンプルに

NGアイテム
・短めのスカート
・体にフィットしたシルエット
・白や暖色系・パステル系の膨張色
・たっぷりとしたフレアーやギャザー
・小さめのアクセサリー、細めのベルト


❤ヒップが気になる場合
 ヒップのサイズが気になる場合は、まず隠すことです。チュニックなどでウエストラインからヒップまでの縦のラインを作るのもよし。ロング丈のジャケットで隠しても。ジャケットに肩パッドをつけてヒップまわりを小さめに見せるという目の錯覚を利用してもいいでしょう。ボトムスはゆったりしたサイズがいいとはいえ、フレアーやギャザーなどで必要以上にたっぷりさせるデザインは避けましょう。色は濃いトーンでスッキリと。

ヒップを強調しないコーディネートのポイント
・肩パッド入りのトップスやアウターを合わせる
・オーバーブラウスやロング丈のジャケットで隠す
・ボトムスはゆったりしたサイズのものを選ぶ
・ボトムスの色は濃い色を合わせる


NGアイテム
・ジャストサイズのボトムス
・ヒップポケットのあるデザイン
・フレアーやギャザースカート
・大柄のチェックや柄
・ショート丈のジャケット


❤首が短い・太い場合
 有効なのは、デコルテを広く見せるような服。前開きのシャツやブラウスなら衿を広く開けて、顔~首~デコルテに一体感のある見せ方をするといいでしょう。深いVネックなども同じ効果が期待できます。広く開けて見せるか、もしくはリボンスカーフなどで目の錯覚を利用するのもいいでしょう。首周りに沿ったチョーカーネックレスなどは、首のサイズを引き立たせてしまうので避けたほうが無難。

首周りが気になる場合のコーディネートのポイント
・大きく開いた衿で肌を見せて、顔から首までのラインを一体化させる
・リボンスカーフを飾る

NGアイテム
・首のつまった衿
・タートルネック
・チョーカーネックレス




❤大きいバストが悩みの場合
 首が気になる場合と同様、デコルテを強調したデザインにする。バストに目線が集中することを避けてくれます。反対に胸元に凝った装飾がある服は視線を集めてしまうので逆効果となります。フリルやリボンなども必要以上に胸の部分が大きく見せるため避けたほうがよく、シンプルなデザインを心掛けましょう。また、サイズがタイトなもの、たとえば前開きブラウスのボタンの間にすき間が開くようなサイズは胸がより大きく見えてしまいがち。あえてセクシーさを強調したい場合は有効ですが、太ってみえる危険性もあります。

バストが大きい場合のコーディネートのポイント
・Vネックか襟ぐりの深い服にする
・トップスのデザインはシンプル・イズ・ベスト
・バストラインを目立たせないジャケットを羽織る


NGアイテム
・袖丈がバストラインの服
・Tシャツ、カットソー、ピッタリとしたトップス
・胸にデザインがあるもの


❤小さいバストが場合
 バストにボリュームがない場合、襟ぐりは浅めを選ぶことをおすすめします。前身ごろにデザインや装飾がある服などは、バストが小さめの体型のほうが美しく着こなせます。トップスはゆったりとしたサイズのものを選んで体のラインを強調しないようにしましょう。肩パッドのある服は、布地がゆるやかに体に沿って体のラインが隠れるため、有効。ボリュームのあるボトムスはトップスとのバランス見ながらコーディネートしましょう。


バストが小さい場合のコーディネートのポイント
・ゆったりしたトップスを選ぶ
・肩パッドのあるジャケットも有効
・胸ポケットや前身頃の装飾などもOK

NGアイテム
・ジャストサイズのトップス
・ボリュームのあるボトムス
・深めのVネックや大きな襟ぐり


❤脚が太い場合
 とにかく、脚を強調しないような着こなしをする。たとえばスカート・ストッキングやタイツ・靴をすべて同色にすると脚のラインが目立たなくなります。ベルトの位置を高めにしたり、イヤリング(ピアス)やネックレスを大ぶりなものにするなど、上半身に視線を集めるのもいいでしょう。靴は、足首がみえるシンプルなデザインを選ぶこと。スカート丈としては、ミニスカートはもちろん、ふくらはぎのいちばん太い場所に丈がくるようなミモレ丈も避けることが重要です。


足が太い場合のコーディネートのポイント
・スカート・ストッキングやタイツ・靴は同系色にする
・顔の近くにアクセントをもっていく
・ベルトを高めの位置にする
・靴はシンプルなデザインを選ぶ

NGアイテム
・スカートの丈はミニや中途半端なものは避ける
・ショートブーツ
・ローウエストのデザインは下半身に視線が集まる
・凝ったデザインでめだつ靴



❤二の腕が気になる場合

 二の腕が気になる場合、基本は隠すことです。腕のリアルなサイズが分からないようにするゆったりとした長袖のトップスが基本。五分丈や七分丈など、いちばん気になる部分を隠す長さの袖もOK。反対に、ノースリーブはもちろん、一時期流行したバルーン袖などはあまり選ばないほうが得策。あと、気をつけて欲しいのは、袖の部分だけにたっぷりと布地を使ったデザイン。体型や全体のラインとのバランスに気をつける必要があります。

腕が太い場合のコーディネートのポイント
・ゆったりとした長袖のトップスやジャケットがおススメ
・二の腕が隠れる五分丈・七分丈はOK
・体型とのバランスに気をつける


NGアイテム
・ノースリーブやバルーン袖、カフス付の半袖
・二の腕の最も太い部分から腕が見える袖丈




ポイントのまとめ
■気になるところ、隠したいところに視線を集めないようにすることが重要。具体的には、隠したい箇所に着丈や切り替えラインを持っていかない。気になるところに凝った装飾があれば、視線を集めてしまい、強調されてしまいます。ただし、この心理効果を逆に活用するという方法もあります。隠したい部分から離れた場所に装飾やデザインがある服やアクセサリー・小物をコーディネートすると、気になる箇所から視線をそらすことができるからです。視線をコントロールすることで良い印象づくりができます。
■自身の輪郭や骨格がどんな形であるか、どんなタイプであるかを把握しておく。そうすれば衿の形や開きぐあいはどうすればいいか、顔まわりにどんなアクセサリーを合わせればいいかが分かります。
■骨格に合った素材を見極めることも重要。骨格がしっかりしている場合、厚みや重みがある素材のほうが身体のラインが隠せるため、骨格も目立ちにくい。反対に骨格が華奢な場合は、薄くて軽い素材を選び、身体からつかず離れずのラインを演出したほうが得策。 

2015年10月21日水曜日

人の目をダマすことは、とってもカンタン!

まず、次の図を見てください。








左右それぞれ、中心にある円の大きさは違うように感じませんか? おそらく、右側の図の中心円のほうが左側よりも大きいと感じた人が多いと思います。が、実際のところ、2つの中心円の大きさは同じ。同じ大きさの円がそれぞれ大きな円と小さな円で囲まれた場合、目が錯覚を起こし、大きさが違う円だと人に感じさせるのです。これは「エビングハウス錯視(さくし)」と呼ばれています。ドイツの心理学者ヘルマン・エビングハウスの研究によって明らかになったと言われます。
 
 では、次の画像はどうでしょう。








いずれの横線もゆがんで見えるのではないでしょうか。実はこれも、横線はすべて平行に引かれていてゆがみはありません。試しに横線に定規などを当ててみればびっくりするかのでは? これは「ミュンスターバーグ錯視・カフェウォール錯視」と呼ばれる現象。平行線が黒の場合は「ミュンスターバーグ錯視」と呼ばれ、平行線が灰色の場合はカフェウォール錯視」と呼ばれるそうです。ちなみに「カフェウォール錯視」の由来は英国の研究者がコーヒーショップの壁の模様からこの現象を発見したことに由来するそうです。

 2006年にテレビ番組で放映された「ポップル錯視」という現象もあります。これは2005年ごろからネット上などで話題になったもの。同じ単語の文字を続けて入力したとき、文字が下がったり上がったりして見えるとネットユーザーの間で広まり、これに錯視の研究者が着目。現在も研究中の錯視現象のひとつだそうです。具体的には次のような例があります。

杏マナ―杏マナ―杏マナ―杏マナ―杏マナ―杏マナ―杏マナ―杏マナ―杏マナ―杏マナ―
杏マナ―杏マナ―杏マナ―杏マナ―杏マナ―杏マナ―杏マナ―杏マナ―杏マナ―杏マナ―
杏マナ―杏マナ―杏マナ―杏マナ―杏マナ―杏マナ―杏マナ―杏マナ―杏マナ―杏マナ―
―ナマ杏―ナマ杏―ナマ杏―ナマ杏―ナマ杏―ナマ杏―ナマ杏―ナマ杏―ナマ杏―ナマ杏
―ナマ杏―ナマ杏―ナマ杏―ナマ杏―ナマ杏―ナマ杏―ナマ杏―ナマ杏―ナマ杏―ナマ杏
―ナマ杏―ナマ杏―ナマ杏―ナマ杏―ナマ杏―ナマ杏―ナマ杏―ナマ杏―ナマ杏―ナマ杏
杏マナ―杏マナ―杏マナ―杏マナ―杏マナ―杏マナ―杏マナ―杏マナ―杏マナ―杏マナ―
杏マナ―杏マナ―杏マナ―杏マナ―杏マナ―杏マナ―杏マナ―杏マナ―杏マナ―杏マナ―


 「杏マナー」の羅列は右下がりに、「ーナマ杏」は右上がりのように感じませんか? (文字列の傾きぐあいはフォントや文字の大きさ(文字列の間隔)によっても変わるようです)
 目の錯覚とひと口に言ってもいろいろな種類があります。先ほどから出ているような、ある一定の条件のもとに現実とは違う見え方をする場合は「錯視」とも呼ばれ、脳の働きと関係があると考えられています。現在、そのしくみははっきりと解明されてはいません。視覚が得た情報にそれまでの経験値やそのほかの補足を加えて脳が判断してしまうために起こるという説が一般的です。身近な錯視の例をあげるとしたら、月に関するものが分かりやすいでしょう。同じ日の月を日没後と、しばらく時間をあけた真夜中と2回見た場合、日没後の地平線近くにある月のほうが、真夜中の天空の真ん中にある月より大きく見えるはずです。これは地平線近くにある月は近くの風景や建物など比較対象となる物があるため距離感が実感しやすくなり、一方天空の月はまわりに比較対象となる物がないため遠く感じてしまうからだそう。
 このように人間の目とは、現実の物体を見てはいてもさまざまな要因を加味したうえで判断するので、必ずしも正確に物のカタチや大きさを捉えることはできていないわけです。この錯視の効果を大いに利用すれば、ふっくら丸顔を少し小顔に、広めの肩幅を目立たなく、ふつうの脚の長さを少し長めに……なども不可能ではありません。それが、今から提案していく着こなしのテクニック術になるわけです。無理なダイエットをする前に、実践してみてください。それほど極端な変化は無いとしても、時間やストレスをかけずに変身できるはずです。

2015年10月14日水曜日

そのコンプレックスと、どう向き合いますか?

「永遠の妖精」として世代を問わず人気のオードリー・ヘップバーン。彼女がコンプレックスをバネに魅力を開花させたエピソードがあります。オードリーはじぶんの高すぎる鼻から人々の視線をそらすためにメイクを研究し、太いキリッとした眉や濃いアイラインを引くことで目元を目立たせるようにした結果、独特の美しさを作り出すことに成功したと言われています。
 インターネット上で女性の体型に関する悩みについてのアンケート結果をみると、多くの調査結果で8〜9割の女性が何らかの悩みを抱えているという結果が出ています。そして、現在もしくは過去にダイエット経験があるとする人もアンケート対象者の半数以上であることが多い。
 厚生労働省が全国レベルで実施している「国民健康・栄養調査」の平成25年度を見ると、肥満度(BMI)が「ふつう」の範囲にあてはまる人は男女とも、どの年代でも約6割を超えとなりました。一方、女性のデータを細かく見てみると「やせ」の範囲にいる女性が20代では21.5%、30代では17.6%、40代では11.0%でした。つまり、女性全体では7〜8割の人が「やせ〜普通」の体型になるわけです。このデータだけを見ると、体型に悩みを持つ人は全体の2割弱では? と思われる数字と言えます。にも関わらず、巷には「ダイエット」情報があふれています。テレビの情報番組はもちろん、女性誌、インターネットでも次から次へと新しいダイエット方法が紹介されています。それは、世の多くの女性が痩せるための情報を求めているからに他なりません。
※BMI(Body Mass Index):BMI指数=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m
「やせ」はBMI指数18.5kg/㎡、「ふつう」はBMI指数18.5kg/㎡〜25kg/㎡、「肥満」はBMI指数25kg/㎡以上と定義。
 同じく厚生労働省の平成17年度の国民健康・栄養調査をみてみます。「食生活についての改善意識(項目別)」の「やせすぎや太り過ぎでない体重を維持する」(第70表の12)ことについての意識調査結果を見ると、「改善したい」と考える女性は10代では53.2%、20代では54.3%、30代では53.8%でした。同じ設問で「すでにできている」と答えた女性は10代で40.3%、20代で40.4%、30代で43.0%。調査年度は違いますが、先の「やせ〜ふつう体型」の人の割合と照らし合わせると「肥満」体型ではないにも関わらず、体型を維持するための食事の改善を望んでいる人の割合が多いことが読み取れる結果ではないでしょうか。
 なぜ、女性はこのように「痩せたい」と思ってしまうのか。鷲田清一氏の著書に「ちぐはぐな身体」(ちくま文庫)で次のような考察があります。(以下、抜粋)

 ニーチェという哲学者は、「各人にとってはじぶん自身がいちばん遠い」と言っているけれど、それをまねて、ぼくらにとってはじぶんの身体がいちばん遠い、と言えるのではないだろうか。じぶんの身体は、その表面のほんの一部分しか見えないし、身体の内部ともなればこれは全然見えない。〜中略〜 それにしても身体がこんなに遠いとは、考えてみればおそろしいことだ。そしてそれをあつかいあぐねているうちにも、身体は勝手に変化していく。

 私たち、とくに女性はじぶんの身体について、どこまで分かっているのでしょうか。厚生労働省のデータを見ても、いまのじぶんの身体に満足していない人の多さがうかがえます。しかし、果たしてじぶんの身体に満足していない人のうち、本当に身体を改善する必要がある人は多くないのが現実ではないでしょうか。鷲田清一氏は「ちぐはぐな身体」で次のようにも述べています。

 考えてみるに、どうもおそらく、身体を意識するよりも先に、身体のモデルがあるらしい。ファッションにおいてイニシアティブをもっているのは、身体ではなくモデルのようだ。もしじぶんの身体がモデルどおりであれば、だれも痛い目、しんどい目をして努力する必要はない。みんなモデルを想定して、それを基準にしてじぶんの身体を意識するから、じぶんの身体は規格を外れたものとして意識されることになる。

 このように女性から羨望の眼差しで見られるモデルやセレブたちが生まれながらの美しいボディで人生を謳歌しているのかと言うと、そうでもないようです。いつも奇抜な衣裳やメイクで話題になるレディ・ガガをはじめ、マライヤ・キャリー、クリスティーナ・アギレラなど多くのアーティストたちは太ったり痩せたりを繰り返しているように思います。人気絶頂の頃に比べてぽっちゃりしたブリトニー・スピアーズもダイエットには苦労しているようで、自宅に数千万円かけて専用のトレーニングジムを作ったとか。
 健康的にダイエットができれば問題はないのですが、一方で、体型維持を追求し過ぎた結果の悲劇も起こっています。2006年にはブラジルのモデル、アナ・カロリナ・レストンが21才という若さで亡くなっています。彼女の死亡要因は拒食症だと言われており、モデル業を始めたことが拒食症の引き金になったと考えられ、172cmの身長に対し、体重は40kgだったそうです。その後、ウルグアイの22才のモデルとその妹で18才のモデルが相次いで栄養失調が原因で死亡するなど、モデルの過酷な現実が世間の注目を集めるようになりました。そして、2015年4月、フランスでは痩せ過ぎているモデルの雇用を禁止する法案が可決。また、ミラノコレクションが開催されるイタリアではBMI18以下のモデルの出演が禁止されているとか。
 モード王国・フランスには拒食症の患者がおよそ4万人もいると言われています。拒食症とは「神経性食欲不振症」という心の病気。太ることへの恐怖が食べることへの恐怖につながり、強迫観念となって、やがて食べようと思っても食べられなくなることも。
 じぶんにプレッシャーをかけて無理なダイエットをせずとも、着こなしや洋服選びで美ボディに見せるノウハウをご紹介するのがこの章の目的です。社会活動をするとき、人は裸ではありません。必ず洋服を着ています。言葉は悪いですが、洋服のデザインや着こなしかたで上手にごまかせばダイエットで1〜2kg痩せたような効果も期待できるのです。痩せ効果だけではなく、顔を小さく見せたり、足を長く見せたりすることも不可能ではありません。
 では、まず、じぶんの体型を客観的にチェックすることから始めましょう。全身鏡にじぶんを映していろいろな角度から見るもよし。家族や友人に写真を撮ってもらうのもよし。以下の項目についてのデータを集めてみてください。
■肩幅は広い?狭い?
■胸は大きい?小さい?
■首は長め?短め?
■腕は太い?細い?
■胴は短い?長い?
■ウエストは細い?それともズン胴?
■ヒップは大きめ?小さめ?
■太ももは太め?細め?
■足は長いほう? 標準? 短め?
■顔は小さめ? ふつう・
■顔の輪郭はどんな形?



 自身の体型を客観的にとらえることができましたか? 次の段落からは人間の心理的な錯覚を利用することで体型を実際よりも細くみせたり、足を長くみせたりするテクニックを紹介していきます。実は、人間の目というのは不正確で、実際のモノのカタチを見ていないことも多いと分かれば、着こなしテクニックの効果にも納得していただけるでしょう。

2015年10月7日水曜日

第8章  コンプレックスとファッション・コーディネーション 〜ヒトは見た目が9割〜


●あなたの劣等感とは、「幻」かもしれません
  人はなぜ、服を着るのか。著書「衣服の心理学」(1930年)でJ.C.フリューゲルが指摘した3つの動機を要約すると以下のようになります。

装飾……身体の美化を目的として。
慎み……衣服で身体を隠し、他者の注意を引きつけないよう自制する目的として。
身体保護……皮膚を守り体温を調節するなど健康維持を目的として。

3つの動機のうち、①の「装飾」は人間、とくに女性が社会生活を営むうえで大きな意味を持ちます。
 女性に特化して話を進めましょう。服飾の歴史において女性と衣服との関わりは人生そのものと言っても過言ではありません。「女性の場合、その服装が男性の社会的地位や富を間接的に示すことであったことから、見られる存在として、身体の理想はその時代のファッションと強い関係を持ちながら、さまざまに変化を見せてきました」と牛田聡子氏は解説しています(神山進編集「被服行動の社会心理学」より)。
 中世ヨーロッパではコルセットで体のラインを矯正し、時代の流行に合わせた美しいプロポーションを作り上げていました。20世紀に入るとフランスのファッションデザイナー、ポール・ポアレが「女性のドレスとは、装飾で身体を覆うことでなく、女性の身体の自然の容姿を強調することを契機に、それを緊張させることである」と説き、コルセットのないスカートを発表。これを機に女性はコルセットから解放されはじめます。その後、マリー・クワントが1965年に発表したミニ・ルックにより、女性の身体美の価値観がさらに大きく変わりました(神山進編集「被服行動の社会心理学」より抜粋・引用)。かつて、男性の立場の象徴として苦しさに耐えて美しく着飾る存在であった女性。本来のプロポーションをさらけ出す服装とともに自由な存在へと生き方も変化してきたわけです。
 社会心理学者である神山進氏は、ヒトの「被服行動」について「被服行動の社会心理学」の冒頭で次のように定義しています。

「人間が被服を着用する場合、そこには2つの目的を区別することができます。一つは「生理的目的」であり、他は「社会・心理学的目的」です。〜中略〜社会・心理学的目的を実現するための被服に一般的に認められる、次のような3つの社会・心理的機能に着目します。第一は被服によって自分自身を高め、強め、また変えるという「自己の確認・強化・変容」機能、第二は被服によって他者に何かを伝えるという「情報伝達」機能、第三は被服によって他者との行為のやりとりを調整するという「社会的相互作用の促進・抑制」機能です」。

 ふだん私たちが服を選ぶ際には「自己の確認・強化・変容」機能に着目することが、ほとんどだと思います。つまり、「じぶんに似合っている服かどうか」「じぶんを良く(美しく)見せられる服かどうか」「じぶんの新しい魅力をひきだしている服かどうか」などです。
 私たち、とりわけ女性は上記のような服選びをする理由として、じぶんのコンプレックスの解消、あるいは隠匿が大きな動機となります。ここからは、このコンプレックスについて考えてみたいと思います。
 「コンプレックス」の意味を調べると、もともとは精神分析で使われる概念とあり、その解説としては「無意識の中に抑圧され、凝固し、そのために意識された精神生活に影響を与え、ときに強い感動を誘発する観念の複合体をいう」だそうです(「ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典」より一部抜粋)。具体例としては「マザー・コンプレックス」「エディプス・コンプレックス」「インフェリオリティー・コンプレックス」などが挙げられます。
 「インフェリオリティー・コンプレックス」はいわゆる劣等感のこと。日本では「コンプレックス=劣等感」という使われかたが一般的です。劣等感という概念を発見したのは、オーストリアの心理学者アルフレッド・アドラーだとされています。アドラーは「人はつねに理想の状態を追い求めている(優越追求)。が、理想の状態とは仮想である。いつまでたっても理想に到達できないじぶんに劣等感を覚える」という優越コンプレックスの理論を構築していったそうです。つまり、実現不可能な理想のじぶんは虚像であるのに、それになれないじぶんはダメな人間だと思ってしまう人間心理が「劣等感」。他人と比べるのではなく、いまのじぶんと理想のじぶんとを比較したときに生じる差に嘆きがちなのが人間、というわけです。
 たとえば、多くの女性たちの一般的な口癖に「痩せたい」「ダイエットしなきゃ」が挙げられます。けれど、これらの女性の中で本当に痩せる必要がある人は決して多くはありません。では、「痩せたい」と言っている人は謙遜しているのかというとそうではなく、本人はほんとうに痩せたいと思っていることも多い。その理由は「理想とするじぶんの体型に比べると、いまのじぶんは体重がオーバーしているから」というケースが多いはず。
 「理想のじぶん」という目標を持って努力をすることは必ずしも悪いことではありません。けれど、「理想のじぶん」にがんじがらめになって無理なダイエットをしたり、劣等感に苛まれすぎて人と会うのがツラくなり、対人恐怖症などになってしまってはなんの意味もありません。そこで、この章では、いまのじぶんの姿を客観的に見つめ、服の選びかたや着こなしの工夫で理想のじぶんに近づけていく方法を解説していきます。