2015年8月19日水曜日

色のパワーとビジネスの関係

色が人間にさまざまな影響力を持つことは、お分かりいただけたと思います。色のことをよく知ればじぶんのモチベーションを上げるツールにもなるし、他者に対する印象を良くすることも可能な訳です。第一段階としてじぶんの色=パーソナルカラ―をご紹介していきます。まずはパーソナルカラーの歴史について、ほんのさわりだけひも解いておきましょう。
 色について一定の理論があることを発見したのはドイツの美術学者・画家のヨハネス・イッテン(1888~1967年)と言われています。話の発端はデザイン学校で講師をしていたイッテンが、生徒たちにリンゴの絵を書かせたときに始まります。生徒たちの絵の色使いが描いた本人の髪・瞳・肌の色に調和する色合いになっていることをイッテンが発見。その後、彼の理論をもとに、四季のイメージで色を4つのグループに分けた「フォーシーズンズカラーシステム」に体系づけられ、パーソナルカラーの診断基準ができあがりました。四季のイメージを用いたのは「誰でもイメージしやすい」といった理由からだったとか。
 人の印象を左右する色の効用に、まっさきに飛びついたのがアメリカの政治家たち。1960年代、政治家たちはカラーコンサルタントをブレーンに加え、選挙のときのイメージ戦略に乗り出しました。
 パーソナルカラーを戦略的に利用して成功したといわれているのが、アメリカの歴代大統領でも人気が高いジョン・F・ケネディ氏。1959年の大統領選挙でケネディとニクソンがテレビで討論会をしたときのことです。その際、ケネディはメイクアップしてテレビ出演に臨んだとか。ちなみにテレビは当時、カラ―ではなくモノクロではありましたが、ファウンデーションを塗ったケネディの顔色は日焼けをした精悍な若者という風にテレビに映ったそうです。また、ケネディは濃い色(一説には濃紺)のスーツを、ニクソンは淡い色(一説には茶色)のスーツを着たため、ケネディの存在感が際立ったとも言われています。ファッションコンサルタントを始めとする専門家たちと良い印象づくりを研究していたケネディは、いち早くイメージ戦略を取入れることで、みごと大統領の座を射止めたわけです。以来、アメリカの大統領選において候補者はファッションコンサルタントを雇うことが通例となったそうです。また、アメリカでは真っ赤なネクタイを「パワータイ」とし、ここ一番!というシーンで使うことが慣例的だそうで、近年のアメリカ大統領選でも大事な演説時に赤いネクタイをする候補者は多いと言われています。
 次に日本におけるパーソナルカラーの歩みをかんたんにご紹介します。パーソナルカラーを使ったカラ―・コーディネートがビジネスとして考えられるようになったのは、1980年代に入ってから。当時、日本人の特徴を体系的に分類することの難しさ、色に対するニーズの少なさに加えて一極集中のブランドブームなどもあり、すぐには受けいれられませんでした。

 1990年代にはファッションも多種多様になり、いわゆる「私ファッション」の時代が到来。カラ―・コーディネートが徐々に注目されるようになったようです。それら試行錯誤を経て、日本人に合わせた「フォーシーズンズカラーシステム」が登場。現在ではファッションやメイクアップだけでなく、企業のCI活動や人材教育の場、インテリアなどの生活空間から街づくりにいたるまで、色が人の心理にもたらす効果について重要視されています。

2015年8月12日水曜日

第7章 色が変えるココロ、色で変わるコミュニケーション

●色を操れば、友達と1歩差がつく!


 このブログを読んで頂いている方の多くは、おしゃれをするのが好きな人ではないかと思います。とくに女性に限って言ってしまえばおしゃれをするのが嫌いな人は、ほぼいないのでは。ただ、おしゃれのことを考えたり、実際に服をコーディネートするのが得意な人と苦手な人に分かれることはあるでしょう。「今日の服、似合っているね」「いつもおしゃれですね」などと他人から言われて気分を害する人はいないはずです。他人がじぶんの服装を肯定的に捉えている、もしくは羨望のまなざしで見ていると分かったとき、おおむね、人はとても心地よい気分になります。そう、これこそ人におしゃれをさせる重要な動機なのです。
 ここで、脳のある働きについて見てみます。脳科学によると、脳には「報酬系」と呼ばれる神経伝達回路があるそうです。その仕組みはざっくり言うと、「報酬」と呼ばれる種々の刺激を受けることで快感が得られるというもの。「報酬」の種類は一般的に「感覚的報酬」「物理的報酬」「社会的報酬」「知性的報酬」などに分けられます。

  「感覚的報酬」は人間の三大欲望(食欲・睡眠欲・性欲)などに伴う快感のこと。もともと人間に備わっている生理学的な快感と言えるでしょう。
  「物理的報酬」は、お金や物品などを手に入れたことによる快感。
  「社会的報酬」は社会生活において発生する快感。たとえば親や先生に褒められる・友人に認められる・会社で昇進するなど、他者との関わりの中で生まれる快感のこと。
  「知性的報酬」は読書や勉強、いまならネットサーフィンなどで新しいことを知ったときなどに生じる知的好奇心が満たされたときの快感。
 
 以上の中でもとくに、おしゃれのモチベーションを上げるのが「社会的報酬」と言えるでしょう。女性に話を特化するならば「物理的報酬」(=ブランド品や最先端トレンドアイテムなど他人が持っていないものをゲットした)も加わります。
 ここではさらに「社会的報酬」の背後にある女性の特性について考察してみます。そこから見えるものは「女性の同性への対抗意識」や「嫉妬心」です。つまり、女性がおしゃれをする動機のひとつには「周囲にいる同性と同等あるいは少し上のランクに見られたい」という気持ちがあるわけです。その心理の背景には、同性のライバルの中から異性に選ばれて伴侶となり子孫を残したいという本能的なものもあると思われます。そして、「嫉妬」。じぶんと容姿や地位がそれほど変わらない、いわば同じグループに属している他の同性に負けたくないという意識が働くこともあります。「私と同じような体格で成績も似たようなクラスにいる。顔の造作もそれほど違いはないのに、あの人はおしゃれだというだけで褒めらている!!」というような状況でしょうか。また、心理学的にみるとじぶんのコンプレックスを刺激されることによっても嫉妬が芽生えると考えます。「彼女がモテるのは痩せていてスタイルがいいからだ。私だって痩せれば……」という状況。このときの
コンプレックスを感じる→不快だ→不快を感じない状況にしたい
という心理の流れから
「同性よりもさらに美しくなって認められたら、この不快感が無くなるはず!」
と奮起するパワーすら、生まれるのです。少々、ネガティブなスタートではありますが、嫉妬は上手にコントロールできればじぶん磨きのきっかけになります。必ずしも「彼女に嫉妬するなんて私ってイヤな女!」と否定的になる必要はありません。悔しいと思った相手に対するマイナスの感情にとらわれるのではなく、「じゃあ、私はどうしたら彼女のようになれるのか」を考えてみることが大切。悔しさをバネに前に進めばいいわけです。
 さて、女性が社会的に「じぶんがおしゃれであること」を求めているのは、心理学的にも、脳科学的にも導き出される現象であることはお分かりいただけたと思います。そこで、この章ではおしゃれに見せるノウハウの基本として、色について解説していきたいと思います。色はじぶんに似合う色、じぶんの気持ちを高めてくれる色、パートナーとのコミュニケーションに役立つ色などについてくわしく説明します。色選びひとつでじぶんを若く見せたり、逆に老けてみせることもできるのです。流行は時代によって移り変わりがありますが、似合う色には不変的なセオリーがあります。これら2つのテーマについての知識さえあれば、「気に入って買ったけれどなんだか似合わない」「太って見えると言われた」「老けて見えると言われた」などの残念な服選びを避けることができるはずです。それどころか着痩せをして、美肌に見られる着こなしがカンタンにできる色と人との関係について解説していきます。

●色と脳は仲がいい

 最初に色について簡単に解説しておきます。太陽の光にプリズムを当てると虹のような色の帯を見ることができますね。小学校の理科の授業などで眼にしたことがある方も多いのでは。この色の帯をスペクトルと言い、それぞれの個々の色は波長と言います。このうちの特定の波長の色であれば人は見ることができ、それらの色は可視光線と呼ばれます(人の眼に見えるもの、見えないものをひっくるめたのが電磁波)。
 電磁波の単位はナノメートル(nm)と呼ばれ、可視光線はおよそ380~780ナノメートルの範囲内。たとえば、赤はおよそ620~750ナノメートルであり、波長の違いがそれぞれの色を違う色として脳が認識しているのです。それぞれの色の波長はおおむね以下の通り。

紫=380〜450nm/青=450〜495nm/緑=495〜570nm/
黄色=570〜590nm/オレンジ=590〜620nm/赤=620〜750nm
※資料によって数値は異なります。およその数値を表記しています。

 色の波長は目から視床下部〜下垂体〜松果体に伝わり、大脳の視覚野に到達するといわれています。脳科学では、色の波長によって自律機能を調整するホルモン分泌が行われたりすると考えられています。それぞれの色と関係するアドレナリンについて第5章の「美人になる裏ワザは色のトリック」のところをご参照ください。
 ここで参考までに色が人に影響を与えた具体的な事例として、海外での実験結果をご紹介しておきます。ある工場の休憩室の壁面がブルーに塗られていたときの事例。従業員は始終「寒い」と苦情を言っていたため、壁をオレンジに塗り替えたそうです。すると、以前より低い室温設定の場合でも従業員たちは「暑い」と言うようになったとか。ブルーという色の印象は「涼しげ」で、オレンジは「暖かい」が一般的。つまり視覚で得た色の特性に脳が同調し、体感温度まで変えてしまったということになるわけです。
 ちなみに、この実験結果の裏付けとして、なぜ人が「ブルーは寒い」「オレンジは温かい」と感じるのかを解説しておきます。武蔵野美術大学教授である千々岩英彰氏の著書「人はなぜ色に左右されるのか」(河出書房新社)によると、
 「温かい色・寒い色といった場合は、皮膚の温感感覚と関係があり、色の温度感覚も世界共通のものといっていい。先の調査結果を見ると、世界の国での暖色の一位はオレンジ色で、次いで赤、黄となり、暖色はこの三色でほとんど示されるといっても過言ではない」。
とあります。先の調査結果というのは、千々岩氏が通産省所管の特殊法人である「新エネルギー・産業技術総合開発機構」の委託を受け、1995年から1997年にかけて世界の主要20カ国(23地域)の美術デザイン系大学生5375名を対象に色彩の好みやイメージなどについての調査した結果に基づくデータだそう。
 その調査結果によると寒色については「青、水色、白が上位にきて、その次に濃い青で、銀色もある」とあります。
暖色・寒色と色の関係については「暖色のほうは常識的に考えれば、そうした色から太陽や炎を、一方、青系統や白の寒色は水や氷、雪といったものをイメージするからだろう」と千々岩氏は分析しています。千々岩氏の考察は前述の「工場の壁の色に対する工員の反応」を裏付けるものであり、色と人の感覚との間にはなんらかの関係があると考えることができます。人間の脳と体の機能はじつに複雑であり、神秘的でもあります。色から受けたイメージで体感温度まで変えてしまう不思議。いわゆる「イメージトレーニング」は、人間のこの能力を利用したノウハウになるわけです。イメージングの有効活用によるマインドトレーニングはこれからも掘り下げていきたいテーマのひとつです。

2015年8月5日水曜日

ファッションの3S+S

前述したビジネス用のワードローブ20着を有効に活用するために大切なキーワードは「3S」。それは「整理・整頓・清潔」です。まず、整理ですが、シーズンものでいま着ている服はできれば見えるスペースに並べておくのがベストです。ショップの陳列などを参考にするといいでしょう。20着ほどの服であればハンガーラックひとつに収納は可能。収納のコツは、コート・ジャケット・シャツ・ボトムスのようにアイテム(服の種類)ごとまとめて並べます。順番は、左からシャツなどの軽いトップスそしてスカート、パンツ、ジャケット、ドレス、そして一番右がコートです。それぞれのアイテムは、薄い色から濃い色の順に並べておくとコーディネートを決めるときに便利です。いま自分が持っているワードローブの色や形などが短時間で見渡せるのでコーディネートのイメージづくりがしやすくなります。また、タンスの隅で忘れ去られるアイテムが無くなり、コーディネートの幅も広がります。
 セーターやカットソーなどのトップスをハンガーにかけずにたたんで収納する場合、丸首なのかVネックなのかがわかるように首元を見せてたたみます。こちらも薄い色から濃い色へとグラデーションで並べておく。手持ちのアイテムを毎日見ることで、新たに服を購入する際に似たようなデザイン・色のものを買う失敗も防げます。
 靴やバッグなど小物も見える収納が基本。靴はヒールの高さや形が分かるようにしましょう。最近は靴箱にイラストが印刷されているケースもあるので、その場合はイラストが見えるように箱で収納します。イラストが入っていない場合、文字で特徴を書くか写真を撮って貼付けておくなどの方法もあります。
 不要なアイテムをそのまま置いておかないよう、定期的にクローゼットを見直すことも大切です。衣替えの時期やセールで買物をする前の習慣にするといいでしょう。着なくなった服はもちろん、「いつか必要になるだろう」「いつか痩せたら着よう」など「いつか…」という冠がつく服は、基本的に不要品です。不要品できるだけ早く手放すようにしましょう。物を溜めこんでしまう人は「もったいない」「必要になるかもしれない」「もう手に入らないかもしれない」という心理から物を捨てることに苦痛や不安を感じてしまうのです。そして、溜まった物を捨てられないことや片付けられないことに関してもストレスを感じるという悪循環に陥りやすいのです。住まいがいわゆる「ゴミ屋敷」になるまで異常に物を溜めこみすぎる性癖については、近年一種の精神疾患として認定されるようになりました。これは強迫性疾患で「溜めこみ障害」と呼ばれます。「溜めこみ障害」の人は自覚がないため、治療が難しいとも言われています。「溜めこみ障害」に対処する方法は、物を捨てる不安に慣れることだそうです。はじめは物を捨てることにストレスを感じていてもやがて慣れていきます。物を捨てることに罪悪感を感じるのであれば、リサイクルやネットオークションで処分する、だれか人に譲ってもいいでしょう。物が多すぎない、すっきりとした開放的な住まいがストレスから解放してくれるはずです。
 次に「整頓」ですが前述のルールを守りつつ、ワードローブ20着の保守・点検をしましょう。保守は服が痛まないように保管すること。ジャケットなどは型くずれがしないようにボタンを締めてきちんとハンガーにかける。冬物のウールジャケットなどは着た後にブラシをかけておきましょう。はずれかかったボタンがないか、裾の折り返しのラインがきちんとしているかなどの確認は脱いだときに。着る前は時間がないことが多いので。
 靴も帰宅後、靴用のブラシを掛け、クリーナーで汚れを拭き取ります。そして、履く前にツヤ出しクリームなど栄養のあるクリームをサッと塗っておきます。栄養クリームを塗った靴はすぐに靴箱に片付けるとカビが生えることがあります。必ず、よく乾かすか収納時はクリーなだけにして履く前に塗るかをお勧めします。皮革製品の雨染みや色褪せはクリーニング店や専門店で修理できる場合もあります。雨染み・汚れ対策に購入後、防水スプレーで保護しておくのも有効な方法でしょう。
 「清潔」は、身だしなみの基本です。最近はほとんどの洋服が自宅で洗濯できるので、お手入れも簡単です。洗濯ができないウールのコートやジャケットのほか、着るたびに洗濯をしない大物の場合、着た後はすぐに他の物と一緒に収納しないことです。汗や湿気、ニオイなどが他の服に移ってしまうので、しばらくは通気のいい場所にかけておきましょう。
 衣替えをするとき、クリーニングに出した服の保管ですが、クリーニング店から戻ってきた服をそのまましまうのではなく、必ず袋を取って中身を確認する。変な折りシワがついていないか、汚れがキチンと落とせているかなどを確認します。早期に発見するとクリーニングをやり直してももらえます。気づくのが半年後になるとリカバリーできないこともあります。
 最後のプラスαの「S」は「サスティナブル(sustainable)」です。意味は「持続可能であるさま」、地球環境にやさしい社会発展を目指そうという理念を指すワードです。1987年の「環境と開発に関する世界委員会」の報告書で「持続可能な開発(サスティナブル・デベロップメント)とは、次世代の人々のニーズを損なうことなく、現在のニーズを満たすこと」という文言が使われたことにより、環境に関する用語として広まったそうです。「エコロジー」にはじまり、「ロハス」「オーガニック」など近年、自然との調和・共生というテーマが社会に広く浸透しています。そして、ファッションの世界でも「サスティナブル・ファッション」が市民権を得はじめているのです。「サスティナブル・ファッション」には次のようなポリシーがあります。
・素材の染料は環境や生産労働者の健康を損なっていない。
・動物を殺した素材ではない。
・生産工場の労働者への賃金は適切である。また、工場で幼い子どもたちや移民を劣悪な条件で働かせていない。
・地元のものを使って生産されている。
・製品回収システムなどのリサイクル意識がある。
 海外ではキャサリン・ハムネットやステラ・マッカートニー、ブルーノ・ピータースらがサスティナブル・ファッションを発信しています。ファストファッションのH&Mから、ハイブランドのルイ・ヴィトン、ボッテガ・ヴェネタ、クロエ、ブルガリなど錚々たるブランドもサスティナブルへの取り組みをはじめています。

 サスティナブルな考え方が広まった背景には、近年の気候変動や自然災害の多発、生態系の変化など地球規模でのさまざまな問題があると言われています。水や石油、動物や植物などは有限であると気づいた人々が利便性を追求した現代社会を見直し、再生利用の方向へのシフトチェンジを訴え始めています。そこに新たなビジネスチャンスを見いだした企業もサスティナブル・ディベロップメントに取り組みだしているのです。先人から「もったいない」精神を受け継ぐ私たち日本人は、自然にサスティナブル・ライフへと移行していけるのではないでしょうか。サスティナブルの実践として、この章の「ワードローブ20着」への取り組みを始めてみてください。