2015年7月29日水曜日

「胸育」は女性のたしなみ

おとなの仲間入りを実感するステップのひとつが、ブラジャーを付け始めることです。体格によってブラジャーデビューの年齢はさまざまですが、小学校高学年ごろが一般的。ある研究によると「必要な時期にブラジャーをつけていないと胸(乳頭)が擦れて、痛みや不快感から授業への集中力が低下し、自由に運動する妨げになります。また、胸が目立つことを気にするあまり、姿勢を丸めてしまう子どもがいる」(ワコール「ママのための初ブラ講座」より抜粋)そうです。大手下着メーカーのワコールによると、バストが成長をはじめるのは初経の1年以上前で、初経の前後1年間でバスト全体がふくらみ、バストの下側のラインも横に広がるとか。初経の1年前のバストがふくらみ始めるころからのブラの装着を推奨しているワコールでは、ジュニア用のブラジャーを3タイプ開発。時期に合わせたブラジャー選びの大切さを唱えています。
 最近、マスメディアやブラジャーのカタログなどで目にすることが増えてきたワードに「育乳」があります。意味は文字の通り、「バストを育てること」。美しいバストづくりのための下着や、女性ホルモンの分泌促進のためのサプリメントが注目されています。昼間は「寄せ、上げて形を整える」ブラジャーをつけ、夜はバストの肉が横に流れないような「ナイトブラ」をつけるのが現代の女性の常識になりつつあるようです。
 日本の下着の特徴は、高い機能性。下着選びをきちんとすれば望んだ通りのバストラインが手に入ると言っても過言ではないでしょう。そんなメイド・イン・ジャパンの下着は欧米の女性からすれば、異文化の象徴のようです。もともと欧米では、下着によってバストや体のラインを補正するという考え方はありません。下着は、服を脱いだときのじぶんを美しく見せるためのもの、というのが欧米の概念。フランス製のランジェリーは繊細なレースを使っているのが特徴で、ワイヤー入りなど機能的なものは多くありません。
 ブラジャーの原型なるものが生まれたのはアメリカと言われていますが、アメリカ人女性もブラジャーに対するこだわりはあまりないようです。ここ一番!というシチューションでは谷間を作るブラなどが付けられているようですが、ふだん着のときにはノーブラという人も少なくないという印象です。ただし、アメリカのドラマや映画に出てくる女性たちは機能的なブラジャーらしきものを身につけている場合が多いので、職種や地位・立場などによって下着に対する考え方は変わってくるのかもしれません。そして、ここ数年、日本製の機能的なブラジャーはアメリカだけでなく、広く海外で人気を博しているので、海外の女性たちの考え方も変わってきているのです。
 さて、育乳に話しを戻してもう少し掘り下げてみましょう。ワコールのジュニアブラはノンワイヤーのスポーツブラから始まり、ジュニア用のワイヤー入りブラへ移行していくステップを紹介しています。ジュニア用のワイヤーブラはバスト周辺のリンパ腺を刺激しすぎないよう、大人向けよりもワイヤーの幅が広く調整されています。胸のスムーズな発育を妨げないようにと考えられています。
 ジュニアだけでなく、年齢に合わせたブラジャーの選択はアンチエイジングの面から考えても大切です。バストは加齢によって下垂していきます。筋肉がないバストは乳腺や脂肪とそれを支える結合組織・クーパーじん帯などで構成されています。加齢が進むにつれて乳腺より脂肪の割合が大きくなり、バスト全体が柔らかくなっていきます。また、バストを支えるクーパーじん帯や皮膚そのもののハリ・弾力が衰えることもあり、バストが重力に従って下垂していくのです。下垂はバストだけではなく、ヒップやウエストまわりの脂肪にも起こります。体の変化に合わせつつ、きれいなボディラインをキープしていくうえでエイジングケアのための下着は重要です。ちなみにワコール「人間科学研究所」によると、「加齢によるバストのかたちの変化」には次の3つのことが言えるそうです。
①加齢で変化していく順序は全員同じ。
②20代から下垂は始まっている。
③いったん変化したら元には戻らない。
美しいバストをキープするためには、肌や髪のケアと同じくらいの労力が必要です。
 日本石鹸洗剤工業協会が「朝シャン」について調査したデータがあります。「毎日、朝に髪を洗う」と答えた20代女性は26%だったのに対し、20代男性は32%でした(調査対象:20代の有職男性・20代の有職女性、各100名。2001年調べ)。オリコンが行った自社のモニターによるアンケート結果では、「朝・夜2回入浴する」と答えた男性が12.8%だったそうです(調査対象:中・高校生〜40代男性500人、2007年調べ)。同じ調査で女性は6.0%だったことを考えると、最近の男性がいかに身だしなみに気をつけているかがうかがえます。入浴の際に下着をはきかえることが一般的だとすれば1日2回下着を変えている男性は意外に多そうです。
 私の持論としても、下着は1日2回着替えることを推奨します。たとえ、朝シャンしなくともナイトウエアから着替えるときには、日中のファッションに合った下着をセレクトするべきです。「透けて見えない色であるか」「下着のラインが見えていないかどうか」は基本。胸元のVゾーンが深い場合はそれに配慮したブラジャーを選ぶ。フィットネスジムに行く予定がある場合は、リンパ腺に影響がないノンワイヤーのブラやスポーツブラがお勧めです。
 服に合わせてブラジャーを選ぶ女性は多いのですがノーチェックなのがパンティやショーツ。とくに後ろ姿をおざなりにしている女性が少なくないと感じます。ところが、胸元のラインよりも他人から視されやすいのが、ヒップライン。人は対面したとき、視線の行方が相手から悟られやすいため、胸元を凝視することを避けがちです。その点、ヒップラインは見つめても相手からは悟られないため、視線が留まりやすくなります。くっきりとショーツラインが浮き出る着こなしをしていたら、相手に「身だしなみに気をつけない人だ」という印象を与えかねません。最近はビジネスシーンでパンツスーツを選ぶ女性が増えているので、ぜひ、ショーツラインのチェックは怠らないようにして欲しいものです。
 ビジネススーツで言えば、ジャケットとスカートのスーツを選択する際、足元に合わせるのは革靴になります。その際のストッキング選びも重要です。いまは素肌以上に肌を美しく見せるストッキングが豊富になりました。美しい足元は女性にとって強い武器になるので演出に工夫を凝らして損はありません。最近の若い女性はとてもメイクが上手になっているのですが、インナー選びはまだまだ発展途上のように見えます。下着もお化粧と同じです。きちんとしたインナーを身につけることは大人のたしなみなのです。
 夜、帰宅した際は、体を補正する機能性下着からリラックスできるタイプのものに変えるほうが身体にも、精神にもいいでしょう。最近では各メーカーが夜用の下着を開発・販売しているので入手も難しくありません。

2015年7月22日水曜日

クローゼットには10アイテム、20着あればいい!

昨今のブームが定着した感がある「断・捨・離」。
パソコンでも一発変換で出ますね。片づけられない人も社会現象のひとつとしてテレビなどでもよく取りあげられています。そもそも「断・捨・離」はヨガの「断行(だんぎょう)・捨行(しゃぎょう)・離行(りぎょう)」という3つの行法を応用した考え方です。それぞれに「断=入ってくる不要な物事や欲望、習慣を断つ」「捨=不要な物(地位)を捨てる」「離=物事への執着・こだわりから離れる」という意味があるようです。
 余談ですが、イギリスの生活評論家であるカレン・キングストン氏は独自の調査から「太り過ぎの人は物を捨てられないタイプの人が多い」という結果を発表したという記事を目にしました。氏いわく「物であふれた生活をしていると、じぶんの体内にも不要な脂肪を溜めこみがちになる」そうです。物をたくさん所有している人は、それだけいろいろな執着心にとらわれていることが多い。物だけでなく食に対する執着心も強くなりがちということでしょう。
 さて、ここでじぶんのクローゼットの中身を思い出していただきたい。いったい、何着の服がありますか? たとえ大量の服が詰め込まれていても枚数を答えられるのであればいいです。何着か分からない・考えても答えられないという人は要注意です。おそらく、不要な服を捨てずにクローゼットに詰めこんだままにしているはずです。心理学で「拡張自我」という言葉があります。「人が持っている物、身につけている服、地位すべてがじぶんであるという概念」のこと。女性がブランド物のバッグやアクセサリーを身につけたり、男性が高級車に乗ったり、ハイブランドの時計を身につけて「ワンランク上のじぶんになった」とじぶんに自信が持てるようになるのは、「拡張自我」のなせる技というわけです。ナポレオンの名言「人はまとった制服のしもべとなる」です。
 大量の服が詰めこまれたクローゼットの何が問題かと言うと、そこにある服の多くが持ち主にとって大きな価値を持っていないはずだから。「安かったから」「流行だったから」「なんとなく捨てられないから」などの理由でとりあえず置いてある服ばかりではないでしょうか。思い入れのない服はそれを着た人間に自信や魅力を与える可能性も低くなります。着てもマイナスにしかならない服にクローゼットを占拠させていてもいいことは何もありません。物が多いと思考が散漫になりがちで注意力が低下する、片づけられない自分を責めてしまう、片づけるときのことを想像しただけでストレスになる……など、精神衛生的にもマイナス面のほうが多いのです。

 そこでクローゼットの中身をよく吟味して量から質へ、こだわりをシフトしてみます。次に私が推奨する「オフィシャルシーンでの20着」の一例を上げています。基本はジャケット+スカートもしくはパンツスタイル。さまざまなシーンで対応できるカーディガンやワンピース(ドレス)などもプラスしています。

2015年7月15日水曜日

ドレスコードでおとなの仲間入

前述の尾崎商事が行った調査で、中高生の制服の着崩しを大人たち(全国の20才以上の男女846人を対象)はどう感じているのかを同じく2010年にインターネットで調査したところ、「かっこ悪い」「どちらかというとかっこ悪い」の合計が20代は85.2%、30代は89.5%、40代は89.5%でした。集団の内と外とでは、ひとつの服装に関する価値観が真逆になることもあるわけです。この事実をしっかりと子どもたちに伝えておかないと社会に出たときのデメリットポイントになってしまいます。

 衣服にはさまざまな種類があり、生活行動によって着るものが変化します。行動と衣料の関係を図にすると次のようになります。

ある場所に参加する場合に定められた服装をすることを「ドレスコード」と言います。結婚式をはじめとする冠婚葬祭などのフォーマルな場面や格式あるホテルのレストランやメインバー、豪華客のクルーズ旅行、会社や組織などの公式行事などで使われます。ひとくちにドレスコードといっても種類があります。たとえば、豪華客船などでは、その日のディナーのためのドレスコードの指定があり、船内新聞などで告知されるそうです。カクテルドレスを着た人の隣にカジュアルなワンピースを着た人が座るということもないわけですね。ちなみに、最低限のマナーとして知っておきたいことして、デニム(ジーパン)はドレスコードがあるようなオフィシャルな場では着用できません。デニムとはもともとワークスタイル、つまり作業着。いまはハイブランドもおしゃれなデニムファッションを発信していますが、あくまで遊び着として認識しておきましょう。結婚式などは「平服でお越しください」と招待状にあってもデニムは論外。プレゼンテーションや商談の場面でもデニムは良くありません。
 「平服でお越しください」という文言についてもう少し解説すると、平服とは略礼装を指すのが一般的。女性であれば昼の席の場合、おしゃれなワンピースやスーツ、セットアップ。夜の席であればサテン生地など華やかな素材のワンピースやスーツということです。足元はパンストにヒールのあるパンプスが基本。平服=普段着ではないことだけは忘れないでください。
 冠婚葬祭のなかでも、とりわけ気をつけたいのがお通夜のドレスコード。お通夜とは訃報を聞いた近親者が取り急ぎかけつける儀式なので、学校や仕事の帰りの服装でもいいと考えがちですが、マナーとしては基本、黒の着用が望ましい。黒以外としても濃いグレーや濃紺までが許容範囲でしょう。そして、付け加えたい要素が「上質な素材の服」であること。また、葬祭用の黒は、ふだん着用する黒よりも深みのある黒となります。学生さんの持っているリクルートスーツと喪服を比べてみると色の違う場合があります。リクルートスーツには黒が少し浅いものがあります。葬祭用のフォーマルウエアはあまり流行に左右されず長く使えるのでじぶんへの投資として1着用意しておくといいでしょう。

[一般的なドレスコード]女性編
■正装・フォーマル
昼はアフタヌーンドレス、夜はイブニングドレス
■準礼装・セミフォーマル
ロングドレス、カクテルドレス、ワンピーススーツ、スカートスーツ
■略礼装・インフォーマル
ワンピース、ツーピース、スカートスーツ


2015年7月8日水曜日

第6章 着る勉強をしてきましたか。

「三つ子の魂」が成長のカギ

 私たちの被服に対する意識の芽生えは、いつからなのでしょうか。それは、脳の発育と関係しているように思えます。一般的に、人間の脳の60〜70%は3才ごろには完成していると言われます。そして9才ごろに脳の発育はほぼ終了します。つまり、3才児ともなると、おとなが思っているより遥かにいろいろなことを考える能力が備わっているということです。2才〜3才時の子どもの通過儀礼と言えば、いわゆる「イヤイヤ期」。心理学的には「第一次反抗期」とも呼ぶ「自我の芽生えの現れ」も、脳の発達のなせる技です。自我が芽生えることによって自己主張をはじめる訳です。ドイツの心理学者であるH・ヘッツアーによる調査があります。幼児期にはっきりした反抗期を示した子どもの多くは青年になったとき意志の強さが正常に機能し、一方、反抗期が明確になかった子どもの多くはその後も大人に依存しがちという傾向が見られたとヘッツアーは報告しています。
 イヤイヤ期の子どもにありがちな行動のひとつに「親が選んだ服を着てくれない」があります。親から見ると「天候に合っていない」「トップスとボトムスの組合せが変」など、一見、不都合な服を選び、頑として他の服を着ないというものです。ファッション・コミュニケーションの視点からすると、これはおしゃれに対するアイデンティティーを育てるうえで、とても重要なプロセスになり得る現象です。じぶんが選んだ服を着たときの高揚感や達成感、幼稚園などでの他者からの嘲笑などのさまざまな経験を得ることで服に対する価値観も育てられるのです。
 多くの人が「イヤイヤ期」でおしゃれの勉強をスタートさせるとしたら、その後はどういう経過を辿っていくのかとういことです。
 成長していくうえで、それぞれの年代を象徴するファッションというものがあります。多くの幼稚園では制服があり、小学校でも制服着用が義務づけられる場合があります。制服がない小学生にはランドセルというマストアイテムが存在します。そして、中学・高校と進学していくのですが、このときもほとんどの学生が制服を着用することになります。じぶんは集団の中のひとりだという自覚が芽生えるのは、何より、この制服の着用が大きな役割を担っているのです。
 「ペルソナ」という心理学用語があります。「ペルソナ=仮面」で、カンタンに言うと「外面(そとづら)」のことです。人々は、家族に見せる自由奔放なじぶんをそのまま学校のクラスメイトや先生、会社であれば同僚や上司に見せることはほとんどありません。学生らしく、または社会人らしく振る舞っているはずです。心理学者・ユングによると、人がペルソナを被る理由には大きく2つの意味があるそうです。ひとつは素のじぶんを守るため。もうひとつは社会生活における対人関係をスムーズにするため。そのときに属している社会や集団におけるじぶん自身の役割を明確にするためには制服というツールはかなり有効です。役割が明視化されるばかりでなく、着用した本人も制服というペルソナのおかげで与えられた役割が明瞭になるのです。
 思春期の自我の芽生えとしての「第二次反抗期」は小学校5年生ごろからとされています。この頃から、親やおとなのいうことに逆らうという子どもの行動が目立ち始めるのですが中学生になると制服を改ざんしたり、校則に反して髪を染めたりするという反社会的行動に出る子どもも現れます。これは子どもなりの、じぶんのアイデンティティーを模索している葛藤の証であるわけです。この時代の制服には、社会に適応していく感性を育成するだけでなく、人によっては自己を確立していくためのキーアイテムにもなりうるのです。
 また、いわゆるヤンキーファッションではなく、校則の枠のなかで制服に少し手を加えてじぶんなりに着こなすことに楽しさを見いだすことがファッションへの興味を育てる場合もあります。
 学生服の大手企業・尾崎商事が2010年に行った「制服の着崩し実態調査」があります。全国の制服のある学校に通う中高生400人を対象にインターネットで実施した調査によると、じぶん自身の制服の着崩しについて「いつも着崩している」「たまに着崩している」を合わせると高校生41.5%、中学生17.0%だったそうです。着崩しをする理由のトップは「着崩さないとダサイから」が高校生34.9%、中学生41.2%。2位は「着崩しをするとおしゃれに見えるから」で高校生30.1%、中学生29.4%でした。子どもたちにとって「おしゃれであること」は自己のアイデンティティーにとって大きな意味を持っていることがうかがえます。

 また、「着崩さないと真面目に思われるから」が高校生6.0%、中学生17.6%、「自分だけ着崩さないと仲間外れにされそうだから」が高校生3.6%、中学生5.9%という結果も。一部の子どもたちとって、服装は集団生活において他者との距離感を計る重要なツールにもなっていることが分かります。「着崩さないと真面目に思われるから」という理由は、「真面目過ぎない、話しが分かるじぶん」というペルソナを被るために制服を着崩しているとも言えます。

2015年7月1日水曜日

美人になる裏ワザは色のトリック

かつてDCブランド全盛の時代、全身を黒でコーディネートとした、いわゆる「カラス族」ファッションが流行したことがありました。それ以前のニュートラと称されたお嬢様風ファッションと相反するテイストであったため、とても斬新だと話題に。「カラス族」ファッションがモード系として認知され、それ以来、ファッションの中で「黒」は、斬新・神秘的・おとなっぽいなどのイメージを確立したように思います。
 普通、色は光を反射するという特性を持っていますが、黒という色はすべての光を吸収してしまう特性を持っている。そのため、人は黒に対して独特の存在感があると感じてしまいがちです。ファッションの分野においてはスリムに見せてくれるという効果も期待できる一方で、黒には重い・硬いといったイメージも。
心理学的にアプローチすると、黒は何かを隠したいときに使う色。また、光を反射しない特性から肌の色を美しく見せない色であり、その結果、老けた印象を作ってしまうことにも。
 黒の利点としては、黒と合わせた他の色を引き立たせてくれるという作用があるため、ポイントとして使う方法が有効。黒の独特の存在感を利用して「私はほかと違う」という自己アピールしたいときにも期待した効果が得られやすい。反対に自信の無さや心の弱さを隠したいときに黒でコーディネートしてしまうとネガティブなオーラを発してしまい、隠したい要素を浮き上がらせてしまうので、要注意。
もし、あなたの職業が占い師であれば黒はぴったりでしょう。神秘的で影のような存在という印象を相談者に与えられるからです。例え、実年齢よりも老けて見えたとしても、経験豊富な印象となり言葉に説得力が生まれるかもしれない。もしも、あなたの仕事がチームワークを大切にする内容であったり、取引先の人とのコミュニケーションが大事な仕事であれば、黒がメインのコーディネートは避けることをおすすめします。「何か話しづらいな」「何を考えているのかわからない人だな」「何か悲しいことがあったのかな」などと誤ったイメージを相手に与えかねません。何より、黒はすべての光を吸収してしまうので明るいオーラが外に発せられることがなく、魅力をアピールしにくくなる。黒は使い方ひとつで毒にも薬にもなる、まさに魔力を秘めた色なのです。
 白は、太陽光線の7色の光をすべて合わせた色です。光の反射率はどの色よりも高い。花嫁の着るウエディングドレスは純白が多く、コックさんのユニフォームも白が一般的なことからもわかるように、白は清潔感や信頼感を感じさせる色なのです。
白は光の反射率の高さ故、顔の近くに置くと肌色を明るく見せ、シミやシワなども目立ちにくくしてくれるという利点があります。タレントなどが写真を撮るときに顔色を美しくするために光を反射させて顔に当てるレフ板を使いますが、それと同じような原理。「美肌に撮れる」がうたい文句のプリクラも四方を白い壁で囲み、光を乱反射させて肌色がキレイな写真が撮れるようにしてあります。
 一方で、白は膨張色でもあるのでコーディネートをする場合、全身に使うとスタイルが悪く見える可能性も。トップのみを白にすれば、レフ板効果で肌を美しく見せることができるでしょう。首もとに白いストールを巻くという方法も有効。ウエディングドレスの場合、最近人気のガーデンウエディングであればさらにメリットが。天気さえよければ、陽の光を反射して全身が光り輝き、花嫁を一層美しく見せてくれそうです。
  脳には「同調現象」という性質があるとされています。これは、外部から入ってきた周波数に脳波が近づこうとする現象のことだとか。たとえば「α波ミュージック」という音楽のジャンルがあります。α波は人がリラックスしているときの脳波の状態(7~13ヘルツ)のことであり、α波を出す音楽を人間に聞かせるとそれをキャッチした脳が脳波をα波に合わせようとするため、リラックス効果が期待できると言う
 α波ミュージックは音の話ですが、色にも波長があり、その波長が脳に影響を与えるとされています。まず、色について簡単に解説を。太陽の光にプリズムを当てると虹のような色の帯を見ることができますが、この色の帯をスペクトル=波長と言います。このうちの特定の波長の色は人が見ることができる「可視光線」と言います。人が識別できるのは380~780ナノメートルの範囲内。たとえば、赤は610~750ナノメートルであり、波長の違いを脳が認識し、いろいろな色に見えているのだとか。
 では色は人にどのような影響を与えるのか。海外で次のような実験結果が得られています。ある工場の休憩室の壁面は最初ブルーに塗られており、その時従業員は始終「寒い」と苦情を言っていたそうです。その後、壁をオレンジに塗り替えたところ、以前より低い室温設定のときでも従業員たちは「暑い」と言うようになったとか。つまり、ブルーという色の印象は「涼しげ」で、オレンジは「暖かい」となり、視覚で得た色の特性に脳が同調し、体感温度まで変えてしまったと考えられるわけです。
 一般的に、脳は見た色によって、さまざまなホルモンの分泌を促されると考えられています。詳しくは以下の通り。

<色の効果によって分泌が促進されるホルモンの種類>
●ブルー→セロトニン(リラックス)
●バイオレット→ノルアドレナリン(興奮)
●ピンク→エストロゲン(美肌づくり)
●レッド→アドレナリン(脳の活性化)
●オレンジ→インシュリン(血糖値を下げる)またはグレリン(食欲増進)
●イエロー→エンドルフィン(鎮静効果)
●グリーン→アセチルコリン(落ちつき、消化促進)

 これらはあくまでも一般的に言われている効果。個人的な体験から人によって色に対するイメージに違いがあるため、万人に当てはまるわけではありません。
 東洋医学において、近年「色彩治療・色彩療法」が取りいれられていると聞きます。人の身体にあるおよそ60億個の細胞にはそれぞれ波長があり、体調が悪くなったときはこれら細胞も通常と違う波長になるとか。その異常な波長と同じ波長の色を当てることで、波長は通常の数値に戻り、体調も回復するそうです。色のパワーは使い方によっては効果が無限大です。病気の治療とまではいかなくても、内面を強くする処方箋のひとつとして知っておくのもよさそうです。色については別の章でもまた、くわしく解説することとします。