2015年6月24日水曜日

おとな雑貨で美人モードに

ホテルマンは靴を見て客質を判断するという話しがあります。「一流の人には靴を手入れする専属のスタッフがいるはず。身なりが良くても靴の状態が悪ければ一流を装っている人間かもしれないので行動に注意」という考えからだとか。ビジネスシーンでは「きちんと手入れされた靴を履いている人は細かな配慮ができる」というイメージが定着しているようです。
 カンザス大学の心理教授オムリ・ギラス氏が、靴から所有者の情報が読み取れるかどうかについて行った実験があります。(参考資料 2014年8月「Journal of Research in  Personalityvol.46掲載 「Shoes as source of first impressions」)
208人の足元の写真を63人の生徒に見せた後、それぞれの写真の人物について「社会的地位」「性格」「外交的または内向的か」などを推測してもらったそうです。結果は、ほぼすべての写真の人物の特性を生徒たちは当てることができたとか。さらに、この実験結果を分析すると
  高価な靴を履く人は高所得者。
  派手でカラフルな靴を履く人は、外交的で優しい。
  実用的で機能性のある靴を履く人は親しみやすい。
  アンクルブーツやブーティーは積極的で攻撃的なタイプ。
  履くのに手間がかかる靴はおとなしい性格。
  ありきたりな靴の人は見た目にも特徴がなく、マイペースで人間関係が苦手。
などの傾向が見られたそうです。この結果からギラス氏は「靴は履いている人の情報を発信する非言語的なメッセージでもあるため、靴にもっと注意をはらうべき」と述べています。
 靴に限らず、身につける小物はすべて自分の分身と言っても過言ではありません。相対する人は、バッグや靴、アクセサリーなどにその人を感じています。シチュエーションに応じて小物でセルフプロデュースできれば、望んでいる結果を手に入れる近道になるはずです。
 たとえば、レザーアイテムは色とグレードを揃えることが基本。靴・バッグ・ベルトなどの色を統一すると洗練された印象になります。ビジネスシーンで個性をアピールしたい場合は、レザーアイテムにインパクトがある物を選ぶと効果的です。色については、後でくわしく解説します。
 リラックス感や親しみやすさを演出したい場合は、最近のトレンドである「エフォートレス」な着こなしもいいでしょう。「エフォートレス(effortless)」とは、女性誌「ELLE」が発信したトレンドで、正式には「エフォートレス・シック(effortless chic)」。意味は肩の力を抜いた大人のカジュアルファッション。イメージはフランスの女優シャルロット・ゲンズブールやソフィア・コッポラ監督のスタイルだとか。着こなしのポイントは「サイズが大きめの服でリラックス感をだす」「身体のラインを出さない」「ボタンを開けて肌を少しだけ見せる」など。ビジネスシーンでエフォートレス・スタイルは難しいかもしれません。たとえば、上下揃えたスーツではなく、ジャケット+スカートやパンツにし、ブラウスのボタンを多めに外す。またはジャケットは少し大きめの物を選び、袖をまくり上げる……などを取入れるといいかもしれません。

 もうひとつ、似て非なるトレンドワードに「ノームコア(normcore)があります。「ノーマル(normal)」と「ハードコア(hardcore)」を合わせた造語で、意味は「究極のふつう」。色味を抑え、色数も少なくしたモノトーンコーデでありつつ、こなれ感があるファッショスタイルのこと。ノームコア・スタイルの代表はアップル創業者の故スティーブ・ジョブス氏だとか。つまり、人目を気にするより自分らしくあれ、というのがテーマともいえます。ジョブズ氏のタートルネックはイッセイミヤケのオーダーメイド品で、ジョブズ氏のこだわりが詰まった唯一無二のタートルネックだそう。ノームコアならではのこなれ感とダサさとの一線を画すのは、本人のこだわり+アイテムの質の高さも重要。たとえば、シンプルなスーツを着ている女性の指を母親から譲り受けたアンティークな指輪が飾っていれば、育ちの良さや品格などを語ってくれます。

2015年6月17日水曜日

肌はこころ、内側の感性が美をつくる

女性が外出する際に必ず身につける下着はブラジャーとショーツ、人によってはガードル、ペティコートなどなど。現代女性はこれらの下着をいつから習慣的に身につけているのでしょう。第二次世界大戦まではまだ和装の女性が多かった日本。戦後、戦勝国であるアメリカ文化に席巻され、日本女性のふだん着も洋装へ。時を同じくして生まれたのが国産のブラパッドやブラジャーでした。もともと和装の着こなしは胸を抑えつけるのが基本。洋装の場合、バストラインを高くしてウエストを細くするシルエットが美しく見えるという点に着目してプラパッドを発明者した人物が、ワコール創業者と共に商品化をしたのが1949年のこと。この見込みは大当たりをし、ブラパッドは大ヒット。ブラパッドを装着しやすくするためにブラジャーも開発されました。このことからも女性は美しく服を着るために、いかに下着を重要に見ているかが分かります。
 ワコールが女性にとっての下着の意味について調べたデータがあります。(※2007年 首都圏ならびに近畿圏に居住する18歳から59歳の女性個人を対象にしたウエブ調査)「下着全般に関する考え方」で1位は「自分の好みに合わない下着をつけると気分がよくない」(79.8%)、2位が「下着とは、見えなくてもこだわるべきものだと思う」(72.3%)でした。
「お気に入りの下着を着用するときの気分や態度」という質問には「ココロが引き締まる」(77.7%)、「女らしい気分になれる」(77.5%)、「いつもより輝いて見える」(75.7%)、「気合いが入る」(75.1%)、「安心感にひたれる」(74.6%)、「いいことがありそうが」(74.0%)などが上位に。ワコールではこれらの調査結果から、女性は下着の効能として「気合力」「オンナ力(おんなりょく)」「癒し力」「開運力」を期待していると分析しています。たしかに女性にとって下着とは、たんに服を美しく着るための機能性アイテムではなく心理的に大きな影響力を持った、言えばメンタルトレーニングツールともいえるしょう。

「お気に入りの下着」を着用するときの気分/ワコール「ココロス」FILE.03より
グラフ−9 「お気に入りの下着」を着用するときの気分や態度

 下着とメンタルとの密接な関係を表す例としてあげられるのが、スポーツ関係者のゲン担ぎ。元楽天監督の野村克也氏は勝った試合の後、負けるまでラッキーカラーのパンツを履き替えなかったというエピソードがあります。女子サッカー・なでしこジャパンで活躍したFWの丸山選手は大事な試合のときに身につける勝負下着があると語ったと、2011年のスポーツ紙で報じられています。記事によると青いTバックとピンクのスポーツブラの組み合わせで、青は日本代表のチームカラーでピンクはなでしこジャパンのイメージカラーというこだわりが。そしてTバックは「気合を入れるため」だったそうです。
 第4章で触感について解説しましたが、日本人は肌でいろいろなことを感じ取る感性に昔から優れていたようです。「肌=こころ」という考え方も普通でした。医学博士である青木皐氏は著書「人体常在菌のはなし」(集英社文庫)で日本人と「肌」との関係性について次のように記述されています。「日本人には「肌」への独自の思い、独自の感覚があるようだ。その感覚は、次のようないい回しに見て取れる。「肌があわない」(気質・気立てが合わない)・「肌で感じる」(理論でなく、直接の経験で感じる)・「肌を許す」(気を許す。または、女が男にからだをまかせる)・「ひと肌脱ぐ」(ある事について力を尽す)・「職人肌・学者肌」(職人や学者に特有の気質)。…中略…「肌」は、「人体の表面」という枠を超えて、人の内面的なもの、人間関係における距離感を表わす大切な言葉として使われている。また、仕事や稽古事などで、「頭で考えるな。体で覚えろ。肌で感じろ」といういい方もされ、肌や身体の感覚が重視される考え方によく接する」。
 「皮膚は第三の脳」と皮膚科学研究の傳田光洋(でんだみつひろ)氏は著書「第三の脳〜皮膚から考える命、こころ、世界」(朝日出版社)で述べています。その根拠としてある実験が紹介されています。頭部を切り取った脊髄だけのカエルを宙にぶらさげ、背中の一部に酸の刺激を与えたとき、カエルは「かゆいなぁ」とばかりに後ろ足で刺激を与えられた部分を掻いたそうです。脳が無くても皮膚に与えられた不快な刺激が認識できたとか。それほど、皮膚は優れた感覚機能なのですね。肌には微弱な電流が流れていて、それは気分や感情によって変化すると言われます。また、「セロトニン」「ドーパミン」「アドレナリン」など脳内物質の受容体があるとも。「セロトニン」は幸せ感、「ドーパミン」はやる気、「アドレリン」は活動的にしてくれる物質で、いずれも人をポジティブにしてくれる物質。肌と人のメンタルの深い関係が少し理解いただけたと思います。
 肌とこころの密接な関係。日本人の感性は、昔からそれに気づいていました。このことからも大切な日の下着選びは、服選び以上に重要だということが理解していただけると思います。具体的な下着の選びかたと付け方については後でくわしく解説するとして、メンタルサポートのために私が提案したい点について、ひと言。それは「朝と晩でパンツを履き替えよう」ということです。まず、夜、入浴後に下着を替えるとは思いますが、夜用にはゴム部分が緩くて肌あたりが心地いい、リラックス効果が高いものに。素材は綿100%など天然素材をおすすめします。もちろん清潔であることが前提。「私は健康のために夜は下着はつけない」という考え方の人もいるでしょう。その場合は、清潔さを保つためにシーツや布団カバーなどは毎日洗濯してください。その手間を考えると下着を毎日替えるほうが手軽だと思います。そして、朝は洋服に合わせて下着をコーディネートして欲しいのです。洋服に響かない色や形であることはもちろん、その日のスケジュールに合わせてラッキーカラーを身につけるのもいいでしょう。デートの予定があればお気に入りのデザインの下着に。他人に見せる・見せないに関わらず、ハッピーな気持ちにしてくれるはずです。最近、アパレル企業では下着のことを「インティメート・ウエア」と表現することが多くなっていきました。「インティメート(intimate)」とは「親密な」「居心地のよい」「打ち解けた」という意味。下着とのいい関係を育むことで気持ちのコントロールができるとしたら、それはステップアップにもつながるはず。いま一度、下着を見直してみませんか。

2015年6月10日水曜日

美人の条件は目鼻立ちだけではありません

美人とは相対的なものであり、人の価値観や時代によって変化している、とても流動的な定義です。たとえば、平安時代の美人は「豊かな長い髪・色白の肌・ふくよかな体つき・しもぶくれ気味の輪郭・大顔・引目と呼ばれる細い眼」などが条件であったというのが通説。現代と共通するのは、「色白の肌」くらいでしょうか。当時は食べ物が豊かではなかったため、太っていることが豊かさの象徴でもあったと言われており「ふくよかな女性=お嬢様」が、美人の条件に加えられていたとか。
 戦国時代の代表的な美人のひとりに織田信長の妹であるお市の方がいます。お市の方の肖像画を見ると、長い黒髪に白い肌、細い眼などは平安時代と変わりありませんが、顔は細面で体型もふくよかではなくなっています。乱世の時代には凛として芯の強さを感じさせる女性が美しいとされていたように思えます。
 江戸時代の美人は「色白・きめ細かな肌・細面・ちょぼ口・涼しげな目元・筋が通った鼻・富士額」が条件だったようです。当時のアイドル的存在だったのが笠森お仙。「鍵屋」という茶店の看板娘で浮世絵師・鈴木春信のモデルになったことで人気となり、お仙グッズまで販売されるほどだったとか。鈴木春信の浮世絵を見ると、確かに色白・細面で鼻筋が通っており、涼しげな目元をしているお仙が描かれています。現代の基準からしても美人と言えそうです。井原西鶴の作品に「低い鼻を高くしてほしいと神社で無理な願いことをする」という記述があり、このころから高い鼻が美人の基準として定着したようです。
 明治時代になると「ぱっちりとした眼・顔は長め・高い鼻・色白」などが美人の条件として定着。西洋文化の影響を受け、洋装やパーマネントや断髪などのヘアスタイルも流行したことにより、西洋的な顔立ちを美人と感じるようになっていったのでしょうか。日本初とされる美人コンテストからもそのことがうかがえます。1908年に新聞社が「日本美人写真募集」というキャンペーンを開催し、記録に残るものではこれが全国規模で開催された初めての美人コンテストだそう。優勝したのは末弘ヒロ子さんという16才の女学生。このコンテストはアメリカの新聞「シカゴ・トリビューン紙」が企画した「ミスワールドコンテスト」に参加するためのもので、アメリカやイギリスなど日本を含む6カ国の代表から世界一の美女を決めることになっていたとか。末弘さんの写真は「シカゴ・トリビューン紙」に掲載されたそうですが、何位になったのかは残念ながら不明。ただ、おそらくは世界の美人と並んで見劣りがしないはっきりとした顔立ちである末弘さんだからこそ、日本で一位に選ばれたのであろうと推察できます。このころの美人の定義が、ほぼ現代にまで継承されているのではないでしょうか。
 コニカミノルタの「魅力的な笑顔に表れる幾何学的特徴」によると、両眼角(眼の端)をつないだ直線とその両顔角から垂直に降ろした直線と口角(口の端)をつないだ直線によって構成される矩形(くけい)のアスペクト比が、黄金分割の比率(1:1.1618)の近似値になることが分かったそうです。ちなみに魅力のない無表情のアスペクト比の平均値は1:1.56だったとか。この黄金比は自然界ではもちろん、人間が作る建築物や肖像画などにも適応した数字で、レオナルド・ダ・ヴィンチの名画「モナリザ」にもこの黄金比を見ることができます。
 顎顔面外科学会のスティーブンR.マーコート博士が黄金比率を利用して考案したのが「美のマスク」。
往年の名女優オードリー・ヘップバーンの顔は、このマスクのバランスに近いそうです。
©MBA−RF Mask
「美のマスク」 ※上が女性、下が男性

心理学で、人は左右対称の顔を美しいと感じるとしています。左右対称の顔は健康であり、免疫的にも強いことを示していることになるからだとか。「物を噛むときは左右バランスよく使う」など、ちょっとした生活習慣で左右対称の顔に近づけることはできます。また、女性であればメイクでバランスを整えることも可能でしょう。そして、メイクで鏡を見るときに「私は美人だ」「私は日に日に美しくなっている」など、自己暗示にかけてみることも心理学的には効果があります。ただし、猜疑心を持ったまま実行してもあまり効果は望めません。ポジティブな気持ちで取り組むことが重要です。
 世の中には「雰囲気美人」という言葉があります。顔の造作は整っていないのに美人オーラが出せる人がいます。もし身近に雰囲気美人だと思える人がいれば、まずよく観察してみてください。おそらく、その女性は自分のスタイルやファッションセンス、ビジネスシーンでの有能さなど1点以上、自分で自信が持てる要素がある人だと思います。
 上質な服やハイブランドの服などは着る人を美しく演出してくれる「美人になれる服」が多いので、試してみるのもいいでしょう。ただし、身体に合ったサイズ感が大切なので、必ず試着をし、場合によってはお直しを利用するなどして美しいシルエットで着ることが大切です。
 上質の服でサイズも合っているはずなのに袖を通してみると、あまり美しく見えない……という場合、姿勢が悪くなっているかもしれません。パリコレなど一流のファッションショーのランウェイを歩くモデルが服を美しく見せられるのは、歩きかたであり、姿勢です。「私の姿勢は悪くない」と思っている人も多いと思いますが、次のようなヨガのポーズを試してみてください。
  膝を曲げて両足の内股を隙間なくつけたまま、足を伸ばす。その際、骨盤を起こすことを意識する。
  両肩を後ろに回してそのまま腕を下ろす。手は自然に身体に沿わせる。
  目線を少しあげ遠くを見る。
これは、ヨガで「山のポーズ」とも言われるポーズ。この3つの動作をしたときの姿勢が、本来あるべき姿勢なのです。おそらく、背筋や太ももにふだんと違う違和感を感じる人が多いのではないでしょうか。人は日常生活に受けるストレスによって自律神経やホルモンバランスに乱れが生じます。恐れや不安などを感じたとき、筋肉が緊張し、血圧が上がり、呼吸が浅くなり、胃腸の調子がおかしくなる……。これらの症状はだれもが経験したことがあるでしょう。また、毎日数時間パソコンに向かっている人が多い現代では、前傾姿勢になりがち。いろいろな日常の積み重ねが姿勢にゆがみを生じさせてしまうのです。姿勢の悪さが全身のリンパの流れを滞らせ、代謝が落ちることで痩せにくくなり、老化にもつながるとされます。正しい姿勢が美人を作るのは見た目だけではないわけです。前述の「山のポーズ」を毎日5〜10分続けるだけでも姿勢改善の効果が期待できます。
 美人の条件として加えたいのが、つやつやした美肌。リトルとハンコックが2002年に肌と好印象の関係についての実験をしています。実験では4枚の写真を用意。
A → ある男性のオリジナルの写真(何も加工されていない状態。あまり美形ではない。肌もきれいではない)
B → 複数の人間の写真を重ねて加工した「平均顔」の写真(※人の顔は平均化が進むほど美形に見えてくるというデータがあります)。肌はすべすべ。
C → 平均顔。肌はAのオリジナルのものであまりなめらかではない。
D → オリジナルの顔。肌はすべすべに加工。
これら4枚の魅力が高い順を調べた結果、一位はBで最下位はA。これは予想通りでしたが問題はCとD。顔の造りからすればCのほうが美形と感じるはずなのに、Dとの評価の差があまり見られなかったそうです。つまり、肌の美しさは顔の美しさに匹敵する魅力があると言える結果になったのです(出典:越智啓太著「美人の正体」実務教育出版)。「色の白いは七難隠す」と昔からある通り、美しい肌は人を魅きつけてくれそうです。


コラム/素肌美人と化粧品

 つやつや素肌美人を目指そうと化粧水や美容液、クリームなどをひたすら肌に使うなど、洗顔やピーリングで肌の角質を落とそうとするのは、ちょっと待ってください。つやのある肌になるためには過剰なお手入れは逆効果かもしれません。なぜか。その理由のひとつには肌の常在菌が大きく関わっていると医学博士の青木皐氏は著書「ここがおかしい菌の常識」(集英社文庫)で紹介しています。それによると人の肌は常在菌+体から出る皮脂の脂肪酸による二重のバリアによって守られているそうです。皮膚の表面は2、3日で生まれ変わっているので放っておいても汚れは垢とともに落ちていくそう。それをお湯でさっと洗い流せば終了のところを、現代女性はいろいろな洗顔料で洗い過ぎているため、バリアまで失ってしまい、結果肌荒れを招く場合があるのだとか。「洗いすぎを避けて、保湿性のあるクリームを少しすり込み、手や、足のかかとなどを尿素配合のようなクリームで保護しておけば、常在菌が減りすぎも増えすぎもしない、健康的で正常な肌になるはずだ」と青木氏は著書で語っています。お金も手間もかからない美容法と言えるので、試してみては。
 もうひとつ、健康的な肌のためには正常な新陳代謝が必要になります。健康的な内面があってこそ美肌が作られるのです。それには、食べものも重要なファクターになります。中医学の考え方からするとつや肌になるためには「赤・緑・白•黒」の食材を摂ることをおすすめします。潤いアップには白いもの、リフトアップには黄色い食べ物がいいとされます。肌のたるみは胃腸が弱っている証拠だとか。いくら肌のお手入れをしてもジャンクフードやインスタント食品ばかり口にしていては、美肌にはなれないはず。今日、食べたものが明日の肌を作るのです。身体の内側から見直せば、つやのある肌になるのはもちろん、元気に生き生きとした毎日が表情を明るくすることで人間的な魅力もアップするのではないでしょうか。

2015年6月3日水曜日

第5章 美人をあきらめていませんか

美人はほんとうに得か

 最近、メディアの呼称として人気なのが「美人すぎる○○○」。○○○には何らかの肩書きが入りますが、美人とはほど遠いイメージのアカデミックな分野との組合せになることが多いようです。「○○○を発見した研究者」であるとか「○○○という新説を発表した学者」などではなく、「美人すぎる」という冠のほうが人の目を引きつけるからでしょう。では、なぜ人は美人に注目してしまうのか。米・アリゾナ州立大学の心理学者であるヴァーン・ベッカー氏が美人に関するおもしろい実験を行ったと心理学者・内藤誼人氏が紹介しています49人に神経衰弱ゲームをしてもらう際、使ったカードはトランプではなく人の顔写真のカード。ランダムな顔写真の中で美しい女性のカードほど早く揃ったとか。つまり、美人のほうが記憶されやすかったと言えるわけです。
 心理学で使う「魅力バイアス」という言葉があります。美男美女など見た目が魅力的な人に対して、見た目以外の要素(性格・人間性・運動神経・仕事の有能さ……など)も優れていると思い込んでしまうという、認知に生じるある種の「ゆがみ」を差した言葉。美男美女は他人からの期待値が大きくなりがちだというのは、人間心理のよくあるパターンのひとつなのです。
 こんな実験事例もあります。カナダ・セントメリーズ大学の学生、約170人を対象に強盗犯に関する裁判資料を読んだうえで裁判官のつもりで有罪か無罪の判定させるというもの(参考「スクールソーシャルワーカーだより」2014年5月号より)。学生半数には穏やかな顔をした被疑者の写真、残り半数には目つきが悪い被疑者の写真を添えました。結果、穏やかな顔の被疑者を有罪と判定した学生の割合は約52%。悪そうな表情の被疑者を有罪にしたのは約77%だったそうです。裁判資料はすべて同じ内容だったということからも、写真から受ける印象に左右されたのであろうと想像できます。
 美人は初対面の相手に対して、苦労せずとも好印象を与え、人によっては、その後もずっと好印象をキープできます。これは心理学的に言うと「ハロー効果」の成せる技。「ハロー(Halo)」は「Hello」ではなく「太陽や月の光の輪」。「ハロー効果」とは物事や人物への理解において、ある顕著な特徴があったとき、それが全体の印象にまで意識せずとも影響を与えてしまう心の動き。これは、前述の「魅力バイアス」と合わせて考えれば分かりやすいと思います。つまり、ある人の特徴が「美人」だったとき、「美人=いい人」「美人=やさしい人」「美人=上品な人」などのプラスのイメージが作られやすくなる。「美人」と認定された人が、その後どんな行動をとろうともマイナスイメージにつながりにくくなるのです。「美人は得だ」と言われるのは心理学的に説明できるわけです。
 「美人=性格がいい人」と人が考える傾向は、実験でも明らかになっています。ミルズとアロンソンが1965年に「魅力的な人はそうでない人に比べて他人対して説得力があるか」を調べました。実験で一人の女性をメイクアップで美人にした状態、逆にメークダウンして魅力のない女性にして、人数が同数の2つのグループに片方は美人、もう片方には美人ではない状態を見せました。結果、メイクアップで美人になった場合は「やさしく」「好感が持て」「陽気で」「落ち着いていて」「チャーミングで」「ファッショナブルで」「きちんとしていて」などと認知されることが分かり、人を説得する影響力の高さも見られたそうです。(出典:越智啓太著「美人の正体」実務教育出版)
 人は脳のRAS(網様体賦活系)という神経組織の働きにより、受け取った情報を独自のフィルターにかけて自分が欲しいと思っている情報だけを脳に送っているそうです。たとえば、好きだと思っている異性の声を大勢の話し声の中から聞き分けたり、自分が欲しいバッグを持っている人だけが街でもやたら目についたりと言うことはありませんか。つまり、脳の機能からしても、「美人は内面も美しい!」という思い込みがある人には、美人の良い面しか見えないことも多々あるのです。逆に「美人に性格が良い人がいる訳がない!」という価値観を持った人には、美人のマイナス面しか見えないはずです。ひとりの人間にはさまざまな面があってしかるべき。その中からどの要素をチョイスするかは、相対する人の価値観しだい。Aさんにとっては「美人で性格もきれい」な人も、Bさんから見れば「美人なだけに横柄」な人になってしまう。そのどちらも真実であり、真実ではないのです。美人でいて人気がある人というのは、誰からも性格が良いと思われるような言動を取ることに最大限の努力をしている人かもしれません。

2015年春夏街頭着装調査報告レポート完成

2014年春夏街頭着装調査報告レポートとの比較

20代から60代まで7世代に分類し、
ファッションテイストを分析したレポートです。