2015年4月22日水曜日

キーワードは「共感力」

 共感力という言葉をご存知でしょうか? デジタル大辞泉・第三版(小学館)によると「他人の考え・行動などにまったくそのとおりだと感ずること。同感」「他人の体験する感情を自分のもののように感じとること」とあります。共感力とは、一般的に共感する能力のこと。つまり、相手の思いを的確に汲み取った上で行動できる力であり、共感力のある行動によって相手から「この人はよく分かっている」と信頼を得られるため、ビジネスシーンはもとより社会生活において重要なスキルだと注目されています。
 ファッションにおいても共感力は密接な関係にあります。たとえば、学校の新年度、新しいクラスメイトと顔を合わせたとき、「この人、いい感じだな」「この人と仲よくなれそう」と感じられる人がいたとします。そのとき、人は何を基準に判断しているのか。ほとんどが相手の外見のはずです。つまり「仲良くなれそう」だと感じた人間のファッションに共感しているのです。
 アメリカの有名なイメージ・コンサルタントであるジョン・T・モロイ氏は、教師の服装が教室の生徒の学習能力に影響を与えるかどうかについて調査した結果を著書で紹介しています。中高生たちは「カジュアルなファッションの先生が親しみやすく、好感がもてる」と口では言っていたものの、実際に授業中に熱心な態度をとったのはコンサバティブな服装の教師に対してだったそうです。おもな理由は「コンサバティブな教師は採点が厳しいだろうと思い、マジメに授業を受けた」でした(ジョン・T・モロイ著「ミリオネーゼのファッション・ルール」(ディスカバー・トゥエンティワン)参照)。この結果をふまえて、教師が「コンサバティブな服装をしたほうが生徒に与える影響力が強いだろう」という選択をしたら、共感力という戦術を利用することになるわけです。
 女性は意識せずとも、ふだんからファッションに共感力を利用しています。それは、有名ブランドのアイテムを身につけること。エルメスのケリーバッグしかり、シャネル・スーツしかり、ロレックスの時計しかり……。ひと目でハイ・ブランドだと分かるアイテムを身につけることで、「リッチである」「ファッションにこだわりがある」などのメッセージを発信しています。このようにファッションは、イメージ戦略としては言葉よりも有効と言えるのです。

 ただ、たんにハイ・プランドのアイテムを身につけるだけではメッセージは一方通行になってしまう場合も。相手によって「リッチなことを自慢しているの?」と受け取られる可能性もあるからです。共感力をファッション・コミュニケーションのツールにしたい場合は、相手の好みに沿ったコーディネートを心がける必要があります。相手が好きなブランドのアイテムを身につける。きれいにネイルが施された手をしていると思ったら、次回はじぶんもサロンでネイルをしていく。帽子好きな人であれば、帽子をかぶっていく。など、相手に「あれ? 同じものに興味があるのかな? 話しが合うかも」と思ってもらうことでじぶんに関心を持ってもらえれば、次のステップに行きやすくなります。好感を持ってもらえる会話術としては、相手のしぐさや話すスピード、声のトーンなどを鏡のようにマネする「ミラーリング」の実践も効果的。より、相手をリラックスさせることができるので「この人と話すのは楽しいな」という雰囲気づくりに役立ちます。

2015年4月15日水曜日

五感を駆使したコミュニケーションとは


 前段では第六感について考察しましたが、ここからは人間の基本的な感覚である五感について考えてみます。五感とは「視覚・聴覚・嗅覚・触覚・味覚」の感覚器官とするのが一般的。これら5つの感覚は外界からの情報を体の機能から直接受けるための、いわばアンテナであったり、チューナーなどの受動装置。これだけでは、目に見える風景や聞こえてくる音は、ヒトにとってあまり意味は持ちません。たとえば、だれもが美しいと感じる光景であっても、「美しい」という意味がプラスされるのは「知覚」があってこそ、なのです。外部から取入れた情報に、経験や知識をもって情報処理をして「美しい」「なつかしい」「危険だ」などとヒトが感じることを「感覚知覚心理学」と言います。つまり、「感覚」と「知覚」があってこそ、物事には意味が生じるわけです。また、知覚は主観にも左右されるため状況によって、同じ外界刺激を受けたとしてもそのつど、多少の違いが生じるのです。
 
 たとえば、次の図Aを見たとき、2つの図形の中心にある横線が同じ長さに見えるヒトはいないはずです。有名な「錯覚」の図式ですね。これは左右の線画の影響を受けて線の長さに長短を感じてしまうのですが、そこには知覚の働きがあるわけです。







(図A)ミュラー・リヤーの錯覚
 つまり、コミュニケーションにおいてビジュアルのみで相手に好印象を与えるのは、なかなか難しいと言わざるをえません。何か、プラスαがあったほうがいいわけです。
 マーケティング戦略に「ブランディング」というものがあります。すごく簡潔に言うならば、ブランド力を高めるための広報活動や製品開発なども含めた企業活動のこと。たとえば、ファッショニスタと呼ばれる有名タレントが愛用するブランドであれば、「おしゃれなブランド」と認知され、売り上げにもつながります。よく、高速道路のサービスエリアでご当地グルメを実演販売しているのも、ブランディングのひとつ。おいしそうなニオイや音でアピールをし、購買意欲をそそるという手法です。これらブランディングは、ヒトの感覚知覚心理学の実社会における実践・応用編と言えるでしょう。これは、コミュニケーションで相手に与える印象操作に役に立ちそうではありませんか?
 
 人間の五感と記憶の密接な関係についてもう少しくわしく見てみましょう。まず、視覚ですが、これは目で見たヒトや情景がそのまま映像として記憶され、似たような状況に遭遇した際「前にもこんなことが……」とフラッシュバックされることがあります。コミュニケーションに応用するとすれば、じぶんの印象を残したい場合、いつも同じ(ような)服装でいる・髪型(カラーも含めて)を変えない・同じ高さの靴を履く(身長に変化が出ないように)……など、覚えてもらうまでは外見のパターンを変えないことです。
 聴覚はとても優れた人間の器官です。心理学に「カクテルパーティー効果」という現象があります。大勢の人間がいるパーティ会場などで、離れた場所にいる違うグループのヒトがじぶんに関係がある単語を発していることを聞き分けられる現象のこと。これは人間だから可能なのであってコンピューターでは難しい作業なのだそう。コンピューターの音声認識ソフトなどは静かな場所でないと情報処理ができないのです。人間の脳は聴覚から入る情報処理がとても速く、一説には視覚情報の処理よりも速いと言われるほどです。昔、よく聴いた曲を久しぶりに聴くと当時の思い出がよみがえる……という経験はだれもが一度はしたことがあると思います。聴覚と記憶と脳の間で行われる情報処理は、個人差はあるかもしれませんがとても高次な機能と言えるでしょう。コミュニケーションにおいては聴覚に訴える方法も効果が期待できるわけです。たとえば話し声のトーンに気をつけたり、ふだんから和服着用が多い方であれば衣擦れの音で覚えてもらえる可能性も。そして、相手に不快な音をさせないことも重要。かかとがすり減ったヒールの音、携帯の着信音(ボリュームや選曲)などには注意しなければなりません。 
 
 さて、嗅覚ですが、五感の中でも特別な存在とされています。嗅覚がほかの感覚と違う点は「大脳辺縁系」と直接つながっているところ。ここには、感情や食欲などを司どる「海馬・扁桃体」があるため、匂いは本能や感情を直接呼び起こすのです。そのヒトにとって特別な香りを嗅がせたとき、香りに由来する思い出がフラッシュバックする現象を「プルースト効果」と言います。たとえば、香水の香りで、その香水を愛用していたかつての恋人を思い出す……。ケーキが焼ける甘い匂いで母親を思い出す……など。つまり、香りと共にインプットされた記憶は、香りが引き金となって甦らせることも可能なのです。いつも同じ香水を愛用しておくと他人に覚えてもらいやすくなりそうですね。仕事とプライベートで香りを使い分けると自分自身の気持ちの切り換えやモチベーションアップにも役立ちます。
 ヒトは触覚からも多くの情報を得ています。硬い・柔らかない・温かい・冷たい・なめらか・でこぼこしている……などなど。そして、日常生活においての触感には往々にして感情も伴っています。「柔らかい=心地いい」「硬い=痛い」など、その状況によって感情も変化します。相手に対して心地よさを伴う触感が与えられれば、その後の人間関係にも役立ちます。たとえば、握手をしたときのやわらかでなめらかな手、高品質で肌触りがよい服の感触などを活用することで相手に好印象を与えることができれば記憶にも残りやすくなります。次の対面において気持ちがいいコミュニケーションへとつながります。

 味覚は舌の「味蕾」という部分から得た情報が脳で処理されるのですが、嗅覚からの情報とセットになることが多いようです。ファッションにおいて味覚が登場する場面はあまり無いので、ここではふれません。ただ、「あの人、味があるね」と他人から言われるような個性を出すことができれば、視覚に訴えやすく記憶に残りそうですね。

2015年4月8日水曜日

第4章 「第五感」とプラスワンを駆使する

第4章 「第五感」とプラスワンを駆使する

●第六感でコミュニケーション

「第六感」とは、何でしょう。大辞泉によると「五感以外にあって五感を超えるものの意。理屈では説明のつかない、鋭く本質をつかむ心の働き。インスピレーション。勘。直感。霊感」などとあります。第六感の身近な例として挙げられるのが「虫の知らせ」。これは、あまりよくない事象が起こる前に体験する、いわゆる「胸騒ぎ」。何の脈絡もなく、ある人のことが気にかかっていたら、後日、その人に何かが起こったことを知る……というような体験談を聴いたり、実際にじぶんが体験したことがある人も少なくありません。この第六感の正体を突き詰めるべく、いろいろな研究がなされています。
 物理学者のクラウス・シュルテンは、1970年代に「鳥類は網膜で捉える磁気感覚に頼って移動する」という説を提唱。この磁気感覚は「クリプトクロム」という特殊なタンパク質の働きを利用して得られるそうで、人間の網膜にも備わっているとか。「クリプトクロム」が地球の磁場に影響を受けることで鳥類は磁場を視覚としてとらえていると指摘されているそうです。米・マサチューセッツ州医科大学の神経生物学者であるスティーブンレパート氏が、人の「クリプトクロム」をショウジョウバエの網膜に注入し、羽に巻いたコイルに電気を流して地球の磁場と類似する磁器を発生させたところ、地磁気を感知した行動を示すという実験結果に。この結果から、人間の「クリプトクロム」も地磁気に感応できると考えられるのです。地球の地磁気を感知する能力を第五感の他にある第六感とするなら、人間には第六感が備わっていることがこの実験から証明されるわけです。
 対して「第六感は存在せず、それは脳の働きとして説明できる」としたのがオーストラリア・メルボルン大学心理学科のハウ博士の研究です。ハウ博士は被験者に女性の写真を1.5秒見せた後、1秒ほど間を置き、再び同じ写真を見せるという実験を行いました。実験のなかで数回は髪型やアクセサリーなどに少し相違点を設けた写真を混ぜ、被験者が認識できるかどうかの反応を見たとか。結果、被験者が微妙に異なる写真のセットを見せられた場合、細かいポイントの指摘はできなくとも「何かが違った」と感覚的にはわかったそうです。人物写真以外で同様の実験を行った場合も、結果は同じだったとか。博士はこの結果から第六感とは「脳が情報を処理する充分な時間が与えられなかったために起こる勘違い」だと結論。五感によって知覚した情報ではあるものの、脳が具体的な処理結果が出せない場合、そのあやふやさから第六感だと感じてしまうというわけです。
  第六感に関して、違うアプローチをしてみます。いわゆる「女のカン」について。一般的に女性は男性よりカンが働くとされ、恋人や伴侶の嘘をカンタンに見破るのも女性の特技とされています。一説によると、これは脳の構造の違いがなせるワザであるとか。というのも、右脳と左脳をつなぐ「脳梁」という部分が、男性に比べて女性のほうが1.5倍も太く、細胞が密集しているため、右脳と左脳の情報交換が適切に行われるのも女性なのだそうです。それゆえ、男性の些細な変化を見逃さない。これが「女のカン」の裏付けになるわけです。
 第六感があるのか、無いのかについて、科学的にはいまだ答えは出ていません。ただし、心理学的に言えば、人には第六感はあります。つまり、ヒトは五感から得た情報だけで物事を判断している訳ではないということ。五感から取入れた情報にいままでの経験や知識、好みなどからなる個人独自のフィルターにかけて答えをはじき出しているはずです。これを意識下の潜在意識で、ほんの一瞬のうちに行っています。この個人独自のフィルターは感性と言い換えてもいいかもしれません。
 ここで「エピソード記憶」なるものについて、少しお話しします。エピソード記憶とは、個人の経験の記憶のこと。いわゆる「思い出」などのこと。たとえば、今朝は何時に起きたとか、どこに誰と行った……といったじぶんの過去の経験に関する記憶。エピソード記憶には経験そのものと、時間や当時のじぶんの心理状態の記憶も含まれます。1970年代に心理学者であるエンダル・タルヴィングが提唱しました。エピソード記憶は、その名のとおりエピソードの記憶であり、意識せずとも記憶に刻み込まれているものがほとんど。参考までに、試験勉強などで英単語や歴史など、暗記して覚えたものは「意味記憶」と呼ばれます。
 エピソード記憶は必要に応じて取り出すことが可能な記憶ですが、意識していなくてもその人の内面に存在しており、ときとしてそれが第六感の正体になるのではないでしょうか。家族や友人のちょっとした仕草や物の言い方と過去の体験を照らし合わせ、そのときの結果に基づき未来を予測する。その予測がズバリ的中したとき、人は「カンが働いた」と思うはずです。
 もうひとつ、直感なるものの仕組みを心理学的に「適応性無意識」と言います。心理学者ティモシー・D・ウイルソンは著書に「高度な思考の多くを無意識に譲り渡してこそ、心は効率よく働ける」と記しており、人は状況に応じて思考を意識・無意識のどちらか最適なほうを選択しているとも述べています(「自分を知り、自分を替える;適応的無意識の心理学」より参照)。つまり、ときと場合に応じては筋道を立ててじっくり考えるよりも瞬時の判断が功を奏することもあり、人はそれを本能的に選択していると考えられるのです。人類の歴史の中で、きびしい環境のなかで生き残るために脳や心も複雑に進化を遂げてきたのでしょう。
 私たちが日常のなかで第六感や直感だと感じる心の働きは、過去の経験から蓄積されたデータを脳や心が上手に利用して、そこから引出したものだとも言えます。第六感を磨くためには、いろいろな体験を積み重ねるために好奇心旺盛に生きていくことが、重要な鍵になりそうです。

コラム「第六感だけではない!? 第七感、第八感も存在する?」

 第七感・第八感は、あまり耳にしたことがない言葉で、大乗仏教用語。第七感は「末那識(まなしき)」といい、「諸感覚や意識を統括して、自己という意識を生み出す心のはたらき。自己意識。空(くう)の考えに反する謝った意識とされる。唯識思想の八識の第七」(三省堂「大辞林」参照)とあります。簡単に言うと、意識せずとも自然にわき起こる感情や感覚のこと、のようです。「末那識」があるがゆえ、人は心の葛藤を抱えたり、感情に流されるなどして悩み、苦しむというのが仏教の考え方。第八感は「阿頼耶識(あらやしき)」と呼ばれ、これは現世を超越した過去性も含めた深層意識の世界を表しているようです。第七感や第八感は、仏教を理解していないとなかなか難しい領域なので、ここではくわしくは取りあげませんが知識として知っておくのもいいですね。

2015年4月1日水曜日

アフター5にも戦術が必要

アフター5にも戦術が必要
 ビジネスシーンで目指すべきは、ハンサムウーマン。ですが、アフター5で異性と同席する食事会や合コンなどでは、フェミニンな印象づくりが大切。とはいえ、着替え一式を持参するのも大変。アフター5の予定がある日は、少し女性らしさを意識したコーディネートをしましょう。
 女性らしさを演出する基本は、柔らかなライン使い。出勤がスーツの場合、ジャケットを脱いでシャツ+スカートでもOKなコーディネートを意識するのも、ひとつの方法です。可能であれば、スカートはタイトなタイプではなくヘムにアクセントがあるデザイン性があるアイテムにしておいても、ジャケットと合わせるとビジネスシーンでもそれほど違和感はないはず。退社時にジャケットを脱ぎ、オーバーブラウスにしてチェーンタイプのルーズベルトをあしらうなど小ワザを効かすのもいいでしょう。また、エルメスタイプの華やかな大判スカーフを肩まわりにあしらうと、女性らしさがアップ。女性らしい明るい色やソフトな色を上半身に使うと、ぐっとフェミニンな印象になります。
 また、会社に私物用のロッカーなどがあれば、女性らしいヒールパンプスなどを置いておくのもいいかもしれません。ハイヒールであれば、なおのこと良し。男性は靴に興味がある人も多いので、意外と女性の足元もチェックしています。足をきれいにみせてくれるストッキングとハイヒールがあれば、かなり洗練された印象が作り出せます。
 ビジネスファションと同様、アフター5にも戦術は必要。会う相手にハマるペーシングができれば成功率もぐんと上がるはず。事前に相手の好みがリサーチできればいいのですが、難しい場合もあるでしょう。そんなときは、相手の役職や職種を考慮した服装プランを。そして、ビジネスシーンでは御法度だった「女らしさ」や「可愛らしさ」、少しの「セクシーさ」は、ここでは必要。コツは上手な肌見せテクです。デコルテライン、とくに鎖骨を見せるのもいいでしょう。もし、ホテルのレストランなど、少しあらたまった場所で会うなら、肩や腕を出してもOK。ただし、見せ過ぎは禁物です。肌を見せすぎると安っぽい色気になってしまうので、どこか1カ所ぐらいに留めて。デコルテを見せるなら、袖のある服を。腕を出すなら首もとが詰まったデザインの服を選ぶ……など。アフター5でも、嗜みは大切です。男性に「この人はどんな人なのだろう」と思わせる謎めいた部分があると、次のステップにつながりやすい。ほどよい距離感を保つことで男性の興味をかきたてられれば、あなたは優位な立場に立てるはず。アフター5での成功を勝ち取るためにも、戦術は忘れずに。