2015年2月28日土曜日

ビジネススタイルは、臨機応変に

ビジネススタイルは、臨機応変に
  では、仕事にふさわしい服装というのは、どんなものなのでしょうか。それは、会う人や仕事の目的によって毎日、変わります。「今日は集団のひとりとして初めての会社を訪問するので、あまり目立たないほうがいい」「今日はプレゼンでリーダーシップをとるので、少し目立ったほうがいい」など、具体的なシチュエーションに適応した服装であることが、大前提。そして、会う相手が目上かどうかによっても、服選びは変わります。初対面であれば、相手の情報はごくわずかな場合も多いので、まずは無難なスーツなどがいいでしょう。そして、次回の面談からは相手の立場やキャラクターに合わせていくことをおすすめします。これをコミュニケーション技法では「ペーシング」と言います。つまり、相手の「ペース」に合わせることで心地よさを創出し、好印象を与えるノウハウのひとつ。打合せの相手がマジメな方であれば、マジメな印象のジャケットスーツやブラウススーツなど。ウィットに富んだオシャレを好む方であれば、ちょっと個性的なワンポイントをあしらうのもいいでしょう。基本は、相手の立場に立った服選びをすることです。このとき、流行や自分の好みは一度、忘れてください。おしゃれな服装が必ずしも相手に好印象を与えるとは限らないのが、ビジネスシーンの鉄則。年配の方であれば、いわゆる「ダサいファッション」が好印象を与える場合もあるのです。ビジネスで成功する戦術を練るためには、ファッション雑誌を見るよりもふだんから周囲の人を観察する目を養うほうが重要です。たとえば、私は仕事柄、インナー事業の方ともよくお会いしますがブラジャーなどのファウンデーションのデザイナーの方などは、レーシーなファッションを好まれているような気がします。つまり、ビジネスシーンにおいて、その人の職業がファッションに反映されているケースもあるわけです。そのへんをよく観察してみてください。コミュニケーションのヒントがきっと、みつかります。
 2回目からの面談の際は、ある程度ペーシングをしながら、少し相手をリードできるようなコーディネートができれば、ベスト。「このコーディネートをちょっと盗んでみたいな」と相手に思わせることで、自分に対する関心も持ってもらえるからです。たとえば、先述のレーシーなファションを好む方と会う際はインポートのレーシーなストッキングを履いていくなどのポイント使いでペーシングをするのも、いいかもしれません。相手に合わせたファッションをすることで、「ふだんからあなたのファッションに注目していますよ」というメッセージの発信にもなります。

 もし、あなたが営業ウーマンで1日に複数の人と会う必要がある場合、基本のコーディネートはシンプルにして、小物を変えて変化をつけてみては。ヘアアクセサリーやネックレス、ピアスぐらいなら鞄に入れておいてもそれほど邪魔にはなりません。口紅の色を変えるだけでも、清楚なイメージから明るくハキハキとしたイメージへと印象を変えることも可能です。ファッションで変化をつけることが難しい場合は、ペンや名刺入れなどステーショナリーを活用できるかもしれません。ビジネスで成功を勝ち取るためです。ちょっとした努力を惜しまないようにしましょう。 

2015年2月18日水曜日

なんでもありのクールビズスタイルはおかしい

●「クールビズスタイル」≠リゾートスタイル

 最近のビジネスシーンで私が気になっているのが「クールビズ」。日本の夏の季語として定着している観がありますが、ちょっともの申したくなるケースがちらほら。公的な機関の窓口などで係員がショート丈のパンツにサンダル履きという姿で業務についている姿を見ると「何か違う」と思ってしまいます。節電やエコのためという背景はいいとしても、果たしてT...をクリアしているか否か。勤務規定には反していないかもしれませんがビジネスシーンにおいては社内の人間だけではなく、社外の人間とも同じ空間を共有することが多いもの。関係者以外の第3者に与える印象を考えないと、その企業や団体の悪い印象を演出しかねません。前述した「「相手の印象は最初の2~3秒で決まる」という人間の心理的作用を考えたとき、クールビズの実行は慎重になってしかめるべきだと思います。たとえば、仕事の行き帰りの電車の中、業務終了後のデパートの中、ほかの団体との会合などにおいては、非常識に見えてしまう危険性をはらんでいます。ファッション・コミュニケーションの視点からも、クールビズはあまり喜ばしい流れとはいえません。

 ただ、職場でクールビズ実施が決められた場合、ひとりビジネススーツを着ているわけにはいかなもの。その場合、最低限のマナーとしてトップスには襟があるものを着るようにしてほしいですね。仕事場はあくまでも公の場であり、「襟を正して」職務に臨みたい場所。カジュアルなポロシャツでも襟がないTシャツと比べると、はるかにキチンとした印象が出せます。また、ポロシャツであれば上にカジュアルなジャケットを羽織ってもそれほど違和感はありません。女性の場合、キャミソールやミニスカート、ミュールは避けるべきでしょう。職場に持ち込んだ場合、周囲に不快感を与えてしまうのが「セクシーさ」です。必要以上に素肌を露出したファッションは、仕事ができる女の演出には最も不向きなのです。男性の場合、ネクタイをしめてもおかしくないようなカジュアルなシャツの着用が好印象につながります。そして、膝から下の素肌が見えるような短パンもビジネスではNG。リゾート地でも洗練されたレストランなどでは短パンにサンダルは入店拒否が常識です。そして、行き帰り用のサマージャケットを携帯したり、靴は職場で履き替えるなどで対応することをお勧めします。忘れてはならないことは、クールビズはリゾートファッションではないということ。ビジネススタイルから何を抜くか、というスタンスでコーディネートを考えていただければいいと思います。

2015年2月12日木曜日

第3章成功するためのファッション

●ビジネススーツは、“鎧”
  戦国時代、武将にとって鎧はさまざま意味を持っていたようです。もちろん一番の目的は身を守ることですが、合戦で命を落とすこともあり、そのまま死装束にもなるということから、武将の威厳や風格を表すことが大事であり、また、本人のこだわりや美意識も反映されていたそうです。そして、時代が進むにつれ、鎧兜のデザインを利用して心理戦で有利に立てるようにと考えた武将もいたようです。たてえば、徳川四天王として名を成した井伊家に伝わる鎧はすべて赤色。関ヶ原の合戦の様子を描いた屏風絵を見ると、大将から雑兵にいたるまで全員が真っ赤に身を包み、「井伊の赤鬼」と恐れられ、圧倒的な強さを誇っていたそうです。攻撃的な赤を戦場という極限状態で使うことで、相手に威圧感を与えることに成功したのではないでしょうか。ビジネスシーンで身につける仕事服も、いわば「鎧」。手中に納めたいと思っている成果を得るための戦術のひとつになり得ます。その日の仕事の目的や対面する相手のことを考えたうえで服を選んでいますか?。
 アメリカ・テキサス大学オースティン高校で経済学を教えるダニエル・ハマーメッシュ教授が7550人のビジネスパーソンを対象にした、収入に関するリサーチがあります。その結果によると、男性であれ女性であれ、魅力的な容姿だと思われた人のグループは平均的な容姿と思われたグループより生涯賃金が平均25万ドル多かったそうです。また、教授いわく、「じゃあ、美人であれば収入がアップする!」と、美容整形に頼っても効果は期待できないようだとのことです。鼻を高くするよりも、その人本来の長所を伸ばすようにしたほうがいい結果が期待できるとか。つまり、顔の造作で判断されるのではなく、その人全体から醸し出される雰囲気に人は心を動かされるといえるでしょう。「美人じゃないから、どうしようもない!」と嘆く必要はないわけです。要は、服装を含めて、いかに自分を魅力的にセルフ・プロデュースできるかどうか。
 ところが、「ミリオネーゼのファッションルール」(ジョン・T・モロイ著)というアメリカの服装コンサルタントが書いた本によると、キャリアウーマンの約7割もの人が服装によってキャリアアップのチャンスを逃していることになるそうです。意外な感じがしませんか? 大統領選では、各候補者はもとより事務次官にもコンサルタントがつくほどファッション心理に長けた国というイメージがあるアメリカでも、思ったほど服装で成功している人は少ないのかもしれません。映画「プラダを着た悪魔」の中でも、最初はダサかった新米女性アシスタントは、先輩の女性社員からケンモホロロの扱いをされています。ファッションが洗練されていくにつれ、上司や先輩から、やっと相手にしてもらえるというストーリーも、いかにもアメリカのビジネス界といった感じです。そのシチューションを実生活に置き換えて自分のファッション選びを見直すとキャリアアップのヒントになりそうなのですが……。
 
コラム「ラポール(信頼)の構築」
 カウンセリングのとき、話し手と聴き手との間に必要となる信頼のことを「ラポール(Rapport)」と呼びます。ラポールとはフランス語で「橋をかける」という意味。人と人の間に信頼という名の橋がかかれば、それがコミュニケーションの出発点になるはず。では、この信頼関係はどうしたら築けるのでしょうか。まず相手をよく観察する。そして相手と自分の共通点を見つけることが早道になります。というのも、人は自分と似ている人には安心感を抱き、それが好感へとつながるからです。共通点が見つからない場合の有効な手段に「ミラーリング」があります。これは鏡のように相手の動作などを模写すること。座っている姿勢や身振り手振りなどをマネするという方法です。ひとつ注意してほしいことは、あまり大げさにマネしないこと。明らかにマネをしていることが相手に悟られてしまうと、「バカにされているのか?」と、逆効果になりかねません。あくまで、相手に「私もいま、あなたと同じ気持ち(状態)です」ということを伝えるためのノウハウなので、心地いい程度に、さりげなく、がコツ。そして、相手と同じような服装をすることもラポール構築につながります。ちなみに、会話術でのコツは相手に必ず「イエス」と言わせる質問をいくつか続けるという方法があります。イエスを続けて言っているうちに、「自分のことをよく分かっていてくれる」という気持ちを相手に抱かせることができるのです。ぜひ、一度、試してみてください。

2015年2月4日水曜日

対話する服

対話する服
 ここまでいかに服がじぶん自身を物語るか、について書いてきました。服に語らせるうえで忘れてはならないのは、相手にどんな自分の印象形成をしてもらいたいかをイメージしながら服をコーディネイトする、です。「今日、この場面ではどんな自分でありたいか」「相手にどう受け入れてもらいたいか」「相手からどんな反応を得たいのか」をちゃんと意識する。つまり、自分が目指すゴールをはっきりと視界に入れているかどうか。
 私が実際に体験したエピソードをひとつの例としてご紹介しましょう。行きつけのお店のクリスマスパーティーに参加したときのことです。おなじくなじみ客の女性Aさんを紹介され、一緒に楽しくお酒を飲みました。それからAさんと仲よくなったのですが、1年ほど経ったあるとき、「高田さんは第一印象と全然違う。初対面のときは破天荒な人だと思った」と告白されたのです。はじめて会ったとき、お酒が入っていたし、その場の雰囲気でお店のマスターとふざけて一緒に踊っていたこともありますが、何より彼女に強烈な印象を与えたのは私が着ていた黄色のパーカーだったというのです。「クリスマスパーティーに黄色のパーカー? ユニークな服選びをするから、変わった人なんじゃないかな」と思ったらしいのです。私としては、自宅から徒歩5分ほどのご近所にあるなじみのお店だったので、平服での参加であったし、黄色という明るい色でその場の楽しい雰囲気に合わせたつもりでした。Aさんとの価値観の違いもありますが、もし、その場でAさんから「どうして黄色のパーカーを着ているの?」と聞かれていれば説明したでしょうし、彼女の印象も違ったものになっていたはずです。でも、初対面のマナーとして、彼女はそんなストレートな質問はしませんでした。つまり、Aさんは私のファッションが語る私のキャラクターを「おかしな人」と解釈し、そのまま印象形成されてしまったのです。その後、一緒に過ごす機会が増え、私という人間をよく知るようになったとき、最初の印象とのギャップを埋めるのが大変だったと言われました。つまり、私は彼女が思った「おかしな人」の定義には当てはまらなかったのでしょう(笑)。つくづく、服が人に与える影響力のすごさには驚かされます。
 とにかく、服選びで大切なのはシーンに合っているかどうかです。解説してみましょう。ビジネスシーンでは服装は「記号」になります。所属であったり、職種であったり、地位や立場を表すツールです。まず、自分の職種や会社にふさわしい服装であるかどうかをよくチェックしてみてください。ビジネスを含む大切な面談では、必ず襟がある服にしましょう。「襟をただす」という言葉もあるように、襟がある服は謙虚な気持ちを代弁してくれるはずです。さらに、気が張る面談ではジャケットが鎧となってくれます。スーツでなくても襟付きのシャツとジャケットを着るだけで、改まり感が演出できます。
 デートの場合、その日のテーマが決まっていればシチューションや目的地に合った服を選びましょう。相手の好みがわかっていれば、それに合わせてみるのもひとつの方法です。「こちらに合わせてくれたんだな」と好感度がアップするはずです。

 婚活の場合は、目的によって少し服選びが変わります。どうしても、どんな相手でも結婚を前提にした交際相手と出会いたいのであれば、女性らしく、やさしく見えるようなパステルカラーのブラウススーツなどがいいでしょう。そして、あまり流行を取り入れすぎないことをおすすめします。自分自身が抱く具体的な結婚生活のイメージに合う相手と交際したい場合は、結婚後の生活のイメージに合ったファッションにしましょう。多くを語らずともファッションがあなたの希望を語ってくれるはずです。いずれのシーンでも、あなたの意図を正しく伝えてくれるコーディネートをすること。それが、あなたの夢が現実化する第一歩になるかもしれません。