2015年1月28日水曜日

失敗体験もじぶんの引き出しにしまっておく

 「じぶんの服装を第三者の立場から見るようにしよう!」と心がけているとはいえ、すぐにメタ認知能力をめるのはむずかしい。そんなときはドレスコードやTPOの知識が強いサポーターに。
 パーティーや結婚式の2次会の招待状などの文中にはよく「平服でお越しください」と書かれてます。実際、フタを開けてみれば会場に来ている人々の服装は、じつに様々。スーツやワンピースのなどの少しあらたまった服装の人もいれば、ポロシャツなどのカジュアルな服装の人もいます。「平服」の受けとりかたが人によって違うことがわかります。世に「ドレスコード」という言葉があります。「Dress Cord=服装規定」。「軍隊や学校などの集団やパーティなどの集会、高級レストランなどにおける服装の規則」(デジタル大辞泉より)とあります。本来は、その場所や会合の主催者が決め、それを来場者に通達する際に示すもの。たとえば、格式の高いレストランでは「ノーネクタイ、ノージャケットはお断り」などと表示したりしています。ドレスコードやTPOの条件をきちんと満たしていれば、ファッション・コミュニケーションでつまずくことはないはずです。
  とにかく、メタ能力を高めたいなら、恐れずにいろいろな経験をしましょう。たとえ失敗しても、次のステップのための知識として貯金しておけばムダにはなりません。いろいろな経験を記憶の引き出しにしまっておけばいいのです。そうすれば、多彩なシチュエーションへの応用力になります。
 じぶんの引き出しに入れたいものは、他にもあります。それは身近な第3者からのアドバイス。親しい人であれば、その場にそぐわない服装をしていればアドバイスをしてくれるはず。なかでも3パターンの賢人の言うことは注意をして聞いてみてください。
その3パターンの賢人とは
センスが競える人……女友達
ほんとうのことを言ってくれる人……母親
異性目線を教えてくれる人……男友達
  ワコールが2010年に実施した女性の意識調査で「自分の容姿について、どのような人の目を意識しますか?」という問い(複数回答)に対し、最も割合が高かったのが「同性の友人」で、7割近くにのぼりました。次いで4割以上が「自分自身(自己満足)」と答え、3番めが「夫」で3割以上の人が回答しました。(ワコール ココロス研究会『女性の下着と心理に関する意識調査』ココロス共同研究レポートvol.1 20073月より)
 女友達はじぶんが同性の目を意識しているぶん、友達の服装もよく観察しています。ただ、女性同士は、社交辞令的にお互いを褒めあうことも多いことは頭に入れておきましょう。気のおけない友人であれば歯に衣を着せぬ批評をしてくれるかもしれませんが、それも相手のキャラクターしだい。方法としては、会った瞬間の反応に注視してみてもいいかもしれません。「わー、ステキなジャケットね! どこのブランド?」「今日はいつもと雰囲気が違うね。いいじゃない!」など開口一番、好反応なら正直な感想といえるでしょう。ふつうのあいさつから、すぐに世間話に入った場合は服装にふれたくないのかもしれません。もし、お互いの服装について、とくに会話がなかったとしても大丈夫。相手の服装をよく観察するだけでもいいのです。そして自分の服装との違いをよくチェックして、今後の参考にしましょう。ただし、おしゃれな友人に限りますが(笑)。
 母親からは友人よりも辛辣なフレーズがどんどん出てきます。そんなとき「お母さんたら、ひと言多い!」と怒る前に母親の言葉のなかにあるヒントを探してみてください。それは、目上の女性からの意見かもしれないし、母親の経験値から出た感想かもしれない。いずれにしてもじぶんには無い目線なので、いっときの感情に流されずアドバイスとして受け止めてみましょう。
 異性の場合、夫や恋人の意見はかなり貴重。多くの場合「自分のパートナーがきれいに見えるように」「恥をかかないように」と考えて意見をしてくれるはずです。男友達の場合は彼のキャラクターにもよりますが「嫌われたくない」と思ってストレートな感想を言わないかもしれません。そんなときは、彼の態度を見て判断してもいいし、気のおけない仲であればじぶんから「今日の服装どう思う?」など、問いかけてみるのもひとつの方法です。女友達に褒められたことがある服装でも異性には受け入れられないなど、いろいろ勉強になることがあると思います。

2015年1月21日水曜日

ファッションで、じぶんをプレゼンする

  人は、他者の見ためにプラスして、風の噂などごく限られた情報を当てはめて相手のパーソナリティを決めてしまうことがあります。これを心理学的には「印象形成」と言います。そして、相手のパーソナリティを決めるときの基準となるのが「ステレオタイプ」と「暗黙の性格観(人格観)」です。
 「ステレオタイプ」とは、よく巷で言われるひな型を当てはめること。「スーツを着た人はちゃんとしている」「美人はモテる」「血液型がA型の人は几帳面」などなど。よくよく考えると根拠がない場合が多いのですが、ほんの数分前にあった人など、その人となりの情報が少ない場合はこういったひな型を当てはめてしまうのでしょうね。そして、ステレオタイプの定義は世間一般に広く浸透しているものが多いため安定していて、普遍な場合も多いのです。
 「暗黙の世界観」は、自らの経験や知識、もしくは先入観などから判断してしまうこと。これは人によって異なるため、「何を基準にそう思っているのか?」と他者と相容れない場合もあります。とくに初対面のときや、あまり長く話をしたことがない相手からは自分が望む・望まざるに関わらず、自分の人間性が決められてしまうわけです。
 脳科学の研究では、次のようなデータがあるそうです。脳の海馬という部分とその周辺部から出る「シータ波」という脳波があります。人が何かに興味を持っていたり、注意をひかれたりしたときにこのシータ波が出やすい状態になり、シータ波が出ているときは集中力や記憶力がよくなる傾向にあるそうです。シータ波は楽しいときやここちよさを感じているときにも出るそうです。心理学と脳科学を応用すると……。初対面やまだ知り合って間もない人と会うときは相手にここちよさが感じてもらえる服装を心がけると自分に興味を持ってもらいやすくなったり、こちらの話に集中してもらえる確率が高くなります。ファッションをコミュニケーション・ツールとするうえで、気をつけてほしいのは「他人が自分のことをどう見ているか」をちゃんと気にしているかどうか。いくら「ステレオタイプの服装だから大丈夫だろう」と思っても、シチュエーションによっては当てはまらない場合があることもしっかり考えられていないと、逆効果にもなりかねません。
 初対面の相手と会う際、どんなファッションを選択すればいいかを決めるときには「ステレオタイプ」や「暗黙の世界観」なども判断材料にしながら自分を客観的に見ることが大切になります。自分を俯瞰で見られる能力のことを心理学的に「メタ認知」といいます。「メタ」とは「高次の」という意味。自分の考えかたや行動などを第三者的に見ることができる人は「メタ認知能力」が高い人になります。逆に「メタ認知能力」が低い人は「自分がこう思っているから、相手もそうだろう」という思いこみで行動することが多くなるため、自己中心的になりがち。

 人とのコミュニケーションをスムーズにするためには「メタ認知能力」を高めたいものです。ではどんなセルフトレーニングはどうすればいいのか? すぐにできそうな方法のひとつに、日々のできごとや自分の気持ち・1日の反省点などを書きとめる方法があります。たとえば、最近、「悩みが軽くなる」と注目されている「メンタフダイアリー」も同じ手法。「メンタフ=メンタルタフネス」とは、ストレス耐性を指した言葉です。悩みやストレスについて書き出して自分の心のクセなどに気づくことで、自分が陥ってしまうつまずきのパターンを知り、それを回避することができるようにする日記型のトレーニング方法です。アメリカでは保健医療の対象にもなっている「認知療法」のひとつ。最近ではメンタフダイアリーが実践できるアプリもあります。つまり、文字に書き出すことで自分の行動のモニタリングを習慣化するわけです。メタ認知能力を高めることで、人と会う際の服選びの失敗も少なくなり、相手の印象形成にもいい影響を与えられ、気持ちのいい面談だった思ってもらうことで記憶にも残りやすくなります。

2015年1月14日水曜日

相手の心に響くコミュニケーションとは

コミュニケーションの語源はラテン語で「分かちあう」を意味する「communicare」だそうです(ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典より)。社会生活を営むうえで必要不可欠なもので、だれもが意識せずとも行っている。とはいえ、多くの人が悩み、模索しているテーマでもあります。
 コミュニケーションの基本は、相手に自分の気持ちを伝え、相手の気持ちを聴くことです。言葉にしてしまえば、とてもシンプル。ただ、言葉の選びかたや相手の受け取りかたによって同じ会話でも意味が違ってくることもあるので、なかなか厄介なシロモノでもあります。
 心理学的で言葉は2種類に分けることができます。ひとつはおしゃべりや文字などのいわゆる言語。もうひとつあるのが非言語と言われるもので、話し方(声のトーンや抑揚など)、表情、視線、姿勢、そしてファッションなどが含まれます。言語はとても直接的です、非言語は感覚的。人は話す内容には気を遣っていますが、ほかの非言語ツールがどれだけ機能しているかを気にしていないことが多いように思います。
 進化論で有名なチャールズ・ダーウィンは著書のなかで、人間の表情が表現する感情は、人類に普遍的なものだということを論じています。(チャールズ・ダーウィン著「人間および動物の表情について」より)。つまり、喜びや悲しみを表す人間の表情はいつの時代、どこに行っても変わらないということです。
 ダーウィンの言葉通り、人の表情が普遍的なものだと実感できるできごとが最近ありました。2012年にマイクロソフト社が申請した特許で、ユーザーの感情に合わせた広告が表示されるように設計されたコンピュータ・システムがそれです。ゲーム機、パソコン、スマートフォンを含めたモバイル端末などのツールにユーザーの表情、体の動きなどから感情を測定・判断し、広告をピックアップするソフトウエアだとか。もちろん検索ワードやメール、オンラインゲームからのデータなども判断材料にはされるそうですが、最新テクノロジーの分野で人間の表情、つまり非言語ツールがいかにいろいろな情報を含んでいるのかが認知されているわけです。言葉だけに頼らないコミュニケーションを有効活用できれば、とても強い武器になるのではないでしょうか。
  非言語ツールのなかでだれもが比較的、気をつけているのはファッションでしょう。仕事や学校など公の場では、言語よりファッションのほうがおしゃべりな場合も多々あります。というのも、たくさん人がいるなかで自分に発言する機会が与えられないケースも珍しくないからです。発言はしなくとも、相手には見られている。つまり非言語ツールのみを使ったコミュニケーションはしている訳です。

 では、ファッションというコミュニケーション・ツールで相手に伝わるのはどんなメッセージなのでしょうか。たとえば、ビジネスシーンの場合、きちんとアイロンがかかっていることがわかるシャツやスーツ・ハンカチなどを身につけている人と、しわだらけで薄汚れたものを着ている人がいるとします。どちらに好意を抱くかはおのずとわかりますね。ヨレヨレの服を身につけて会議に参加したとき「この仕事を重要に思っていないな」とほかの人から思われても仕方がありません。プライベートでも、清潔感のある服装やおしゃれをして来たことがわかる服装のほうが、会う相手も「自分と会うことを大事に思っていてくれるんだな」とうれしく思うはず。逆に言えば、服装に気を遣うだけでじぶんの気持ちを相手に伝えることができるのですから、ファッションとは、とても使い勝手のいい非言語ツールにもなり得るのです。

2015年1月7日水曜日

わずか数秒で決まる人間関係

第2章 「コミュニケーション」とは
 わずか数秒で決まる人間関係
 「第一印象が肝心」。いまさら言われるまでもなく、だれもが思っていること。では、その第一印象は、実際にはどれほどの時間で決まってしまうのでしょうか。
 たとえば、スカンジナビア航空の社長ヤン・カールソン氏は次のようなことを言っています。
「最前線の従業員の15秒間の接客態度が、企業の成功を左右する。その15秒を“真実の瞬間”という」(ヤン・カールソン「真実の瞬間」ダイヤモンド社より)。ビジネスの成功はお客さまの第一印象によって決まり、その第一印象は最初の15秒間の接客で決まってしまう、というわけです。
  米・プリンストン大学の心理学者ジャニン・ウィスリ博士が初対面での人間心理を探る実験をしたところ、「好き」か「嫌い」かの判断は0.1秒間で下されていたという結果になったそうです。 第一印象はわずか数秒ほどで、ある程度決まってしまう思っておいて間違いはなさそうです。
 では、なぜ人はこれほどまでに第一印象を気にし、振り回されてしまうのでしょうか。それは、心理学でいうところの「初頭効果(Primacy effect)」という分野で研究されています。人は最初に覚えたり、触れたりした事柄は記憶や印象に残りやすいという人間心理を初頭効果と言います。身近な例をあげてみましょう。たとえば、こどものころに初めて食べたピーマンがとても苦くて固くて美味しくなかったとします。「ピーマンは苦くておいしくない!」と思った子どもはピーマン嫌いになり、以降、食事に出されたピーマンを残すようになる……。出がけに家族に「帰りにスーパーで食パンと牛乳とリンゴとトイレットペーパーを買ってきて」と頼まれたとします。いざ、スーパーに行ったとき、最初の食パンや牛乳をすぐに思い出せても、最後のトイレットペーパーを思い出せない……。だれもが経験したことがあり、大げさに言えば、その後の人生を大きく左右してしまうのが初頭効果なのです。
 もうひとつ、怖い事実があります。実は人は、一度「こうだ!」と思うと、それを裏づける情報ばかりを選んで集めてしまう傾向があると言われています。心理学では「確証バイアス」といいます。一度相手にネガティブなイメージを与えてしまった場合、その後のおつきあいでポジティブなイメージに変換するのがむずかしい理由がおわかりいただけましたか? 上司にどれだけいいアイデアを提案しても難色を示されるのに、ほかの人が一度だけいいアイデアを出したらすんなり許可された……という経験をしたことはありませんか? それは、初頭効果がなせるわざかもしれません。
 では、相手に良い印象を与えようと思ったら、初対面で何に気をつけなければならないのか。それはずばり「見ため」です。人の五感が外部からの情報を受けとるときの割合は視覚が83%、聴覚が11%、臭覚が3.5%、触覚が1.5%、味覚が1.0%とする資料があります(「産業教育機器システム便覧」より)。つまり、私たちは目から入った情報を主観として、いろいろな判断していると言っても過言ではないわけです。
 次に好印象を与えるコツについて、考えてみましょう。たとえば、あなたがセミナーにひとりで参加しようとしていとします。座席が自由に選べる場合、一体どのような席を選択しますか? まず、会場内の空席をピックアップし、それぞれの空席の隣に座っている人間を観察するのではないでしょうか。そして「この人の隣であればOK」と判断した席を選択するはず。この場合の基準には、おおむね、次のような理由があげられます。
 まず「同じ女性(男性)だから」「同じくらいの年代だから」「同じような服装をしているから」など共通点がある人の選択。人は自分に近い要素を持った人には無意識に親近感を覚えます。たとえばテレビに出ている有名人の出身地や出身校が同じだと知ると、その人に好感をもったり、それがきっかけでファンになったりしたという経験は多くの人が持っていると思います。有名人ではなくとも、あまり親しくなかった大学の同級生が同じ高校の出身だとわかったとたんに共通の話題が豊富になって会話が弾み、心理的距離感が短くなるというケースも珍しくありません。人は共感がもてる相手と一緒にいると心地よさを感じ、とても安心した気持ちになれますが、その理由も脳の働きと深い関係がある。もともと脳は無意識のうちに安心した状態にとどまろうとする性質を持っているといわれます。共感を持ち、気を許した相手に対し「もっと話していたいな」「また、会いたいな」と思うのも、脳が引き起こす心理状態なのです。 共通点以外の理由として考えられる「話しやすそうな人」「明るそうな人」「親しみやすそうな人」なども、安心感が得られそうな相手というのも、脳がそれを好むから。ほかには「ステキな人だから」「ちょっと自分のまわりにはいないタイプの人だから」という理由で判断する人もいまず。この場合は相手に対する「興味」が理由。つまり、好奇心ゆえの行動になります。初対面の相手との間に「共通点」「安心感」「興味」などが見いだせた場合、心の距離は縮まり、コミュニケーションがとりやすくなるのです。初対面で成功するうえでの大切なキーワードです。
 最後に、付け加えておきたいのは日々の第一印象。職場で、学校で、その日はじめて顔を合わせたときの第一印象も大切にしてください。職場や学校の朝、人と会ったときなどなど。「とってもおしゃれ。センスのいい人だったんだ」「髪型を変えてステキになった!」など好印象を与えることで会話もはずむし、商談もスムーズに行きそうです。

コラム
〜第一印象を考えるうえで重要な鍵を握るのが「メラビアンの法則」〜
米・UCLA大の心理学名誉教授であるアルバート・メラビアンが1971年に発表した心理学の概念。人の好意や反感に関するコミュニケーションについての研究で、感情と態度が矛盾したメッセージが発せられたときの人の受け止め方について考察しています。つまり、顔は怒っているのに口調はやさしい場合と、その逆のパターンで対話したとき人は五感の何を基準にするか、などです。実際の実験内容は、まず「maybe」という単語をさまざまな抑揚で録音したテープ音声を被験者に聞かせ、さらにその音声とさまざまな表情の顔写真を組合せて聞かせたそうです。この実験での被験者の反応をまとめて数値化したら、視覚と聴覚では視覚に重きを置いた人の割合が55%、逆に聴覚を優先させた人が38%、話している内容などの言語情報が7%という結果になったそうです。このデータの数値が広義的に「人は見ために左右されやすい」と解釈されていますが、メラビアンの研究意図からすれば少し違うようです。たとえば、男性がみんなのいる前で恋人に「今日の君は特別きれいだね」と言い、それを受けて女性がほほえみながら、少し強い口調で「みんなのいる前で、何よ!」と言った場合、男性はどう思うのでしょうか。おそらく、「とか、言いながらうれしいんだな」と思うのではないでしょうか。「怒らせてしまった!」と思う人のほうが少ないことでしょう。これがメラビアンの法則です。つまり、表情と話し方が一致していない場合、見ためで理解する人と聞こえかたで理解する人に分かれ、ひとつの情報でも伝わり方が違ってくる、ということです。そこで、私からの教訓! 大切な会話ほど、表情と話し方を一致させないと誤解が生じることもあるので、気をつけましょう。