2014年12月24日水曜日

ファッションで夢は叶う!?

 実は、私たちは常日頃から意識せずとも衣服の「後光効果」を利用していることがあります。いわゆる「TPO」を意識した服装をすること。良識ある社会人として、TPOを意識した服装をしなさいと教えられてきたはずです。つまり、場所をわきまえた服装をさえしていれば、それだけで「常識のある人だ」という好印象を持ってもらえるのです。だれもが服装が持つ効果をなんとなくは知っているわけです。
 アメリカ・スタンフォード大学の心理学部で行われた有名な実験があります。無作為に集められた被験者のうち、ほぼ同じ人数を看守役と囚人役の2つのグループにわけ、実際の刑務所を舞台にそれぞれの役割を演じさせました。役割に合わせた制服を着て。その結果、時間経過とともに、看守役は看守らしく、囚人役は囚人らしく、演技を超えたふるまいをするようになったそうです。映画化もされるほど衝撃的な実験でした。この実験では、いろいろな人間心理が分かったのですが、衣服が人に与える心理効果の大きさもそのひとつ。制服を着ることで人は役割を意識し、その役割通りの行動をしようとする心理が無意識に働くのです。まさに前述したナポレオンの「人はまとった制服のしもべとなる」。
 この心理的効果を意識的に活用できれば、とてもいい処世術になると思いませんか? じぶんがこれから会う人とどんな関係を築きたいか。どんな印象を与えたいか。目的を達するために人に与えたい心理的効果を明確にすれば、じぶんが着るべき服のテーマも見えてくるはず。たとえ、自分に自信が無くても、そこは「馬子にも衣装」です。服の力を借りて自信を持った自分を演じきればいいのです。

 人間心理と服の関係がいかに密接で複雑なものか。これから、じっくりと掘り下げていきたいと思います。

2014年12月19日金曜日

ファッションというコミュニケーションツール

 ヒトはおそらく、自然環境の変化に対応するために衣服を身につけるようになりました。やがて、社会形成がなされると役割分担から社会的身分というものが生まれ、着用する衣服にも役割が生まれた。立場や身分を相手に伝えるコミュニケーション・ツールとして服が利用されたわけです。
 603年、聖徳太子に制定されたとされる冠位十二階。役人の位を12に分け、それぞれの色も定めた制度です。冠の色を見れば、どんな立場の人でどんな役職の人か分かったので仕事もスムーズだったことでしょう。
 制服など付加価値のある衣服は、他者に心理的効果を与えることができます。たとえば、医師の白衣や警察官の制服に対し、「この服を着ている人物は信頼に値する」という先入観を人は持ちます。これら、人に対していい印象を与える事例について、心理学では「威光効果」と言います。
 堺雅人さんが主演した映画「クヒオ大佐」という作品があります。これは実在の結婚詐欺師がモデル。「自分はアメリカ人のパイロットでクヒオ大佐」だと名乗り、数人の女性から約1億円をだましとったのです。クヒオ大佐と名乗った男は髪を金髪に染め、軍服のレプリカを着ていたそうです。この事件でも「金髪」「軍服」の威光効果のほどが伺えます。

 人は自分が思っている以上に視界からの情報に左右されやすいのです。そして、視界から入ってくる情報が心地いいものであるほど、その情報源にいい印象を持ちます。「高級な外車に乗っている」「美しい姿勢である」「字がきれいである」などなど……。人対人の場合、「後光効果」のある衣服を活用することで人間関係の構築がよりスムーズになるはずです。

2014年12月10日水曜日

ドレスコミュニケーション  〜服は口ほどにものを言う〜

 「人は見かけが9割」という本が以前、話題になりました。「社会を支配しているのはノンバーバル・コミュニケーションである」とし、心理学や社会学など多彩な角度からノンバーバル・コミュニケーションについて語られています。
 「ノンバーバル・コミュニケーション」(nonverbal communication)とは、言語以外の手段で行われるコミュニケーションのこと。非言語コミュニケーションとも言います。おもに心理学で使われる言葉です。
 コミュニケーションの手段として人は言葉以外にも表情、言葉の抑揚、身振り・手振り、姿勢から服装なども用いています。これら非言語コミュニケーション・ツールは、人間関係において言葉以上に多くの役割を担っているとも言われています。たとえば「目は口ほどに物を言い」ということわざにもあるように。ノンバーバル・コミュニケーションはチャールズ・ダーウィンも研究していたそうです。
 ノンバーバル・コミュニケーションを利用して成功した著名人のエピソードは、たくさんあります。たとえば、アメリカ16代大統領のエイブラハム・リンカーンもそのひとり。彼は雄弁家で演説は上手だったそうですが、小柄で貧弱だったため、見ためがいまひとつでした。あるとき、リンカーンはひとりの有権者女性から次のようなアドバイスをもらったそうです。
 「あなたのポスターに口ひげを書いてみたら、大統領にふさわしい風格が出ましたよ!」。
このアドバイスによって、リンカーンはひげを伸ばすことにしたとか。
 アメリカの心理学者レオナード・ビックマンの有名な実験があります。電話ボックスにコインのお金を置いておきます。電話ボックスに入った人に「ここにコインが置いてありませんでしたか?」と、ある人物にたずねさせます。コインの有無を訪ねる人物の身なりは2パターン。Aはきちんとしたスーツの紳士。Bはヨレヨレで清潔感のない服装の男性。実験の結果、Aの人物に対しては8割の人が丁寧に対応してコインがあったことを教えてくれたとか。対してBの人物に対しては7割の人が怪しんで、コインの有無についても教えてくれなかったそうです。つまり、同じ言葉を発していても、見ための違いで人はまったく異なる情報を受け取ってしまうわけです。さて、今度、大切なミーティングがあるとき、あなたはどんなコーディネートで行きますか?