2014年6月25日水曜日

〜私を成長させてくれたハイブランド〜

ナポレオンのこんな言葉をご存知でしょうか?
「人はまとった制服のしもべとなる」。
身につける物がどれだけ人に心理的な影響を及ぼすかということを
端的に言った名言ではないでしょうか。

私は人生のさまざまなシーンで、この言葉が当てはまるような体験してきました。
ファッションの仕事を始めたばかりの頃は、
憧れの女性上司のファッションを真似ることで自分に自信が持てると思ってました。

そんな若かりし頃、ひとつのハイブランドとの出会いがありました。
きっかけは初めての海外出張。
レイデザイン研究所で仕事を始めてから半年後に
ミラノ・パリ・ニューヨークにリサーチに出かけたときのことです。
憧れのミラノをリサーチしているとき、あるショップの前で雷に打たれたような衝撃を受けました。
そのブランドは、ジョルジョ・アルマーニ。
一流ファッションの聖地・ミラノにおいてもひときわオーラを放つアルマーニは、
私の感性を刺激し、新しい世界へと導いてくれたのです。
「この感動を持って帰らねば!」と思った私でした。
その出張の際に持っていった5万円ほどを全てはたいてバッグを購入。
(今からおよそ25年前の5万円と言えば、かなり大金!)
そして、まだ、出張は始まったばかりだったというのに、お財布はカラに。
同行していた上司には、お金を借りるハメになりましたが、
私は大満足!でした。

翌年も海外出張でミラノに行く機会があり、そのときはスーツを購入。
24、5歳の私がアルマーニの直営店でスーツを買うなんて、
かなり背伸びをしたかもしれません。
でも、前回のブログに書いたように当時はキャリアが1〜2年だったにも関わらず、
クライアントのさまざまなニーズに応えて結果をだすべく奮闘していた時代。
私は日々、自分を大きく見せるために必死でした。
そして、アルマーニのスーツの威光は私に大きなパワーを与えてくれたのです。
ハイブランドのスーツの説得力はクライアントに対してはもちろん、
何より、私自身にもいい暗示をかけることができたと思います。

今となって分かったことですが
20代で着るハイブランドは、その価値が2倍にも3倍にもなります。
まず、服に合わせようとして無意識に背筋が伸びて、見ための印象にも変化が。
そして、服自体が持つオーラが、若さゆえの自信の無さを隠してくれるのです。
いわば “鎧”なのです。
だから、20代や30代でキャリアップを目指している人や大事なプレゼンテーションを抱えている人は、ぜひハイブランドの洋服を1着、手に入れてみてください。
きっとファッションとあなたが良い化学反応を起こして、新しい自分を導いてくれるはずです。

アルマーニのスーツは私にとって素晴らしいビジネスパートナーでしたが、
実は、ひとつ失敗談もあるのです。
20代のころ、ベネトンの創業者であるルチアーノ・ベネトン氏が来日され、
ご縁があって私が京都・大阪のリサーチとサンプリングをすることになりました。
世界のセレブをアテンドするのですから、
とうぜん私は勝負服のアルマーニのスーツを着て一行をお迎え。
が、そのとき同行していたルチアーノの妹・ジュリアーナ(ベネトンのデザイナー)からひと言。
「若いあなたにアルマーニはよくない! ケンゾーのような若々しい服を着なさい」。
たしかに、そのとき一緒に来日していたジュリアーナのお嬢さんは(私と同年代)、
上から下までカラフルなケンゾー・ファッションでした。
後で聞くと、イタリアでアルマーニのスーツは
「官公庁などのお堅い仕事につく年配の女性が着る」というイメージがあるという話でした。
後から思えば彼らがアルマーニに対して持つイメージや、ベネトンのファッション性などをもっとよく検討しておけば、よかったのです。

ファッションとは時に頼もしい道具であるし、

使い方次第で、意図しない自分を演出してしまうツールにもなると、
この体験で痛感しました。
今となってはいい教訓になった出来事でした。

「人はまとった制服のしもべとなる」。
部下を育てるのにナポレオンは1つ上の階級の制服を与えたそうです。
だからこそ私はみなさん、とくに若い人には
シーンごとに目的意識を持って服を選んでほしいと思います。
ときには、自分には身分不相応だと思えるようなハイブランドにも挑戦してほしい。


素敵に輝きたい、明日の服選び、ちょっと頑張ってみませんか?

2014年6月11日水曜日

高田敏代のファッション・プロフィール ~OLからレイデザイン研究所へ~

さて、今回からしばらくは私がファッションを生業とするようになったいきさつについてお話してみようかと思います。いわば、私の自己紹介ですね。
おつきあいいただければ、うれしいです。

私の社会人としての第一歩は京都の総合商社でOLとして就職しました。
配属されたのは浴衣を扱う部署。ちょうど、そのころ職場では「20歳の着物キャンペーン」の企画の真っ最中。(20歳前後の女性が着たい着物(浴衣)に特化したプローモションです)上司が提案していた着物を見た私は思わず「こんなん、誰が着はるの?」とひと言。
ちょうどターゲット層と同年代だったこともあり「@参考になれば…」
という気持ちからの発言でしたが、上司はご立腹。
(翌日から部署で総スカンを喰らってしまいました)
今にして思えば、入社間もない、いわばド素人の私が上司の企画を上から目線で否定したのですから当然といえば当然ですが。
「じゃあ、どんなのだったら着たくなるんだ!?」という上司の怒りの問いに、私の回答は「大正浪漫風のアンティークな着物」。
「じゃあ、プレゼンしてみろ!」という流れになり、翌日からイメージシートを作るべく資料集めに奔走することに。今みたいにインターネットでカンタンに資料が集められる時代と違ったので書店や図書館巡りをして、それはもう大変でした。
なんとか資料を集めて「さあ!どうだ!」とばかりに意気揚々と上司に提出。
「70歳のおばあさんが着る着物みたいやな」と鼻であしらわれて、この話はおしまい。
もう、がっかりなんてものではありませんでした。

企画として成立しなかった私の初プレゼン。
……ですが、資料集めやコンセプトを考えることに、大変さよりも楽しさを実感した私。
「これを仕事にしたい!」と思い、さっそく行動に移した私はファッションの専門学校に入学。
そして、昼は商社のOL、夜は「レイデザイン研究所」の研究生として学ぶ、ワーキングスタディの日々がスタートしたのでした。

「レイデザイン事務所」では、さまざまなことを学びました。
はじめはデザイナーを目指しましたがイラストもパターンも苦手で、挫折。ショーウィンドーのディスプレイ・デコレーターにも興味を持ったものの、ディスプレイにつきもののテグスを上手に扱えずに、これまた断念。コピーライティングの授業で成績はいつもクラスのトップクラスでしたが、そこで「コピーライターになろう」とは思いませんでした。
ただ、自分は手先よりも頭と口を使う仕事が向いていることを自覚。
行動しては挫折……を繰り返すことで、進むべき道が少しずつ見え始めたのです。

「レイデザイン研究所」での3年が過ぎたころ、
代表の河合玲先生が
「3年も学んだのだから、商品開発スタッフとして仕事をしてみないか」と言ってくださったのです。(レイデザイン研究所は専門学校だけでなく、商品開発・企画などの会社でもありました)
それが、私のファッションのプロとしてのキャリアのはじまり。

スタッフになって間もなく、先輩スタッフが次々と退職され、
気がつけば商品開発のプロとして、独りクライアントと向き合ってた私。先輩からは「クライアントには経験豊富であるように振る舞いなさい」と言われ、無我夢中の日々でした。
そのとき、会社は私のことを「高田は30代で元商社というキャリア豊富なスタッフ」と紹介していたのですから、その重圧たるや生半可ではありませんでした。

当時のことを振り返ると、よくやってこれたなと思うこともあります。
若さが持つエネルギー、仕事に対する情熱や好奇心、何よりファッションが好きだという思いが後押しをしてくれたのでしょう。

そして、もうひとつの要素は、根っからの挑戦者だという私の性分。
私は新しいことや一見無謀とも思える課題に挑戦するのが好きなのです。好きこそ物の上手なれ。
とはよく言ったもので、じぶんの実力よりも少し上を目指して取り組んできたことで今のキャリアが築けたと思います。

私にとってファッションの仕事は言うなれば、未来(未知)への飽くなき挑戦なのでしょう。
挑戦する前はどれだけ「怖い!」と思っても、トライしてみれば必ず何かを得られます。
そして、さらに前へと進むための扉も開くのです。
だから、皆さんも仕事でも試験でも恋愛でも、何かに挑戦しなければならなくなったら、前へ進むためのチケットが得られたと思ってトライしてみてください。
できれば、遊園地のジェットコースターを楽しんでいるような怖くて楽しい気持ちを持って。

最後に、
商社のOLだったときの「20歳のきものキャンペーン」で苦渋を飲んだエピソードの後日談を。
その2年後、大正浪漫をコンセプトにした若者向け着物ブランドを会社が発表し、これが若い世代にウケて一大ブームに。
専門紙に「着物にファッションの感覚を取り入れた画期的なムーブメント」と高く評価されたのです。くだんの上司からも「お前の企画はスゴかったんだな」とお褒めの言葉もいただきました。
その上司とは現在でも連絡を取り合う仲になり、ときどきは仕事の相談のされることも(笑)。
ほんとうに、人生に無駄なことってひとつも無いような気がします。
たとえ、そのときは挫折に思えたことでも……。